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「転生なんてこの世にない」そう言った彼女は指を一本立てて、私に語りかけた。

 

「先ずはこの世界の成り立ちから話しましょう。この星は大昔に一度死んでいます。そして、そこから蘇生と延命を繰り返し、なんとか現在に至っています」


 彼女が意味のわからない言葉を並べ始める。

 私をそれを目を丸くしながら眺める事しか出来なかった。


「始めは西暦2200初期、この星は人の住める環境では無くなってしまいました。それはその時代より少し前の記憶を持つ貴女ならある程度は理解出来ますね」


 理解出来る、理解出来てしまう。私の生きた時代、それはこの星が熱くなっただの、異常気象だの、多くの災害が多発した時代だ。あの時代に生きていた私は、この星はこれから一体どうなってしまうんだろうと思っていた。


 だが、その時の記憶が私には間違いなくある。これは私が転生者であることに間違いではないのか?


 そんな私を他所に彼女は尚も言葉を捲し立てて行く。


「そして、それから100年後の2300年初期。人類は地下での生活を余儀無くされ、多くの人類が地下で生活し、僅かに地表を探索する者だけが歩く過酷な星になりました。この時点で人類の人口は三十億まで減少しました。それでも、この星はまだ人間が生きて行ける可能性のある星ではありました」


 私は言葉を返せずにいた。


 何故なら、それは十二分に有り得る可能性だったからだ。あの星は、私のいたあの星はそうなる可能性は十分にあった。もしかしたら。もう、あの世界はそうなりかけていたのかもしれない。


「計算上。あの時点での生命体の絶滅までのタイムリミットは六億年です。どうしてだか科学的根拠はわかりますか?」


 わかる。私の時代でも既にその学説は定説として根付いていた。私は科学の先生の質問に答えるように彼女の質問に答えた。


「恒星である太陽の寿命は約百億年。ですが、太陽はその核融合のと言う性質上、徐々に中心部が収縮して行き、その度に温度が上がり反応が活発になり明るさを増していきます。現に太陽は四十五億年の間に30%程、その明るさを増しています。そして。それは、その後も永遠に続いていきます」


 そう、確かそんな感じだ。

 何故だか自然と頭から口に言葉が紡ぎ出されて行く。


 私の言った言葉を彼女は聞き入れ、小さく頷く。

 おおよそ、合ってると言うことだろう。


 太陽変動と呼ばれる現象により太陽は十年単位、あるいは五十年単位で温度が上下し、この星には氷河期が訪れる。あの時代でも温暖化はその氷河期が来れば問題は解決すると言っていた研究者は多かった。


 実際、太陽に取ってはそんな些細な温度の変化はほんの揺らぎでしかない。十年や五十年と言った歳月は百億年と灯る火球にとっては僅かな揺らぎでしかない。


 その実、太陽事態は黒点の活動により光が僅かに弱まろうが、その中心で核融合を繰り返し刻一刻とその輝きと灯火を増している。太陽とはその実、超新星爆発が起こるその瞬間まで輝きと灯火を増し続けていく火球その物なんだ。


 私は思考をまとめ、最後に結論を述べる。


「明るさを増し続ける太陽の光り。それは、この星にも影響を及ぼし、六億年後の太陽は植物が生きて行くことの出来ない程の光を地球へと注ぎます。植物の絶滅、それはこの星の生物の絶滅を意味しています。違いますか? これが六億年と言うタイムリミットの答えですよね」


 私の答えに彼女が頷く。

 

「その通りよ。そして、2500年後期。私達人類はこの星と太陽を新しく創り直し自分達が住むことの出来る星を創る事に決めたんです。タイムリミットの六億年が来る前にね……」


 スケールが大き過ぎる。それは有り得ない。

 私が思わず首を横に振るう。


 しかし、彼女は私を無視し尚も言葉を続ける。


「そう、ほぼ不可能な計画でした。しかし、私達人類がもう一度大地の上に躍り出る為にはこの方法しかありませんでした。そして、この計画は二千年の時を経て完成しました。そして、その時に人類の人口はたった一人になっていました。それが私の前任者です」


 わからない、もうなにもわからない。もう、首を横に振ることすらも出来ない程、私の頭の中は混乱していた。


「それでも彼は計画を成し遂げました。人工衛星生命体ダイアグロス。それを太陽の光度と温度を調節する為の部品として宇宙に打ち上げました。そして、地球の荒れた広野を浄化する部品となる生命体。淀んだ海を撹拌させる部品となる生命体。止んだ風に息吹きを吹き込む部品となる生命体を創り地球に放ちました」


 もう駄目だ意味がわからない、理解が出来ない。

 その生命体とはなんなんだ。


「待ってください。貴女が言っている生命体って何なんですか! まったく、見当がつきませんしわかりません!」


 もう、彼女の話は私の理解出来る範疇を越えている。


 そんな彼女は私を真っ直ぐと見詰めている。


 その瞳が嘘をついているとは言っていない。


「この世界では竜…… ドラゴンとでも言うんでしようか。そう言われる生物です。それこそ彼が最初に産み出した生命体です。つまり、この新たな世界の原初の生命体でもあります。彼等がこの星へ降り注ぐ太陽の光を和らげ。大地を耕し、海を浄化し、風を運んでいるんです」


 知らない、そんな存在知らないぞ。ドラゴンなんて、竜なんて聞いたことない。私の心の声を読んだかのように彼女が口を開く。


「普段は姿を見せることなんてありません。ですが、この星が今も星として成り立っていると言うことは、彼等がこの星を成り立たせてくれていると言うことです」


 そ、そんなことがあるのだろうか……


「そして、創造主である彼は次に次世代の生命体を創り、地球に放ちました。それがこの世界にいる生き物達です。そして、彼等が貴女の前世の記憶と大きく関わりがあるんです」


 そ、そうだ。初めはそう言った話だった。話のスケールが大きくなり過ぎて本題を見失っていたが、本題はここからだ。

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