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郡風華は認めたい。

「ここは昆部です!」


「……」


「……」


「……」


「ここは昆部です!!」


「……」


「……」


「……」


「ここは昆部なんです……」



 アタシ達が無口なものだから、可哀想な感じになってしまった。

 申し訳なく思います。



「……!」


 精一杯の笑みを見せる。



「ひ、ひえ!? 煽られてる!?」


「……!??」



 失敗だったようです。



「ここは昆部でした……」



 遂に諦めてしまった。



「……コンブ?」



 日和ちゃんが首を傾げながら、アタシ達の疑問を言葉にしてくれた。



「ぱぁ!! そうです昆部です!!」



 凄く嬉しそうだった。





 k第7話k

  郡風華は認めたい。



 アタシ達”一年生三人組”は新しい依頼を受ける事になり、昆部までやってきていた。

 先輩達はというと、別の部活からの依頼で既に部室に居なかったのだ!

 タイミングが悪い!?



「見てください、コイツを」



 昆部の部長である昆々時雨(こんこんしぐれ)先輩は何かのケース取り出した。



「……凄く、大きい」



 先頭に居た日和ちゃんが、何かを見て大きいと言っている。

 何だろうと思って、アタシも覗いてみた。



「……ひぎぃ!?」



 アタシは固まってしまった。



「……虫ぃ!?」



 虫虫虫虫むしむしむしむしぃいいい!?

 小さめの透明のケースの中に昆虫が闊歩していた。


 ひぃいい!? ひぅうう!? ひぇええ!?

 背筋がぞわぞわする……!?



「……昆虫の、昆?」



 テンパっているアタシの隣で、切ちゃんが首を傾げていた。

 あんまり驚いていない……?


 二人は昆虫を物珍しそうに見ていた。


 思ったよりもタフなようですよ……。

 アタシ達の絆に影が差してしまった気分ですよ。

 おのれ昆虫めぇ……。



「ちなみに部員がわたし一人なので、同好会なんですけどねぇ。昆虫同好会、略すと昆同でしょうか。どっちでも一緒ですけどね!」


「……混同している!?」







 目の前にはウゴウゴと虫かごを彷徨う昆虫の姿がある。



「クワガタのクワちゃんです!」


「……」


「……」


「……」


「クワちゃんですよ……!?」


「……」


「……」


「……」


「クワちゃんでした……」



 また諦めてしまった。

 申し訳なく思います。



「……早いですね」



 何だか可哀想に思えてしまったので質問をしてみる事にする。

 まだ四月の半ば頃、クワガタやカブトムシは夏のイメージがあるけれど。



「そうですね。元々クワガタは夏より早く活動を始めるのですが、最近は気候が暖かかったのでクワガタ達も早めに動き出してるみたいですよ。地域の影響も大きいんですよね。この子は幼虫の頃から育てているので違いますが。元々この辺りの地形は……」



 めっちゃ語りだす昆々先輩、情熱を感じる。

 だが困った事が一つあった。



「……」


「……」


「……」



 三人共あまり昆虫に興味が無いのだ!

 昆虫に興味ある系女子は絶滅危惧種なのだった。


 アタシ達は暫くの間、昆々先輩の話に付き合っていた。






「さて、では依頼の話に移るとしましょう」



 話もひと段落ついた頃、昆々先輩は本題に入る事を思い出す。

 しかし既に嫌な予感しかしない……。

 一応聞いてみるけど……。


 そして次の瞬間、奇跡が起こった。



「実はこの子を預かってもらいたく」


『無理!!』



 アタシ達三人の声が揃ったのだ。

 無口系トリオが声を揃える奇跡が起こった、これは奇跡です!


 やはり二人でも家で昆虫を飼育するのはNGのようですね!


 二人との絆に光が射す。

 大切なモノを取り戻した気分だった。

 ありがとう昆虫!



「御母さんに黙って飼っていたのですが、部屋の中に勝手に入って物色されて捨てて来いって言うんですよ!? あんまりじゃないですか!? わたし泣きそうです!!?」



 ツッコミどころが多かったけど、気になる点がある。



「……部室で飼えば良いのでは……?」



 この部室なら十分だと思うけれど。



「いや、同好会なもんで……。ここも間借りしてるんですよ。英雄召喚部の隅っこを……」


「……英雄召喚部」



 ボソッと呟いた日和ちゃん。

 分かる……、そっちの方が気になる!



「間借りしてる身で、ずっとは置いておけないから一時避難をと思いまして」



 そのツケがアタシ達に回ってきたという事でしょうか……。



「昨日何て大騒ぎだったんですよ、ぎゃーにゃーふゃー! って女子生徒の悲鳴が乱舞してたんですから」



 愉快そうに笑う昆々先輩、アタシ達も悲鳴を乱舞する側なのですけど?



「お願いです! もう待機部さんしか頼る所が無いんです!! このままじゃこの子が野に帰る事になるんです!?」


「……帰せば良いんじゃ?」



 素朴な疑問だった。

 昆虫は元々は野に居る生き物ですよ。



「ダメですよきっと、ダメダメです。この子は生まれてからずっとこのケースの中で過ごしていたんです。きっとすぐに喰われちゃいますよ……、どよん……」



 自分でどよんって言うんですね……。



「……自然の摂理」



 日和ちゃんが手を合わせる合掌をしていた。



「まだ死んで無いですからね!? クワちゃんはまだまだこれからですからね!?」



 依頼の内容は分かったけど。

 それでどうするか、そう考えた時にアタシ達の結論は早かった。



「……出直します」


「うわぁー!? 待って下さいよ!?」



 昆々先輩の悲鳴が乱舞していた。



「また白い目で見られるの嫌なんですよー!?」



 残念だけど、自分で選んだ道なのではと思ってしまった。





 今回の依頼は難易度が高い……。

 アタシ達は諦めて部室に戻ることにした。




「……」


「……」


「……」



 部室で待機していると。



「……モドッターノダー」


「……ただい、ま」


「……遅くなったね」


「……!」



 先輩達が帰ってきた。



「……テゴワカッタ、エビブ」


「……ゆでエビを、振舞ってくれたのには、驚いたね」


「……エビ好きに悪いやつは居ない」



 先輩達は笑いあっている。

 エビ部の方が良かった気がします……。

 結構羨ましかった。



「……ん、どうかした?」



 アタシ達の様子に気付いた花梨先輩が訊ねてくれる。

 三人で顔を見合わせた後、事情を話すことにした。



「……」


「……」


「……」


「……」


「……」


「……」


「……」



 アタシ達は黙り込んでしまった。

 先輩達の表情も固まってしまっている。


 高校三年生になったからといって、虫が大丈夫になる理由が女子には無いのだよ!



「……ムシハムシ」



 福海先輩がボソッと呟く。



「……ツッコまないよ?」



 それにツッコむ花梨先輩。



「……ムシサレタ」


「……してない、よ!?」



 何だか虫の話を無視しようとしている気配を濃厚に感じた。


 そうか……!

 聞かなかった事にすれば全て解決なのでは!?


 若干ズルい自分が芽を出す。



「……やるよ」


「……!??」



 そう言ったのは大儀見先輩だった。

 少し意外だった。


 クールな印象のある大儀見先輩だったが、思った以上に部活動に紳士的だ。

 カッコいい……。



「……ウン」


「……やろうか」



 先輩達は覚悟を決める、その覚悟とはあの昆虫を……。

 この待機部の部室で飼うという事!!


 ……。

 絶望的だ……。


 その時、アタシの肩を叩く人物が居た。

 それは全然喋らない先輩のルー先輩だった。



「……ルー先輩?」


「……!」



 アタシの方を見て目を輝かせるルー先輩。

 喋っている所を見たことも無い先輩が、アタシの肩を叩いた理由が分からない。



「……!」



 ルー先輩は嬉しそうに胸元で手を振っている。


 何だか犬みたいで可愛い……。

 って違う!?



「……な、何ですかルー先輩?」


「……!」



 返事はない。

 そう、ルー先輩はこの中の誰よりも無口なのだ。



「……多分、だけど」



 こちらを見ていた花梨先輩が笑みを浮かべた。



「……ルーセンパイ、ヒキトリノマキ」


「……!??」



 あの昆虫を引き取ってくれるというのでしょうか!?



「……!」



 ルー先輩は頷く。

 凄い! 昆虫が好きな女子は実在したんだ!



「……」



 アタシ達一年組は顔を見合わせると、部室を飛び出していった。

 その姿を微笑ましそうに見ていた先輩達の事を、アタシ達はまだ知らない。







「……クワちゃん!」



 昆部の部室に入る時、思わず声を荒げてしまう。



「はい! クワちゃんですよ!!」


「……先輩が引き取ってくれるって!」


「ぶわぁ!? 涙が出てきたぁ!?」



 驚くより先に泣き出す昆々先輩、感情が一足飛ばしです!?



「では、この子をお願いします。来週までには何とかしますので……」



 そう言って透明のケースを差し出してくる昆々先輩。



「……」


「……」


「……」


「ど、どうしました……?」


「……」


「……」


「……」


「まさか触りたくないとか!?」



 今回の事で少し思った事がある。

 アタシが苦手なモノでも、好きな人は居る。

 そういう事をちゃんと認めたいと思う。


 こういう時に何だけど……、いやこういう時だからかな。

 ふと思い付いた言葉を二人に伝える。



「……(ボソボソ)」


「何か耳打ち始めたのですが!?」



 二人はそれを聞いて笑みを浮かべると頷いた。

 まだ頼りないアタシ達だけど、ちゃんと進んで行く為に。


 ケースを受け取ると、アタシ達は声を揃えて言った。



「……待機部に御任せ下さい!」



 そう何て事の無い、アタシ達だけの決め台詞だった。





 k第7話k

  郡風華は認めたい。

            完





 後日の話だけど。


 ルー先輩がクワちゃんを返す事を渋り……。

 それはもう凄く渋りまして……。


 ルー先輩の家の子になったそうです。



「クワちゃぁああん!?」



 少し可哀想な昆々先輩だった。

。今回の向き合いポイント

自分の苦手なモノを大切にしている人を知る。

認める事で自分も成長するのだから。

でもまだまだ成長途中!


。次回

寄見日和はまとめたい。



次回は待機部の面子をまとめていこうと思います。

登場人物が多いですからね!


そういえば前回のスマイル部は、前作の”レティセンスガールズ”で登場していない部活動なのですが幻の二月編で知り合ったという脳内設定になってます。

伝えるの忘れていてごめんなさい><


今月も何とかなりました、来月も頑張ります!

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