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第2話 闇に埋もれるような地下室

 真っ暗で何も見えない。

 ここは地獄か?


「おお、素晴らしい。成功だ……」


 なにやら、しわがれた声が聞こえる。老人の声だろうか。それにしても、ここは一体どこなのだろうか。

 

 肌寒く、暗く、ひどく湿っている。

 地下だろうか、日の光が一筋も見られない。

 まるで闇に埋もれている様にすら思える。


 もしや、俺は生き埋めにされたのか?


「転生おめでとう。君を新たな聖女として歓迎するよ」


 しわがれた声と共に人影がこちらにのそりのそりと近付いてくる。思わずその人影を見上げる。

 すると、人影は手を宙にかざすとそこから小さな光の玉が現れ、辺りを照らした。


 突然の光に目がくらむ。


 やっとの思いで焦点を合わせ、目の前の男に視線を向ける。

 男はなにやら法衣の様な物を纏っている。牧師さん、あるいは神父さんだろうか。ひどく深いシワが刻まれた顔、鷲のように尖った様な鼻。薄暗いこの場でも光る鋭い眼光。一目で只者ではないと言うことはわかる。


 ただ、一体この老人は何者なのだろうか?


「あ、貴方は何者ですか?」


 俺は思わず声を漏らす。寒さのせいで震えているからかなのか。ひどく高くまるで少女の様な声が自分の口から放たれた。


「うむ、そうだな。まずは自己紹介をしなければならないな」


 そう言うと老人は一度頷くと技とらしく咳払いをしてみせた。

 

「私の名はカーディナル。このメティアナ教で枢機卿を任されている」


 そう言うと老人が深いシワの刻まれた顔をクシャクシャに歪めて笑顔を作ってみせた。その表情は優しげで何処と無く安心感を彷彿とさせる印象を与えられた。


「メ、メティアナ?」

「うむ、成る程。記憶を無くしているな無理もない。そうだな、女神メティアナ。彼女こそ我々人間を救いし女神。我々は“それ”を信仰し奉っているのだ」


 な、なるほど、つまり変な宗教の勧誘ですね。


 俺は思わず眉間にシワを寄せてしまう。そんな、俺の様子がさぞかし可笑しいのか、老人はクスクスと笑いながらこちらを指差した。


「ふふふ。如何わしい宗教と同じに思われては困るが。御主自身が女神メティアナの奇跡を体現しているのだ。よく自分の身体を見てみるがいい……」

「じ、自分の身体?」


 その時、俺は初めて自分の姿を目にした。


 光り輝く様な白い肌。そして、俺の視界の端に存在する巨大な翼。それは背中に意識を集中させると同時に痙攣するように動いている。


 わかる、多分この翼は俺の背中からはえている。


 俺は疑惑を確信へと変える為に背中に力を込め翼を羽ばたかせてみせた。

 その瞬間、俺の視界の端に存在した翼は力強く羽ばたき、勢いよく部屋中に羽毛を撒き散らしながら旋風を巻き起こした。


「美しい。女神メティアナにより、天使の力を授けられし聖女よ……」


 老人はうっとりとした表情でこちらを眺めている。


 い、いや、それよりだ! ええ!? こ、これはどう言うこと!? 俺はなに? 死んだんじゃないんですか?


 この状況、全く意味わからん。

 誰か大人の人おりませんか?


 余りに驚愕の出来事に思わず顔を手で覆ってしまう。


 その手の感触にはまぶたと鼻と口の感触が確かに存在する。取り敢えずよかった、人間の形はしている様だ……

 正直、あんまり安心できる状況ではないが取り敢えず、そこは安心して良さそうだ。なんとか一安心と、ほっと胸に手を当てる。


 その時は柔らかい感触が手のひらを襲った。


 フワフワと言うかフニフニと言うか、なんと言うか兎に角柔らかく心地いい感触が手のひらを襲う。筋肉と言うにはそれは余りも柔らかく、脂肪と言うには余りも整った形、感触をしている。


 思わず自分の胸に視線を下ろす。


 そこにあったのはまさにおっぱいだった。

 まさにと言うか、おっぱいだった。


 そして、すっぱんぽんだった。

 どうりで肌寒い訳だった。

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