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 長く続いた白い通路の果てに機械の扉がまたしても現れた。


 しかし。今回はその機械の扉を、機械兵士が暗証番号を入れ、正規の方法で開けてみせた。そして、機械兵士が一度こちらを見てその扉の奥へと消えていった。


 私達もその後を追い、扉の奥へと進んだ。


 その中は正方形の真っ白で小さな部屋だった。そして、その真ん中に人一人が入る程のカプセルが配置されている。そして、そのカプセルを機械兵士が見つめていた。


「今、ご主人様を起こします、しばしお待ちください」


 機械兵士がそう言った瞬間、カプセルがクローゼットの扉を開く様にして開いた。そして、そのカプセルから白い煙が次から次へと溢れ出て来た。


 その様子を見て私達は思わず目を丸くしてしまう。


「ご主人様。お目覚め下さい。遂に我々の言葉を理解する人間が現れましたよ」


 そう、今も機械兵士が使用している言葉は日本語だ。

 つまり、このご主人様と言う存在も日本語を使うと言う事だろうか?


 私は思い出したかのように皆を見る。その皆は一様にして目を丸くし白い煙が出ているカプセルを見詰めている。

 これだけ仰々しく御膳立てされれば、ここから何かが出てきそうなことくらい誰でも感じ取れるか。


 そして、そう考えた瞬間、白い煙と共にカプセルの中の存在が起き上がった。皆がいちおうにして、その存在を見る。


 そして、感嘆にも似た声をあげた。


 その煙の中から一人の少女が出て来たのだ。

 しかも、それはただの少女出はない。


 僅かに青色の混じった輝くような白銀の長い髪。そして、こめかみの辺りからは龍の角の様な物体がはえている。更に、その角は美しく白銀に輝いており。腰からは同じく白銀の鱗を纏った龍の翼がはえている。そして、その少しの下の方からは龍の尻尾が伸びていた。そして、その尻尾もまた白銀の鱗に包まれていた。


 そして、彼女の肌は白く雪の様にきめ細かく美しくかった。


 その神秘的な美しさに一同が言葉を失う。無理もない、こんな者が現れたら誰だって言葉を失う。


 不意に彼女の瞳が開かれた。


 その瞳はルビーの宝石のような美しく潤んだような赤色をしていた。そして、彼女の薄暗い小さな唇が僅かに揺れ、言葉を発した。


「お、おはよう!」


 まさかの普通の挨拶が飛び出してきた。しかも、日本語で。

 余りの庶民的な第一声に私は言葉を失ってしまう。


 そして、他の皆は彼女の言葉がわからないので、勿論違う意味で言葉を失っている。


 そんな、私達の様子を見て彼女が首を傾げた。

 そして、再び。その小さな唇から声を発した。


「グッモーニング! ボンジュール! グーテンモーゲン! ブォンジョルノ! アニョハセヨ! コンニチハ!」


 ああ、私の中で彼女の神秘性は音を立てて崩れ落ちるような気がした。て言うか、一気に地に落ちた。しかも、最後にこんにちはって言ったし。しかも、何故かカタコトで……


 だけど、それはそれでかなり接しやすい。むしろ、ありがたい。

 そう思い、私も自分の口から日本語を喋り出す。


「あ、あの! 日本語で大丈夫です! 日本語で!」


 私がそう言うと彼女はこちらを見て満面の笑顔を浮かべた。


 その余りの可憐さに息を飲んでしまう。まるで美しい花が咲く瞬間を見たような、鼓動の高鳴りを覚える。


 前世の記憶を頼りにするなら、その様はまさに月下美人とでも言うのだろうか。


「日本語がわかるんですか! 貴女は!」


 そう言うと彼女は私の元へと駆け寄って来た。


 白い煙の中でも薄々わかってはいたが、彼女は素っ裸だった。それに思わず赤面する。自分の裸は見慣れているからか反応する事はないが、他人の裸となると話は別だ。しかも、それが絶世の美少女となると、これまた話は別の次元へと加速していく。


 そして、色々な意味でも不味い。


「と、取り敢えず! 服を! 服を来てください!」


 そう言った瞬間、彼女のこちらへと来ようとする足がピタリと止まる。そして、自分の格好を見る為に視線を落とした。


 そして、暫しの間沈黙する。

 そして、ゆっくりとその口が開かれた。

 

「な、なんだこれは? エグザルド?」


 そう言って、彼女が機械兵士を見る。

 その視線に機械兵士が答えるように言葉を発した。


「はい。この環境に適応する肉体を産み出す為に効率化を求めた結果。女性の方が遺伝の問題に関しては男性より僅かに優れておりますゆえ、女性の肉体に選択するのが最善策と考えそうしました」

  

 その言葉を聞いた彼女が、その小さく上品な口を尖らせながら不満そうにではあるが「そうか、なら仕方ないか」と呟いた。


 い、いまいち話が読めないが。取り敢えず服だけは着て欲しい。皆も目のやり場に困っている様だし。

 皆を見るとパティさんは頬を赤らめ、男性陣は律儀にも明後日の方向を向いている。


「と、取り敢えず。先ずは服を着ましょう、ね?」


 そう言うと、彼女が私を見る。そして、何かを閃いた様に顔を輝かせ、手を叩いた。


「そうだ! 貴女に手伝って貰いましょう。ちょうどいい、貴女と二人だけで話もしたいし。エグザルド、着替えるから服を持って来てちょうだい!」


 彼女がそう言うと機械兵士は彼女に向かって一礼し部屋を後にした。そして、その様子を見届けた彼女が私の元へと寄って来て囁いた。


「着替えたいから、お仲間さんに部屋の外に行ってて貰えるように言ってくれませんか。彼らは日本語がわからないんでしょ?」


 ああ、確かにそうだ。

 取り敢えず、私も皆にそう言って部屋の外へと出て行って貰うことにした。

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