あばば!!あばばばばは!!あばばばばばばばばば!!あばばばばばばあばばばばばばあばばばばばばあばばばばばばあばばばばばば!!油そば、上手いぃぃぃ!!
玉座には金髪の少年が座っていた。
そして、単純に「若いし、女の子みたいだな」とスノウは思った。
可愛らしいぱっちり二重に透き通る様な碧眼。金糸の糸の様な頭髪に、少し長めの女の子染みた可愛い髪型。
そして、金糸の糸をあしらったローブを重ねて無駄に着飾った服装。
その無駄な飾り様と玉座に座していることから、彼が王である事はスノウにはわかったが。しかし、彼が他の人間に混ざっていた「なんだこのチビジャリは、喰っちまうぞ」となってしまいそうな様である。
事、スノウ以外の竜ならば「ガキこら! 玉座に気安く座ってんじゃねぇぞ! パクっ!!」って実際に食べてしまっていたであろう。
それぐらい、オーラがない。
しかし、取り敢えず相手は王なのでスノウは弱冠、腹に突っ掛かりを覚えながらも膝をついて祈るかの様に頭を下げた。
「ラル・フローレンの国の王よ。この度は私の命を助けて頂いて、誠にありがとうございます。この恩をいつか必ず御返しします」
氷の様に曇り一つ無い白い髪に白い肌。その美しい様とは裏腹に、半ばから角は折れ、翼は切り裂かれたかの様にボロボロになっている。
しかし、その様は神秘的以外の何物でもなかった。
如何にボロ雑巾の様になろうと、そのシックのドレスから伸びる曇りの無い美しい鱗は誇り高い竜で有ることを身体で現し。スノウの知性に溢れる振る舞いは、さぞかし名の有る竜で有ることを容易に想像させた。
その様に周りの家臣達が感嘆声を漏らした。
しかし、そんな様を他所にラル・フローレンの王は玉座を離れスノウの元へと駆け寄って、その手を握った。
その様に、家臣達はおろかスノウすらも驚愕した。
「何を硬いことを言っておるのだ! お主は、あの黒き竜から我が国、ラル・フローレンを守ってくれたではないか! それに報いるのは当然の行為ではあろ!」
スノウは成る程、と思った。
確かにそう見えなくもない。
カドラクの様な黒い竜と、スノウの様な明らかに聖竜の様な見てくれをしている竜とでは。圧倒的に人間からの精神的な友好度が違う。
別にスノウはラル・フローレンを守ったつもりは無く。自分の領域を犯されそうになったから。自分の領域外で対応し応戦したまでの話だ。
つまり、極論。スノウはラル・フローレンなんて、どうでもいいと思っていた。
この短いやり取りで、すでに両者の間で大きな見解の違いが生まれ始めている。
これに「あれっ!?」と思ったのか、スノウは直ぐにそれっぽい笑顔を作りラル・フローレンの王の小さな手を握り返し、その手と自分の手も一緒に祈る様に額にくっ付けた。
その苦し紛れの時間稼ぎと共にスノウのIQ8000000のドラゴンズ・ブレインが高速回転する。そして、二、三度の空回りした挙げ句。ある答えを導き出した。
「そう言って貰えると、私もこの身を犠牲にした甲斐があります。ラル・フローレンの若き王の慈悲に感謝します」
取り敢えず、話に乗っかってみる。である。
竜の高尚な脳味噌を持ってして、この体たらくである。凄く簡単に言うとスノウはそこまで頭はよろしくない。勉強は出来るけど、お間抜さんタイプである。
「私は人間と共に歩む事を望む竜です。彼はその反対、人間を敵として見ていた竜です。彼は血迷ったのか、あの日、人間を殺す為にこの地にやって来ました。私は、その殺戮を止める為。あの場に馳せ参じたのです……」
まあ、嘘ではないけど。弱冠の偏向が含まれている。
しかし、その言葉の効果は絶大で周りの家臣達がザワザワと騒ぎ出した。そら人間をどうこうしようと考える竜がいたら、ザワザワもする。
まさに、シン・ゴジラ並み大事件である。
「不味いぞ、竜が我々の人間を狙っているとは……」
「また、あの様な竜が現れたらどうすれば……」
「いや、先ずは他の国に報告を……」
「まて、下手にこの情報を流せば厄介ないざこざが……」
「今回、損害は無かったが、もし損害を負った時に他国が攻めて来たら……」
「だが、他の国が竜に襲われれば。これは我々の好機……」
スノウは家臣達があれやこれやと騒いでいるのに聞き耳を立てる。
成る程。所詮は自分の国の利益に成るか成らないか、その程度の脅威しか抱いていないのか…… やはり、人間とは愚かな。と少し、冷めた感情がスノウに甦る。
その時、玉座の間にて乾いた咳が響いた。
「皆様。ここにはスノウ様がおります故。政の話は後に控えて下さい」
執事がそう言うと家臣達が我に帰ったのか、その口をすぐに閉じた。
中々に出来る人間もいるじゃないかと、スノウはにんまりした。この時点でスノウを味方と判断するのは速すぎるし。竜を利用して戦争を上手く進めようだのと考えるのも早合点過ぎる。
実際、早合点だ。
それに、敵か味方かも定かではないスノウを前に国の行く末を口走るのは失態以外の何物でもない。これを狙ってやっているなら、随分な策士だが、そう言った様子は微塵もない。
そのまま放っておいたら、国会が開かれそうな勢いだった。
しかし、かの執事はそれを乾いた咳が一つで制止してみせた。それは見事以外の何者でもない。
故に、この男出来るぞとスノウは思った。