聖女、聖女と言う物の聖女って何をする人なの?そこんところわからんから二話から迷走しまくってる。これもうわかんねぇなって感じ。最高だぜ。
律儀にも国外へと歩みを進め早三日、シャルロットは疲れ果てていた。
森の木の実や川の水を口にし、凍える夜空の下で野宿をし、国外へと向かい、宛もなく歩く。これをまだ若い少女(男)が満足に出来る筈もなく。絶賛、悪戦苦闘していた。
しかし、悪戦苦闘していたが、何とか遣り繰り出来ていた。
これは実は聖女のパッシブスキルみたいな物で、野獣に襲われないよ~ って言うのが発動していたりする。
木の実や、川の水に関しても、食べれる様になるよ~ 飲める様になるよ~ って言うのも発動してたりする。
因みに、本人はそんなパッシブスキルが発動している事なんて、全く知らない。「わ~ この木の実食べる~ やった~♪」程度の感覚である。実は常人だったら、既に三回くらい死んでる。
「あぅ~ 疲れたよ~」
シャルロットはそんな事も露知らず、呑気に森の中を歩んでいる。そして、その後方を数多の牡鹿がズラズラと行列を作り歩いている。
もう一度言う、数多の牡鹿がズラズラと行列を作り、シャルロットの後方を歩いている。どうでもいいけど、牡鹿と牡蠣って漢字の雰囲気、似てるよね。
と、そんなどうでもいい事を言っている間にも脇道から牡鹿が次から次へと姿を表し、その列に加わって行った。
この光景にも驚く所だが、それに輪を掛けて驚愕する問題は、ここまで来て、シャルロットが自らの後ろにいる、牡鹿の群れに気付かない所だ。
牡鹿の群れが百を裕に越すかと思われる数になった頃、シャルロットの前方から渋いオッサンの声がした。
「よくぞ参りました、聖女様」
シャルロットは何事かと前方へと集中した。すると、木々の切れ間から巨大な、それはそれは巨大な牡鹿が近づいて来たのだ。
牡鹿のその身体は、その巨体故か所々に苔が生えており。その頭部からは大木の様な二本の角が生えている。
「き、キリン?」
その余りの巨大さにシャルロットは、先ずキリンと間違えてしまった。
「いや、鹿です……」
「あ! 本当だ、鹿だ! 角がある!」
お前は幼稚園児か、と突っ込みを入れたくなる様なやり取りが、シャルロットと巨大な牡鹿との間で交わされた。
すると、大木と見間違う程の大きく立派な角が僅かに傾き、牡鹿の顔がシャルロットの方を向いた。そして、高くそびえる様な牡鹿の首がゆっくりと下ろされ、綺麗な御辞儀をしてみせた。
それを見たシャルロットもその返答にと御辞儀をしてみせた。
「永き時を越え。再び、こうして合間見えた事を嬉しく思います」
「?」
その言葉にシャルロットは「?」の表情で返した。その様子を見た、牡鹿が少しばかり怪訝な表情をしたかと思うと、直ぐ様、何かに納得したかの様に口を開いた。
「成る程。転生の際に力と記憶を失ってしまれたのですね。それに転生も完全な形でなされてもいない。おいたわしや。ですが、力の欠片を取り戻せば。きっと、昔の事も思い出す事でしょう……」
牡鹿は悲しそうに項垂れてみせた。その様子を見てシャルロットは「何を一人で喜んだり、落ち込んだりしてるんだ?」と眉を吊り上げてみせた。
取り敢えず、危ない人ではない、みたいだと想ったシャルロットは色々と聞いてみる事にした。
「貴方は誰なの?」
「私はオスロー。この大陸の東を守る守護霊獣になります。今より、数百年前、貴方にこの土地を守る様にと力を与えられた者です」
それを聞いたシャルロットは「ここって、東だったんだ」と、思った。それ以外に耳を傾けるべき場所は有るのだが、シャルロットは結構天然入っているので、この際は気にしないでおこう。
そんな、全然関係無い方向に思考が向いてしまっているシャルロットを他所に、オスローと名乗った牡鹿は何やら一人と言うか、一匹で勝手に盛り上がっていた。
「ですが。その力を御返しする時が来た様ですね」
何を勝手に盛り上がってるんだと、シャルロットは目を丸くした。
て言うか、この時点でシャルロットは全然話に着いていけていない。なんなら、話の半分もわかってなかったりする。
シャルロットは先程「聖女」って呼ばれたりしたけど、それについても聞いてなかったりする。「え? 私は聖女なの?」みたいな反応もなかったりする。
もう、絶望的な程に噛み合っていない。
「これは豊穣の翼。貴方様が私に下さった力の欠片でございます。これ一つで力の全てを取り戻すことは叶いませんが、少なくとも足掛かりにはなるでしょう。どうぞ、お受け取り下さい」
そう言うと、オスローの胸から光りに包まれた小さな羽が現れた。
その羽は風に揺られる様にしてシャルロットの胸の中へと向かい、シャルロットの胸に当たると、溶けるようにして彼女(男)の胸に入り込んで行った。
そして、その瞬間。シャルロットの身体に電流が走った。