これどうすりゃ良いんだよ!!わかんねぇよ!!主人公が戦えねぇよ!!出来て回復役だよ!!つまり、役立たずだよ!!どうもありがとうございました!!
一つ、敢えて言うことが有るとすれば、シャルロットは結構天然が入ってはいる、それは御存じであろう。
しかし、底抜けに頭が悪いか、と問われるとそうではない。
何せ、前世は女神だ。そこそこに思慮深い、思慮深いのだが、色々考え尽くした結果、考えた所でどうにもならんわ。と言う感じの人生経験により、考えるのを止めていたりする。
故に、シャルロットが“考える”と言うことは、イコールで“行動”に結び付く。考えるのを止めた結果、プロシュート兄になると言う奇っ怪な精神構造になっている。
そして、そんなシャルロットがハウンズにしょっぴかれそうなった時も「なんだ、コイツは!?」となった訳で、そうなったら即行動に移すシャルロットは、ハウンズを尾行し、おめおめとネイ・グ・ロウまで着いて来てしまったのだ。
“虎穴に入らずんば虎子を得ず”と言うには言うが、本人にそのつもりがないので、どちらかと言うと“鴨が葱を背負って来ちゃった”って感じである。
その上、前世は女神とは言え、現在はただの村娘(男)のシャルロットと、騎士として一線級の実力を持つハウンズ。このしょうもない尾行に気付いてないはずがない。
もしかしたら、思慮深いとか言ったが違うかもしれない。
ただの馬鹿かもわからん。
そんなことも知らずにシャルロットは探偵ごっこに夢中なのだ。
「ふふふ、成る程。あの怖い顔をした男は神殿騎士だったんですね。危ない危ない、危うくしょっぴかれる所でしたよ」
シャルロットは物陰からハウンズを眺めながら、そう呟いた。
相も変わらず見目麗しい外面をしている。既に野となれ山となれと言わんばかりの勢いで野宿だのを繰り返しているのに、不衛生と言った雰囲気が全く見られない。
これも聖女としてのパッシブスキルによる物なのだが、本人は知らないので放っておこう。
「全く、善良な聖女を捕まえるだなんて。困った人達ですね……」
「……誰が、困った人達だって?」
シャルロットが「え!?」と言う表情を浮かべながら後ろを振り向くと、そこには眉を吊り上げ、怪訝そうな表情をしたハウンズが立っていた。
「あれ!? な、なんで!?」
シャルロットがそう言うと、今しがた自分が見ていたはずハウンズを見た。
当たり前だが、そこにはハウンズの姿はなく。間違いなく、シャルロットの背後にハウンズが立っていた。
「ありゃ~ 凄く早いですね~」
「こう見えても、鍛えているからな」
そう見えます、と言いたげな表情をシャルロットが浮かべると、その腰から翼をはやし凄まじい勢いで逃走を試みた。
「ま! まて!!」
流石に二回目となるとハウンズも慣れた物。おもっくそ頭に拳骨を喰らわし。ハエでも叩き落とすかの様にして、そのままシャルロットを気絶させてしまったのだ。
凄まじい反射神経である。
端から見れば、ただの暴力男である。
「し、しまった! だ、大丈夫か!?」
ハウンズは咄嗟の行動にハッと我に帰り、シャルロットを抱き抱えた。勿論、シャルロットはぐでんぐでんの、てろんてろんになっている。
取り敢えず、ハウンズはシャルロットが息をしているのを確認すると安心し顔を僅かに緩めた。
そして、シャルロットを抱き抱え、何処かへと連れて行ってしまった。
勿論、こんなことをすれば噂にもなる。この事件は後々まで“ハウンズ、女の子ぶん殴って連れ去っちゃう事件”として語り継がれる事になり。その上、凄い勢いで噂が広まったのだった。
そして、恐ろしいことに、これがほぼ事実なのだ。
事実と違う所が有るとすれば、シャルロットは男の娘だよ。と言う所位である。
さあ、果たして。シャルロットにはどんな運命が待ち受けているのだろうか。
ハウンズとシャルロットの活躍を請う御期待。