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「敵性反応確認。前方、120m」
「私に任せてください!」
《怒れる雄牛よ、その角に宿る雷よ、車輪を鳴らす夜の嵐よ、彼方より轟音を鳴り響かせ、罪人をその雷の元に裁け》
《雷の書、第三十一章。ガルバディアスの戦車刑》
雷で形どられた牛戦車が通路の彼方へと突き進んで行く。
やがて、それは張り裂けるような音と共に稲光を発した。
「敵性反応消滅しました。見事です、アルル様」
「ええ、これくらいどってことありません。速く、先に進みましょう」
現在、私達は先程の機械兵士との戦闘の後、通路へと出て黒の師団を後ろから追う形になっている。
「また、機械兵士ですな……」
そう言ったのは、私達の集団の戦闘を走る騎士さんだった。
彼の足元には私が先程の放った魔術により機能停止した鉄の塊が転がっていた。その機械兵士の見た目は先程の騎兵型機械兵士とは違い、丸いボールの様な頭部に人型の簡素な胴体と言った造りをしている。
「これは歩兵型機械兵士、pn-03型。純正四号機。やはり、黒の師団とやらは我々、機械兵士のAIを書き換えているようですね」
「そんなことを出来る人がいるんですか?」
「いないとは言い切れません。現にこの機械兵士のAIは書き換えられています。もしかしたら、この先にこれをやった張本人が要るやもしれません」
そう言うとエグザルドさんが通路の先へと視線を向けた。
たしかにその可能性は十分にある。むしろ、メインサーバーとやらを破壊するのが目的なのではなく、自分達の支配下に置くことが目的ならば。そう言ったのは能力を持った人物を連れてくるのは当然の行為だ。
「もしそうならば急がないと行けませんね」
「ええ、サーバールームまであと少しです。皆さん着いてきてください」
そう言うと、エグザルドさんは走り出した。




