生まれ変わったは良いけど。竜なんだってさ。しかも、メスなんだって。え? 私? 私の中身はオッサンですよ? それが何か? 文句有りますか? 私は文句有りますよ。
山頂は晴れてそびえる。
無限にも思える星空が夜空を飾り。余りにも巨体な双子月は星の王の様に夜空に君臨している。
しかし、突如として王の統制は切り裂かれ。夜空に一線の彗星が煌めき走る。
彗星は一直線に山頂へと向かい。轟音と共に山頂へと落ちて行った。
その轟音は遥か千里先まで届き。地を這う獣は地の底へと逃げ出し。空を飛ぶ鳥は一斉に空へと逃げた出した。
全ての生物が恐怖に包まれた中。一種の生物のみが一斉に飛び立ち。彼等は喜び勇んで彼の地へと羽を向けた。
「新たなる我が同朋の誕生だ!!」
山頂に向かって無数の生物が飛んで行く。
燃える様に煌めく鱗を持ち。力強く羽ばたく一匹の竜。彼が祝辞の言葉を口にすると、それを合図にするかの様にも共に空を駆ける竜達が一斉に力強い咆哮を挙げた。
「さあ、新たなる同朋よ。その姿を現せ!!」
大海の様に深く怪しく光る鱗を持ち。長い身体をくねらせ空を泳ぐ一匹の竜。彼が山頂に目掛け咆哮にも似た声を吐く。その咆哮に乗じる様に他の竜達が咆哮を挙げる。
「ここは何処だ…… 私は誰だ……」
美しく透き通る様な声が辺りに響いた。辺りを飛び回る竜達に負けない程の巨大な声が唄う様に響き、山頂をふるわせた。
それと共に山頂から、一匹の竜が姿を表した。
「おお、素晴らしい……」
「なんと、美しい……」
淀み一つ無い雪原の様な煌めく鱗。美しく長いしなやかな首。花が開くように羽ばたかれた大きな翼。
その薄い皮膜からは月明かりが通り抜け、舞い上がる雪達を照らし、雪の花を散らしている。
その美しさに空を飛ぶ竜達が言葉を失った。
そして、その美しき竜はこの時「どうゆうこと、だってばよ」と思っていたのだ。
そう、この美しき竜こそがこの物語の主人公である。後々にしっかり説明するが、この竜の詳細を一言で説明するならば“見た目は竜。頭脳はオッサン”である。
因みにメスである。
「な、な、な、なんじゃこりゃぁあぁあぁぁぁ!!」
自らの姿を見た彼女は驚愕の叫び声を挙げた。
しかし、その言葉の真意を理解出来る者はおらず。彼女の叫び声は空しくも満天の星空に吸い込まれて消えていった。