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「わ、私が隊長ですって!?」


 私はベッドの上でパジャマ姿のまま叫び声をあげていた。それと同時に身体中に痛み稲妻のように走った。


「痛たたた……」


 思わず肩と腰を押さえる。


 昨日の査問会まではそれ程でもなかったけど、寝て起きたら身体中が痛かった。もう腰がどうにかなってしまうんじゃないかと思う程に痛かった。あと剣を持っていた方の肩も痛い、多分骨にヒビが入ってる。


 そんな様子を見ていたアレクくんが私をたしなめる。


「アルル。君は前回の戦いでかなり無理をしたから身体中傷めてるみたいだぞ。取り敢えずもう二三日は安静にしておく事だな」


 私の身体は現在そう言う状態らしい。まあ、少し鍛えてるとはいえ。いつもは椅子に座ってろくに身体も動かさない魔術師がいきなり前線でバリバリ戦ってる戦士と同レベルの動きをしたんだからこうなるのも無理もない。

 

 むしろ、これで済んでよかったくらいだ。


 今にして思うと下手したら、戦ってる最中に肩とか外れても可笑しくなかっただろうし。そしたら腰も取れてたし、死んでただろう。


 これからはもっと身体を鍛えようと思った。

 いや、それよりだ……


「それより、本当に私が隊長になるんですか?」


 その言葉にアレクくんが静かに頷く。

 

 となると、候補生から団員、団員からの副隊長からの隊長だから、三階級ぐらいぶっ飛んで昇進しているな。大丈夫なのだろうかそれは? 


 実は殉職してたとかないよね?

 私、生きてるよね?


 いや。でも、実際のところ、この人事には些か疑問が残る。


「でも。私は査問会で御歴々に向かってかなり喧嘩を吹っ掛けたはずなんですが、こう言う対応をされると何だか素直に喜べません。なにか裏があるとしか思えません」


 私のその言葉を聞いてアレクくんがこちらに視線を向けた。

 その視線は僅かに曇っている。

 

 恐らく、それは裏があると言うことだろう。それなら、この人事にも納得が行く。そこそこの地位を与えて黙らして地方なり辺境に飛ばすと言ったところだろうか。


「アルル。今回の君の隊長への昇進を推したのは三人の師団長なんだ……」


 アレクくんがなにやら一人でに喋りだした。

 

「一人目が魔元帥サルバザール・ガルバデイアス様。そして、二人目が剣聖レイド・バスカビリオン様。そして、三人目が舞姫シオン・オルタネイト様の三人だ。君の査問会での様子を見て隊長に推薦したらしい。君は一体査問会で何をしたんだ?」


 思わず苦笑いする。


「何をしたって、そりゃ喧嘩を吹っ掛けた感じですね……」


 しかも、勝手に退室しちゃったし。

 

 いや、それより魔元帥であるサルバザール・ガルバデイアス様はわかる。自分達魔術師の完成形みたいな人だから。だけど、他の二人は全く知らない、顔も知らないし、あの場にいたのも知らなかった。


 失礼な事しなかったかな?

 いや、しちゃったな。まあいいか、ワザとだし。


 そんな、私の様子を見てアレクくんが呆れた果てたように項垂れた。なぜ、そんなに項垂れるのだろうか。いや、そりゃ項垂れるよね。


「そうか…… だから、他の査問委員会の方達からは反対意見が多数出てるのか」


 自分自身でそりゃそうだろうなと思う。思わず頷いてしまう。そんな私の様子を見ていたアレクくんが眉を潜めながら、私を睨み付ける。


「呑気に頷いてる場合ではないぞ。これはかなり切羽詰まってる状況だ。上は君に任務を与え、その任務の出来次第で今後の扱いを決めるつもりらしい」


 なんだそれは、任務の出来?

 使えそうなら使うし、使えなそうならポイするってことか?


「委員会は君を隊長にしたくないらしい。だが、師団長の三人が君を推してるから、それを無下にも出来ない。だから、取り敢えず機会は与えたと言う体を取ってはいるのだろう。きっと何かしらケチをつけて君の昇進を白紙にするつもりだ」


 ああ、やっぱりわからないや。偉い人の考えることはわからない。私は委員会の人がそんなに躍起になる程の存在でもないだろ。師団長の面々は面々でなんで私に期待してるんだかわからんし。


 思わず、頭を抱えてしまう。

 この板挟みにされてる感じが堪らなく面倒臭い。


「因みにその任務ってなんですか?」


 恐る恐る、アレクくんに聞いてみる。

 正直、嫌な予感しかしない。


 アレクくんを見ると、なにやら苦虫を噛み潰したよう表現をしている。これは確定だろう。きっと、えらく厄介な任務なんだ。やがて、アレクくんが物々しげに口を開いた。


「ユーゲントにある古代遺跡。その探索の任務が与えられた」


 ユ、ユーゲントだって……


「な、なんですかそれ……」


 そう言った瞬間、アレクくんが再び頭を抱えて項垂れてしまった。

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