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6/12

郡風華は笑いたい。

「ひっ……」



 前の席の先見さんが怯えたような声を上げた。

 アタシがプリントを受け取っただけなのに。



「……ご、ごめんね」



 思わず謝ってしまう。

 アタシは悪くないのに……。


 怒っていないのに怒っていると思われる。

 それが日和ちゃんと切ちゃんの二人と友達になってからも続いている。




k第6話k

  郡風華は笑いたい。




「……」


「……」


「……」



 部室に入ると、大儀見先輩と福海先輩が勉強をしていた。



「……ココハ?」


「……こっちに代入」


「…………?」



 福海先輩が首を傾げている。



「……少し戻ろう」



 大儀見先輩は前のページをめくっていた。

 どうやら難航しているようだった。


 三年生の授業は大変そうだ……!



「……ア」


「……お疲れ」



 二人はこちらに気付くと笑みを浮かべる。

 その素敵な笑みに、頑張って笑みを返そうと試みるが……。



「……?」


「……?」



 伝わらなかった……!



「……はぁ」



 落ち込んでしまう、笑顔すら上手に浮かべられないのだから。


 アタシ達は部室の椅子に座る。

 部員七人でも余裕のある結構広めの部室だ。


 専用の椅子まで用意してくれた、ありがたい事だと思う。


 椅子に座ると少しボーっとしてしまう。

 どうすれば怖がられない自分になれるんだろう。


 ぼんやりと大儀見先輩の方を見ていて思う。

 本当に綺麗な先輩だなぁ……、モデルの人みたいだ……。


 身長も高くてスラっとしてて、目付きは鋭いのに笑った時の顔が可愛らしい。

 無敵なのでは……?



「……はぁ」



 自分と比べて、改めて落ち込んでしまう。



「……悩み事?」



 その様子に気付いた大儀見先輩がアタシに訊ねてきた。



「……い、いえ!?」



 大したことではない、相談するようなことじゃ……。



「……」


「……」



 少し変な空気になってしまう、注目を集めたみたいで恥ずかしい。

 ふと、大儀見先輩は口元に手を置いて考える様な仕草をすると。



「……三人に御願いがある」



 少し深刻そうな顔で言った。



「……???」



 私達三人は顔を見合わせた。







「ニッコリニコニコスマイルお届け! 世界を救うよ明瑠衣未来!!」



 そして目の前の方は決めポーズを取った。



「……ポカーン」


「声に出してポカーンって言われた!?」



 大儀見先輩に言われた通りの部室にやってきたが、突然のことに思わずポカーンと言ってしまった。



「……あ、す、すみません」



 先輩に対して失礼だと思って必死で謝った。



「良いんですよぉー。ふふ、スマイルお届けできましたか?」



 もしかして、笑うべきところだった……?

 わ、笑わなきゃ!



「……!」



 頑張って笑みを作ってみる。



「む、無理は禁物ですよ!?」


「……!??」



 逆に気を使われてしまった……。



「……」


「……」


「……」



 結局いつも通り、無口が三人並ぶ。



「皆さん……、三人とも笑顔不備ですね!」



 だけど、指摘された其処じゃなかった。

 笑顔不備とは一体……?



「それは笑顔が不備という事です!」


「……!??」



 聞く前に教えてくれた!?


 しかし、この部活は一体何なのだろう……?

 大儀見先輩は顔を出すだけで良いと言っていたけれど。


 その様子に気付いたのか、明瑠衣先輩は部活の説明をしてくれる。



「スマイル部の活動は、笑顔を広める事です!! 笑顔って素敵!!!」


「……」


「……」


「……」


「無口さんですね!? まぁ、慣れてますが」



 慣れているらしい……?



「アナタ達の先輩達にも手を焼いたものです」


「……先輩達?」


「えぇ、彼女達も我がスマイル教の信徒なのですよ!!」


「……スマイル教!?」



 思わず口を突いて出てしまった。



「あ、スマイル部でしたね、間違えました、てへ。……本当は研究会ですけどね……」


「……」


「……」


「……」



「急に不審者を見る目になった!? 安心してくださいね!? 大丈夫ですからね!?」



 凄く必死な明瑠衣先輩だった。

 大儀見先輩の紹介なのだから多分大丈夫だろう、……きっと。


「よし、まず笑みを作ってみましょう!」


「……」


「……」


「……」


「えい!」


「……!!?」


「……!??」


「……??!」



 明瑠衣先輩が日和ちゃんのほっぺを掴んでムニっと広げる。



「……ぁわわ」



 日和ちゃんの口から困った様な声が漏れていた。

 だけど、ちょっと悪いとは思うけど……。



「……可愛い」


「……!!?」


「……あ、ごめんなさい……」



 思わず口から出てしまった!



「良いじゃないですか、私から見ても可愛いですよ!! むにむにむにむに!」


「……!!?」



 むにむにされている日和ちゃんはやっぱり可愛かった。


 解放された日和ちゃんは頬っぺたを少しさすった後。

 自分でむにむにしていた、……可愛い!



「次はアナタの番です!! むにむにー!!」


「……??!」



 今度は切ちゃんがむにむにされている。

 ちょっと泣きそうな顔に見える切ちゃん。



「……可愛い」


「……??!」


「……あ、ごめんなさい……」



 思わず口から出てしまった。



「いやいや分かりますよ、困り眉も可愛いですよ!! むにむにむにむに!」


「……??!」



 むにむにされている切ちゃんもやっぱり可愛かった。



「最後はアナタの番です!! むにむにー!!」


「……!??」



 ついにアタシがむにむにされる番だった!!



「……」


「……」



 二人がアタシを覗き込む。

 いや分かっている、二人に比べたらアタシは可愛くない。



「アナタ……、可愛いですね!!」


「……!??」



 予想外の言葉に驚いた。



「ちょっと怒っているように見える中に滲む慈愛の心、アナタ凄く良いですね!!」


「……ポカーン」


「あ、あれどうしました? 褒めましたよ?」



 言われ慣れていない言葉に、またもポカーンと言ってしまった。



「もしかして、怒りっぽく思われたりしてそれがコンプレックスになってたりしますか?」



 凄くピンポイントで当てられてしまう。



「……はい」



 アタシは頷く。



「……」


「……」



 二人がこちらを見て、驚いた顔をした。

 何か、恥ずかしいな……。



「ギャップって良いよね!!」


「……?」



 この先輩は急に何を言い出したのでしょうか。



「アナタのその、私は怒りっぽく見られて笑顔も下手で、でもそれでも……って感じは凄く好き!」


「……す、凄く恥ずかしい!?」



 何か恥ずかしいどころか、凄く恥ずかしい感じにされてしまった!?



「私はキュンってなりましたよ、アナタの笑みで。自信を持ってみましょう」


「……そう、なのかな?」



 自信が無い。

 今まで上手くできなかったのにこれからできるなんて思えない。


 笑顔の練習だってしたし、喋り方の練習だってした。

 それでもダメで、全部諦めて……。


 ……でも。


 あの時、日和ちゃんが頑張っている姿を見なければきっと、今も一人で。

 あんな風に自分の殻を破りたいと、そう思ったんだ。



「……私も笑えたから」



 不意に日和ちゃんがそんな事を言った。


 そこで気付く、この前に見せた日和ちゃんの笑み。

 優しい柔らかな笑み。


 それは、理由のない気まぐれなどでは無く。


 日和ちゃんがまた一つ殻を破ったということ。

 まだ、変わろうとしているということ。



「……」


「……」



 二人がこちらを見て頷く。

 二人とも頑張っている事を知っている。


 だからこそ思える、アタシも頑張ろう。

 当り前だけど簡単じゃないそれを、負けないように。


 目をつぶる。

 集中する必要はない、感じたままに。


 だって、今のアタシは二人と一緒にいられて。

 本当に嬉しいから!



「……!」


「……!!」


「……!!!」



 薄く目を開いたら、驚いた二人の顔が映った。



「良いですね!! 最高ですね! スマイルですね!!」


「……出来て、ましたか?」


「……うんうん」



 切ちゃんが全力で首を縦に振る。



「……よき!」



 日和ちゃんが両手の人差し指を立てて優しく笑った。

 二人の反応に胸が熱くなる、凄く嬉しい。


 だからちゃんと言おうと思った。



「……ありがとう、切ちゃん日和ちゃん!」


「……!」



 初めて下の名前で呼ばれた日和ちゃんは、少し驚いた後。

 嬉しそうに笑った。



「良いですね良いですね! 笑顔は連鎖反応を起こすのです、化学反応なのです!!」



 化学反応!?


 大げさすぎるけど、大げさにしたくなる。

 それもまた笑顔の反応なのだろうか。



「アナタは大儀見ちゃんに似てますねぇー」


「……!??」



 明瑠衣先輩はアタシの頬を掴みながら言う。


 アタシが大儀見先輩に……?

 そんな、恐れ多い……。



「自信を持って良いと思いますよ!」



 でも、少しぐらい自信を持った方がいい。

 今までそれが出来てなかったから。



「では皆さん、スマイルの魅力が分かりましたかー?」


「……はい!!!」



 アタシ達は声を揃えて言う。



「では復唱お願いします。スマイル最高!! さー行こう!!」


「……」


「……」


「……」


「何で言ってくれないんですか!?」


「……ダジャレだったので……」


「ダジャレに厳しい!? じゃあ、スマイル最高でお願いします」


「……それなら?」



 割と懐疑的だった。



「友情を温め合ってきたのに意外と手厳しい!? でも私は負けません。行きますよー、スマイル最高!!」


「……スマイル最高!!!」


「さー行こうっ!!」


「……」


「……」


「……」


「……いえーい! ありがとうございます!」



 アタシ達はハイタッチをして盛り上がる。

 笑顔さえあれば何も無くても盛り上がれる。


 これは確かに魔法だった。



「じゃあ、こちらにサインをお願いします」


「……???」



 アタシ達は首を傾げる。



「スマイル部の入部届です、ゲヒヒ」



 最後の最後で、下卑た笑みを浮かべる明瑠衣先輩だった。






「……お帰り、なさい」


「……ドウダッタ?」



 部室に戻ると先輩達が揃っていた。

 アタシ達は顔を見合わせると、声を揃えていった。



「……スマイル最高!!!」


「……」


「……」


「……」


「……」



 今度は先輩達がポカーンとしていたのだった。








 前の席の人がプリントを回してくれる。

 少し怯えた様に見えるそれに、アタシは……。



「……ありがと!」



 精一杯の笑みを見せる。



「う、うん!」



 前の席の、先見さんは小さい笑みを見せた。



「……!」



 こんな簡単な事だった。


 アタシは自然と笑みを浮かべると。

 後ろに居る大切な友達に、プリントを回したのだった。

。今回の向き合いポイント

自分の笑顔に向き合った風華。

自然な笑顔で魅力倍増!

まだまだ成長中!


。次回予告

郡風華は○○たい!!



文字数が少なくなって申し訳ありません、これからコメディ路線に転換するにあたり一話の文字数を3000文字程度にする予定になっております。

その影響を風華ちゃんが受けるのは可哀想なので、次話も風華ちゃん主人公でいこうと考えております。

細かい話は活動報告にも書いていますので、御時間宜しければと思います。



この度は、大変お待たせして誠に申し訳ありません。

別の連載を始めて、それを完結させて、燃え尽き症候群になってしまっていました。


何も書けない状況だったのですが、改めて創作と向き合う内にレティセンスシリーズはより大切に思うべきだと気付きました。

更新頻度をあげられる様に、ボク自身がこの”三人娘に向き合いたい”と思います。


時間を見つけてガールズの方も推敲肉付け何かをしたいと考えております。

別の作品も書くつもりではありますが、レティセンスシリーズをより大切にした上でじっくりと展開していこうと思います。


読者様のというより自分の事ばかりになって心苦しいのですが、気が向いた時にでも思い出していただけたなら幸いです。


月1話は投稿できるように頑張ります。


あと関係ないですが、本日バースデーです。

おめでとうございます。

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