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「よかった。貴方の様な方をお待ちしておりました」


 機械兵士が私に向かってそう言った。

 この世界の物ではないはずの言語、それも日本語で。


 機械兵士は綺麗に一度だけ御辞儀をすると、振り返り私達に背を向けた。その立ち振る舞いも、まさに日本人のソレだ……


「どうか私に付いて来て下さい。是非、ご主人様にお会いしてください」


 機械兵士はそう言うと奥へと進みだした。その様子を見て、皆が私を見る。


「た、隊長殿!? い、今のは一体!?」


 騎士さんが驚きの声をこちらに向けて放った。その他の皆もいちおうにして同じ様な表情をして私を見る。


 無理もない、当然の反応だ。


 だが。もう、ここまで前世の記憶を引きずり出されては私も黙ってはいられない。彼がどうして日本語を話しているのか、その理由をどうしても知りたい。


 そして、彼がご主人様という存在。

 その正体も……


 もう、私の腹は決まった。皆の動揺の視線を他所に私はなるべく冷静を装いながら口を開いた。


「取り敢えず、彼は敵ではないと思います。私は彼と共に奥へ向かいます。皆は外で待ってて下さい。もしかしたら、と言うこともありますしね…… そうですね、一時間して戻らなかったら、死んだと思って下さい……」


 そう、もしかしたら。彼が敵だったと言う最悪の可能性も捨て切れない。


 私はそう言い残して、機械兵士の後を追おうとする。しかし、その私の肩を誰かが掴んだ。私は振り向いて、その腕が伸びた先を見るとアレクくんがいた。


 その顔は私を睨み付けるでもなく、呆れるでもなく、ただ見詰めていた。


「アルル、僕も行くぞ。決して、君を一人にはさせない」


 驚いた、今の私は明らかに怪しい人間なのに信用しているのか? いや。それとも疑っているからついてくるのか…… いや、アレクくんの表情は疑っている顔ではない。私を信頼し、そして心配している顔だ。


「な、なんでですか? なんで信用出来るんですか?」


 私がそう言うとアレクくんが私の目を尚も見詰めながら答えた。その瞳は優しさに満ち溢れている。


「君が信じるに値すると思うから信じるんだ。さっきまでの君は浮わついていて心配でならないと言った感じだったが、今の君は違う。いたって冷静だ。地に足とついている。それに最悪の可能性も頭に入れて動いてもいる」


 確かに、さっきまでは形もわからぬ不安で揺れていたが。それが払拭され今は純粋に知りたいと言う原動力で動いている。だからだろうか、不安と言うよりも、しっかり見届けなければと言う気持ちの方が強い。きっと、それが態度にも現れたのだろう。


 私は皆を見る。すると、先ず始めにカーターさんが口を開いた。


「俺は戻りたいけどよ。帰り道に機械兵士がいたらと考えちまうとな。隊長といた方が安全そうに思えるから着いていくぜ」


 カーターさんらしい合理的な判断だ。その意見を聞いて迷いが吹っ切れたのだろうかパティさんが決心したように口を開いた。


「わ、私も一人で帰るのが恐いんで一緒に行きます!」


 これまたパティさんらしい答えだ。最後に騎士さんが声を発した。


「いやはや。皆様、本物の勇者ですね。これで私が帰ってしまったら騎士の名折れですよ。私も御一緒させて下さいませ」


 なんて心強い。彼は強靭な肉体を持っているのは明らかだが、その精神も強靭であるらしい。


「皆さん、ありがとうございます。ではお願いします。一緒に行きましょう!!」


 そう言って、私は機械兵士の後を追い、通路の奥へと足を踏み入れた。

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