御期待!!じゃねぇよ!!何も期待できねぇよ、スケールがデカイだけだよ。畳める気もしねぇよ。馬鹿だよ、ここに馬鹿が居ますよ!!
結論から言うに、シャルロットはお馬鹿さんでした。
そんなお馬鹿さんは頭に大きな大きなたんこぶをこさえながらも、呑気にベッドの上でヨダレを垂らしながら眠っていました。
それはそれはお馬鹿さんみたいな寝顔でしたとさ。
「し、シ、シーチキン!!」
不意にシーチキンと叫ぶと、シャルロットはベッドから飛び上がった。一体、何事かと言った様子でシャルロットは辺りをキョロキョロと見渡した。
「誰ですか!! 今、シーチキンマヨネーズって言ったのは!! 私にも食べさせて下さいよ!!」
誰もシーチキンマヨネーズなんて言っていない。なので、その場の誰もが口を閉じてみせた。と、言ってもこの場所には二人しか人はいない。
シーチキン娘シャルロットと暴力人拐い男のハウンズである。
何処かの宿屋か何かだろうか。シャルロットは自分が寝そべっているベッドに視線を移し。そのベッドを一撫ですると、その次に木材の香りが花粉症を誘発しそうな板張りの部屋に視線を向けた。
そして、ここが薄暗く窓も閉じられた小さな部屋で有ることを確認すると、こじんまりとした机の上で灯る蝋燭の明かりを見た。
そして、その蝋燭の前に座るハウンズを見て、勢い良く口を開いた。
「ギャーー!! 怖い顔の暴力男ーー!! な、何ですか!! 何のつもりですか!! 私をこんなところに連れて来て!! もしかして、エッチな事をするつもりですか!! エロ同人みたいに!! エロ同人みたいに!! いくら、私が可愛いからって言ってた無駄ですからね!! 私はおとっ……」
「少し、黙れ……」
ハウンズが凄まじい勢いでシャルロットの口を塞いでみせた。
その早さ足るや訓練された猟犬か何かと見間違う程の物で、それを見たシャルロットは「ああ、ここで私のお尻は初夜を向かえるんだ」等と見当違いの恐れを抱いていた。
「良いか、黙って……」
そう言ってみせた瞬間、ハウンズはシャルロットを見て「しまった」と心の中で叫んだ。
口を押さえ付けられたシャルロットは、震えながら静かに涙を流していたのだ。そして、その目は相手の感情を下手に刺激しない様にだろうか、ハウンズの様子をうかがう様な上目遣いをしていた。
宝石の様な瞳がハウンズを居抜き、美しく長い髪がハウンズを誘惑するかの様に、その手にまとわりつく。
その犯罪的な光景と間色に、思わずシャルロットから手を離し、ハウンズは後ろに下がった。
「す、すまない! 君に危害を加えるつもりはないんだ!」
「じゃ、じゃあ。ど、どうするつもりなんですか?」
それはつまり、私の方が入れる側って事か!? と、シャルロットは心の中で仰天してみせた。
その余りの突拍子もない思考回路に、コッチが仰天したい所だが、シャルロット本人は至って真面目、本気も本気、大本気である。
なのだコイツ、そんな趣味があるのかよ。と、シャルロットは驚愕の表情でハウンズを眺めている。
「大丈夫だ、信じてくれ!」
信じてくれって、どう言う意味での信じてくれなんだ!? とシャルロットは出来の悪い頭を回転させる。
しかし、論点の出発地点が最初から明後日の方向に行ってしまっているので、まともな答えの一つも出てこない。
もう、ぐちゃぐちゃである。
因みに、この時点でハウンズはシャルロットが男である事はわかっていない。わかっていないので、平謝りするしかない状況になってしまっている。
そして、この状況に堪り兼ねたシャルロットは、ハウンズを下手に刺激しない様にと細心の注意を払い言葉を紡いだ。
「い、痛いのだけは勘弁して下さい……」
「……!?」
シャルロットの観念したかの様な表情と項垂れる肩に、ハウンズは酷く罪悪感を覚えた。
そして、その罪悪感に耐え切れず、ハウンズは気付けばおでこを床に擦り付けんばかりの勢いで「すまない!」と、叫びながら土下座していた。
その土下座を見たシャルロットは無慈悲にも「なに、この人、こわぁ」と思ったのだった。