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寄見日和はくくりたい!


 y第4話y


 ←寄見日和はくくりたい。←

       Λ




遭逢(そうほう)! ほこりは滅却焼却! ボランティア部の新部長!! 端々隅礼(はしばしすみれ)です!!」



 掃除機を構えた端々先輩が、カッコ良さそうなポーズを取っていた。

 剣に見立てた様な掃除機がお洒落です。


 しかし、これはどういう事でしょう……?


 反応に困ってしまいます。

 ここは思い切って、私も決めポーズを?



「……スミー」



 其処へ福海先輩が助け舟を出してくれた。



「ふくみー! 今日は宜しくお願いします!! 部長の端々隅礼です!!!」


「……1番ダメな人」


「どうしてですかー!?」



 端々先輩は大儀見先輩の言葉に声を荒げた。



「……誇りが、無い、から?」



 今度は花梨先輩が惚けた様に言った。



「ありますから! ほこりを殺すという、誇りが!?」


「……キケンシソー」


「何でですかー!?」


「……ふふっ」



 先輩達が笑っていた。

 ボランティア部の方とは仲が良いみたいです。


 同じ3年生だからそういう事もあるのかな。

 微笑ましい限りです。


 ……。


 もし自分だと、卒業までに数人と友達になれたら良い方に思えますね。

 尊敬の念を禁じ得なかった。





☆ 待機部部室 ⇒ New spot!!




          〆 校門前


 ――――――l  l――――――――


 通学路





 私達は待機部の依頼という事で、校門近くに集まっていた。

 活動内容の説明は聞いたけれど、まさか掃除をする事になるとは。


 待機部の活動理念は、他の部員達の学校生活を円滑に進める為の補助をする事。

 そして、一緒に青春っぽい事を積み上げていく事らしい。


 らしいって言うのは面白い話で、以前居た部員さんの影響との事だ。


 主な活動は放課後の1時間程、それも余裕を以ってという割と緩い条件だった。

 無理をしないというのも、その方が提唱していたらしい。


 誰かの為に自分を犠牲にするのは良くない、自分の為の青春をと言っていたそうだ。

 その考え方は凄く賛同できた。


 私は隣に居る奥手さんを見る。



「……??!」



 奥手さんはこちらの視線に気づくと、照れくさそうに笑みを浮かべた。

 それを見て、私の方も照れてしまう。


 部室での事を思い出す。

 先程はまさに青春の真っ只中に居た気がする。


 それにしても、奥手さんが昔遊んだあの子だったとは。

 全く気付かなかった……。


 うわぁ、ごめんなさいって感じだ!?

 遠巻きに謝っておこう。



「さぁ今日もゴミどもをぶち殺しましょう!」


「……!!?」


「……!??」


「……??!」



 端々先輩の強い言葉に驚く面々。



「……オオゲサ」



 福海先輩が冗談っぽく言って笑みを見せる。

 どうやら良くある事らしい。


 本日は学校近辺に咲いている桜の花弁の掃除をするらしい。

 掃除用具はボランティア部の方が用意してくれていた。



「……!」



 郡さんが箒と塵取りを持って、気合を入れているのが見えた。

 やる気が溜まっている様で、私も見習わないと、と思わせてくれる。



「……!」



 箒と塵取りを掴むと、気合を入れる。



「……私達、は、あっちの、方」


「……3人は向こうをお願い」


「……ヨロシクネ」


「……」



 待機部の先輩達が、私達新入り3人娘にそう言った。


 ルー先輩だけは喋らないけれど。

 そう言えば、さっきから一度も喋っていない!?


 ルー先輩は誰よりも無口らしかった。







 学校の周りの桜は多い。

 学校まで登ってくる坂道にも桜が並んでいる。


 その全てを掃除するのは流石に大変なので、本日は校門の近くの通学路を清掃するらしい。

 ボランティア部では桜が片付くまで大変な様だ。


 待機部としても、手伝える日は手伝う事になりそうかな?


 考えてみれば、これから過ごす学び舎の景観を維持する活動だ。

 私にも無関係では無い。


 この学校を大切に思う人達と、大切にしていきたいと思う私達と。


 少し遠い気もするけれど、間違いなく繋がっている。

 私達新入生と、先輩達が繋がっている。



「……ふふっ」



 それだけで、笑みを浮かべる自分に気付いてしまうのだった。



「……頑張ろう!」


「……!」


「……!」



 私がそう言うと、郡さんも奥手さんも頷いた。






 不慣れな私達は、ボランティア部の方が多い方で手伝う事になった。


 小さい紙屑や、たまに混ざるペットボトル等の資源ゴミ。

 そして大半を占める桜の花弁。


 それら全てを一つの袋に入れていく。

 ボランティア部の方が焼却炉で仕分けてくれるそうだ。


 正直いくつも袋を持つのは大変だから助かります。

 ふと、大きな声がして振り向く。



「死ねぇ、ゴミども!!」



 そう言って端々先輩は掃除機で吸い込んでいく。

 桜の花弁をゴミと言い切る辺りから強者の風格を感じさせた。



「気になりますか? この蟲毒製造機が!!」



 蟲毒製造機!?


 端々先輩は、格好よく掃除機を構える。

 時代劇の殺陣でも始まりそうな佇まいだ。



「……」


「……」


「……」



 私達は黙り込んでしまう。

 良いなぁとは思うが、反応が表に出せない。


 無口である必要は何処にも無い。

 だけど、それを簡単に捨てられないから無口なのだ。



「あらら、無口さんですね。ふふふん、知ってますよ知ってますよ」



 何か意味深な笑みを浮かべる端々先輩。



「……な、何をですか?」



 私は言葉を絞りだして聞いてみる。



「無口系女子の事をこう呼ぶんですよね!!」



 ――――レティセンスガール。


 レティセンスは無口という意味らしい。

 面白い事に、私にピッタリの言葉だった。


 いや、私達に……。



「そしてその集まりを、レティセンスガールズって言ってましたねぇ」



 レティセンスガールズ……。


 何故か、その言葉に少し惹かれる想いがあった。

 ガールの複数形、つまり一人では無い。


 そんな当り前じゃないけど、ありふれたそれが少し嬉しい。



「良いと思いますよ無口さんでも、それも個性ですから!」


「……!」



 喋らない事は悪い事ではないと言ってくれる。

 そんな風に考える事もできるんだ。


 端々先輩の飾らない言葉は、胸にスッと入ってくる様だった。



「では、ゴミどもを殲滅です!」



 端々先輩のこれも、個性なのですね。

 でも少しは飾った方が良い部分もあるような……?



「そう言えば、皆さんは部屋の片づけとかしてますか?」


「……」


「……」


「……」



 端々先輩の問いかけに、言葉に詰まる。



「あらあら、その反応はしてないですね。駄目ですよー、部屋は綺麗にしておかないと」



 そういうものなのだろうか?

 実際、綺麗な部屋では無いけれど特に不自由も感じていない。



「片づけをするとね。自分の大切なモノがより輝いて見えるんです」



 大切なモノ……。

 チクリっと胸が痛む。


 私は、大切にしたいモノを大切にできているだろうか?



「そして何よりも」



 端々先輩は、少し考える様な仕草をして。



「ほこり共を殲滅できますからね!!」



 茶化すように笑った。

 それを見て、私達も笑みを返すのだった。






 一時間ぐらいゴミ拾いをして、一旦集合する。



「……今日は、これくらい、で」


「はい! 助かりました!!」


「……マタネー」


「ありがとう、ふくみー!」



 私達は焼却炉の方にゴミ袋を集めると、後は任せる事にした。



「……部室に戻るよ」


「……はい!」



 大儀見先輩の声に釣られて私達は歩き出す。



「……どう、だった?」



 花梨先輩が声を掛けてくれる。



「……」



 何て答えようかと悩んでいると言葉が出てこない。



「……そっか」



 花梨先輩は特に困った様な様子もなく、そんな風に言う。

 肩肘張った感じじゃなくて、等身大で歩いている様な。


 2年違うだけで、人はこれほど大人っぽく見えるのだろうかと。

 尊敬と同時に、自分に対する不安を感じた。


 部室に戻ると、大儀見先輩が冷蔵庫を開ける。


 ん? 何故普通に冷蔵庫があるんだろうか??

 というか良く見ればキッチンまである!?



「……飲んどき」



 大儀見先輩はペットボトルの飲み物を私達に渡してくれる。



「……あ、これ、も」



 今度は花梨先輩がカロリーのメイトさんを渡してくれた。


 時間は丁度昼だし、御弁当を持ってきて居ないのも知っているのだろう。

 心遣いがありがたい。



「……お疲れ、さま、でした!」



 労いの言葉までくれた。



「……オツカレー」


「……カツが入ったら?」


「……カツカレー!?」



 漫才まで見せてくれた。



「……これから、3人の、高校生活が、楽しくなるように、一緒に、頑張っていこう!」



 花梨先輩はオーっと手を上げた。

 一人で!


 その後、照れくさそうに俯いている。

 本当に可愛らしい先輩だと思う。



「……オー」



 勇気を出して言ってみた。

 すると花梨先輩は、いや先輩方は嬉しそうな顔をしてこちらを見つめてくる。


 私も恥ずかしくなったけど、決して嫌な気持ちでは無かった。



「……ウォー」


「……ォー」



 郡さんと奥手さんも同じように声上げた。

 そしてその後、恥ずかしそうに俯く。


 もはや通過儀礼の様相だった。






 私達は、いただいた飲み物や食べ物を近くの机に置く。



「……机?」



 郡さんの呟きでハッとなる。

 そういえば、さっきはこの机無かったような……?



「……ふふ、気付い、た? ルー、先輩、です!」


「……!!!」



 ルー先輩が格好良さそうなポーズを取っていた。

 流行っているのだろうか!?



「……机を、用意、して、貰ってたの、ありがと!」


「……!!!」



 ルー先輩は嬉しそうだった。

 私が思うのも何だけど、ルー先輩は特別無口でどんな人かは分からなかった。


 だけど、やっぱり良い人の様だ。

 この部活の一員なのだと思うと、凄く納得できる。


 何だろう、雰囲気が良いんだ。

 皆があるがままで居る様な、そんな空気感。


 それを感じて、私さえも心地よく感じられる。

 その一員に私もこれからなるんだ。


 少し気おくれしそうになったけれど。



「……(クピクピ)」



 幸せそうに、クピクピとコーラを飲む福海先輩を見ていると直ぐに消えてしまった。



「……いただこう」


「……はい」


「……うん」



 私達3人も、先輩達の様な関係になれたら良いな何て思いながら。

 いただいた飲み物で喉を潤した。






。閑話



 私達はペットボトルの飲み物を飲んでいく。


「……(クプクプ)」


「……(コプコプ)」


「……(クルクル)」


「……飲む、音が、違う!?」


 花梨先輩のツッコミが響いていた。





「……ミニあんかけオムライスお待ち!」


 待っていないのに大儀見先輩がオムライスを作ってくれた。

 餡までかかっている!



「……ありがとうございます」



 私達はお礼を言うとオムライスをいただいた。



「……!」


「……!」


「……!」



 こ、これは!?

 ふんわりとした卵と餡かけが口の中で蕩ける様です!?


 思わず次々とかきこんでしまい、直ぐにオムライスは無くなってしまった。

 もっと食べたくて名残惜しい。



「……また作ってあげるから」



 大儀見さんが笑みを見せると。



「……はい!」



 私は恥ずかし気も無く大きな声で言ってしまった。

 後で思い出して恥ずかしくなった。


 しかし、キッチンのある部活って……。

 良いですね!


 餌付けされていた。



休題。







 食事を終えると解散になった。


 大儀見先輩が作ってくれた手料理は美味しかったですねぇ。

 キッチンの重要性を思い知る。


 先輩達はまだ部室に残るとの事で、私達だけ御先に失礼する事になった。

 そのままの流れで何も言わないけれど。


 私達3人は一緒に帰ることに。



「……」


「……」


「……」



 無言のまま3人が歩く。

 何を話せば良いか分からずに、足取りさえ迷いそうだった。


 私達は友達になりたいと言った。

 だけど友達がどういうモノなのか、よく分からないまま此処まできた。


 二人の顔を見ても戸惑っているのが分かる。

 何か、キッカケがあればと周囲を見渡すと。



「ひゃははははっ、燃えろ燃えろー!」



 焼却場の方から恐ろしい声が響いてきた。

 端々先輩だろうか。



「……くすっ」



 それを聞いて、思わず吹き出す。

 その姿に二人も笑みを見せた。


 ……。

 一瞬何かが分かりそうな気がした。


 何か……。








「……また、明日」



 途中まで一緒に帰って、分かれ道で二人と別れる。



「……はい!」


「……うん。明日」



 少しぎこちない笑みだったけど、友達っぽい感じだ。

 こんな時間を増やしていけば、先輩達の様になれるのだろうか。


 若干の不安を覚えつつも、家路を進む。





 途中、一人で考えながら空を見上げた。


 今日は特別な1日になったと思う。

 今まで見捨てて来た物事に、沢山気が付く事ができた。


 昨日までの自分を思い出す。

 少し恥ずかしい気持ちになった。


 だけど、嫌な感じはしない。


 理由を考えてみて、それっぽい理由は思いつくけれど。

 どれもそうだと決めつけるには、もったいなく感じていた。


 少し歩幅を広げて歩く。

 笑みを浮かべている自分に気付く。


 軽くなった足取りで何処までも行けそうだった。







「……ただいま!」


「姉ちゃん?」



 妹様だった、相変わらず元気そうで何よりだ。



「……!」



「何で笑ったの!? ちょっと御母さん、姉ちゃんが変なんだけど!?」



 妹様は駆けだして行った。

 変とは失礼な……。


 そうは思うが、普段は家でも無口なのだ。

 確かに不自然だったかも知れない。


 手洗いを済ませると、取り合えず荷物を部屋に置いてくる。

 それからは洗濯物を取り入れたり、犬の散歩に行ったりして。


 気が付けば直ぐに日が暮れていた。


 今日は頑張ったので御腹が空く。

 用意された夕食のハンバーグさんが輝いて見えた。


 心して食べよう。

 食材に祈りを捧げておいた。



「何か良い事でもあった?」



 不意に御母さんがそんな事を言う。

 いつもなら黙って頷く私だったが。



「……うん!」



 思ったよりも大きい声が出て、少し恥ずかしくなった。



「そうか、良かったな」



 御父さんもそう言ってくれる。

 ニコニコと晩御飯を食べている姿に、両親も安心した様だった。


 あ、そうか……。

 今まで心配をかけていたんだ。


 こんな直ぐに分かる事に今更気付く何て……。

 どれだけ自分が切り捨てて来たのかと、驚く。


 これからは少しずつでも、拾い集めていきたいと思った。



「……」



 そう思ったそばから、片づけを始める事になった。

 拾う所か、捨てるタイミングですねぇ……。


 予定通りだけど思考の矛盾に少し戸惑う。


 だけど、端々先輩が教えてくれた。

 片づけをするという事は、大切な物事をより大切にするという事。


 決して悪い事では無い。


 この世界には大切にすべき事と、そうじゃない事があって。

 それは一人一人違っていて、それをちゃんと見つめる為に片づけがある。


 きっとそうなのだろう。



「……」



 其処で改めて部屋の中を見る。


 我ながら思う。

 汚いな、この部屋……。


 昨日のパジャマはそのままだし、漫画の本は積まれているし、空のペットボトルも!?

 恐らく同年代の女子の部屋と比べると、致命的な気がします。


 理由は分かっています!

 どうせ友達何て来ないし適当で良いやって精神ですよね!?



「……友達ができました」



 私は跪いて、そんなセリフを吐いた。

 色々と感情が追いついていない有様だった。



「姉ちゃん……」



 妹様がボソッと呟いて去っていった。

 見られてしまった様ですね……。


 はぁ……。

 仕方のない事です、今までサボっていたツケが回ってきただけの事。



「……頑張りますかぁ」



 取り合えず目立ったゴミを捨てて、洗濯物が脱衣所の方にっと。


 簡単な作業だと思う。

 5分もあれば終わるはずなのに。


 なのに、なのにですよ。


 襲い来る誘惑の数々にさいなまれております!

 漫画! ゲーム機! そして……。


 それは忘れられない、思い出の品々だった。


 家族旅行で買ったものとか、進学の祝いで貰ったもの。

 誕生日の記念に、お祖母ちゃんの形見。


 捨てられないそれらは、思い出の洪水となって作業の妨害を計ってくるのだ。

 無くさない様にと、しまっていた場所に戻す。


 その中にふと、判断に困るアイテムを見つけた。



「……懐かしい」



 それは薄いピンク色のシュシュだった。

 少し古くなっていて、色が消えていきそうな気配だ。


 これを着けていたのは小さな頃。

 そうだ、奥手さんと遊んでいたあの頃だ。


 けど、何故此処にしまってあるのだろう?

 あまり思い出せない。



「……」



 一旦それが気になると、片づけに身が入らなくなった。

 パッと見は片付いたので、取り合えず御風呂にでも行ってこよう。



「……」



 ふぅ、暖かくて気持ちがいい。

 筋肉痛にならない様に揉んでおこうっと。



「……(クプクプ)」



 風呂あがりにはやっぱり御湯だね!

 ……。

 冷たいのを飲むと御腹を壊すから……。



「……」



 電気を消して、横になる。

 布団の中に入っても、気になってしまっている。


 あのシュシュは当時の私の御気に入りだった。


 だけど、何故外してしまったのか。

 何故、未だに捨てられずに残しているのか。


 それが曖昧だった。

 何か理由があったはずなのだが……。


 ぐぅー、気になる気になる気になる……zzz


 …………。

 ……。


 気が付けば朝だった!

 我ながら健康的だと思ってしまいます。







 晴天なり、と空を見上げて笑ってみた。

 本日から本格的な高校生活が始まるのだ、天気に願掛けをしたくもなる。


 小走り気味に通学路を進む。

 学生服の生徒達が長い坂道を駆けあがっていた。


 途中、知っている人が居ないか見て回ってみる。


 そして誰も居なくて落ち込んでしまった。

 何という自滅行為!


 しかし、不思議と嫌な感じでは無かった。

 楽しいみたいな感情を、表立って味わえるのを嬉しく思う。


 浮かれているなぁ……。

 だがそれも教室に着くまでの話だった。



「……」


「……」


「……」



 誰も喋らないし!?

 私達は椅子に座って向き合ったまま、固まっていた。


 勿論挨拶ぐらいはしたけれど、其処から先。

 何を話せば良いか全く分からない。


 郡さんや奥手さんも同じ様な顔をして、少し俯き加減だ。


 私なんて二人の間に挟まれて、キョロキョロしてしまっている。

 右往左往と言っても良いのかも知れない。


 何とかしようと他の人達を参考にしようと思ったけれど。

 まだ高校に入ってすぐだし人間関係もまばらだ、会話している人も少ない。


 何なら私達が一番進んでいるのかも知れない。

 凄いぞ私!


 そうは思ってみたものの、これは良くない。

 あまりにも良くないと思う。


 このままでは直ぐに他の人に抜かれていって、気が付けば最下位争いをする流れだ。

 謎の自信があった。


 けどそれだと、変わったと思った自分自身を裏切る様なものだ。

 私は、日和見しないと決めたから。


 糸口を見つけようと、もがいてみる。


 私達に共通した事はまだ少ない。

 だけど、ちゃんとある。



「……部活」


「……?」


「……?」


「……今日は、何をするんだろう?」


「……恐らくですが」



 郡さんは前置きをすると。



「……ボランティア部の続きでは無いでしょうか?」


「……(うんうん)」



 郡さんの返答に奥手さんが同意していた。



「……」


「……」


「……」



 会話が終了してしまった!!


 駄目だ!?

 あまりにも経験不足で、会話をするのさえ難しい。


 中学で仲良さそうにしていた人達を思い出す。


 全然覚えてない!?

 もうそれ日和見通り越して無関心だったのでは!?


 自分自身にツッコミを入れている。

 その間も時は流れていく。


 まずいですねぇ……。

 先生が来る前に、何かしらの成果を上げないと。


 失敗のメモリーが刻まれることは必至だ。



「……寄見さんは」



 そこに郡さんが口を開く。



「……何座?」



 えっとえっと……。



「……蟹座です」



「……アタシは、うお座です」


「……うお座?」


「……はい」


「……」


「……」



 そして会話が終了した。

 何だこの会話?!


 再び沈黙が訪れる。



「……」



 郡さんが顔を真っ赤にしていた。

 何か申し訳ない気持ちになってきたよ!?


 だが一つだけ分かった事がある、郡さんがうお座だという事。


 じゃなくて、郡さんもこの空気はイカンと思っている事。

 心は一緒だ!



「……セツは、……乙女座」


「……!!?」


 この空気で奥手さんが被せてきた!?

 だが奥手さんはこの空気に気付いてないのか、ヨシ! って感じの顔をしていた!



「……アタシは、うお座です」


「……はい!」



 郡さんが再びのうお座宣言をして、奥手さんが相槌をしていた。



「……」


「……」


「……」



 終わってしまった!?

 うぉおおおお!?


 其処へ、先生がやってきた。

 タイムオーバーの様だった。


 何とか一つの形にはなったのだろうか?

 なってないよね、多分……。


 不安になる一日の始まりだった。







 最初の授業を受ける。

 高校生活が遂に始まった気がした。



「……」



 難しい……。

 そして、付いていけない気がしてきた……。


 休み時間になる度に、せめて授業についてでも話そうと声をかける。



「……」


「……」


「……」



 たまに沈黙が訪れたけど、何とか理解を深めようとしていた。





 遂に訪れた、昼休み。



「……あ、あの!?」


「……は、はい!?」


「……な、なに!?」



 全員がキョドっていた居たが、私は続ける。



「……御弁当一緒に食べない?」


「……是非!」


「……うん!」



 思い切って言ってみるものだ。

 丁度席も近い、私達は机を持ち寄って一つの塊になる。


 何故だろう、そんな事が凄く嬉しかった。



「……あぅ」


「……奥手さん?」



 何か恥ずかしそうに顔を隠す奥手さん。

 一体どうしたのかと、辺りを見渡すと。


 他のクラスメイトから見られていた。

 高校に入ってすぐなのに、仲良さそうにしている私達が珍しく映るのだろう。



「……」



 郡さんも視線に気付いて俯く。



「……」


「……」


「……」


 気おくれしてしまった私達は、折角の御弁当タイムを粛々とこなした。

 失敗のメモリーが重なっていきますねぇ……。








 そんなこんなで、学生生活初日は過ぎて行った。

 夕方になると流石に脳が疲れてしまっていた。


 漫画ならいくらでも読めるのに、教科書はすぐに眠くなるのは何故だろうか。



「……」


「……」


「……」



 部室に向かいながら、そんな事を考えていた。


 色々あったけれど、いよいよ部活の時間ですねぇ。

 気持ちを切り替えて頑張ろう!


 しかし、今日は何をするのだろうか?







「……ボラ、部の、手伝い!」



 花梨先輩が力強く言っていた。



「……!」


 予想が当たって、郡さんも少し立ち直った様に見える。

 今日も掃除の続きの様だ。


 依頼を待つ待機部と言っても、いつでも依頼がある訳ではないらしい。

 それならボランティア部の手伝いができるだけ上等な物ですねぇ。


 私達は再び校門の前に集まった。



「今日も宜しくですよ!」



 端々先輩が決めポーズをしていた。



「……!!!」



 それに並んでルー先輩がポーズを取っていた。

 やはり流行っているのでしょうか??


 昨日は早めに切り上げたけれど、ボランティア部自体はもうちょっと残っていたらしい。

 掃除した跡が、結構先まで進んでいる。


 しかし再び散った桜の花びらが、一度掃除した通学路に再び散らばっていた。


 延々と繰り返す事になるかと思ったけれど。

 桜自体はもう色が変わってきて、これが最後の力なのかも知れない。


 そう考えると、少し可哀想にも思えたし寂しくも思えた。



「また来年だぜー!!」



 端々先輩は蟲毒製造機こと、掃除機を振り回しており少し危ない。



「ハッシー危ないから止めて!!」


「ごめんなさいです……」



 ボランティア部員さんに怒られていた、部長とは思えない様に少し笑ってしまう。

 よし、頑張ろう!






 塵取りと箒で今日も掃除を進めていく。

 昨日は無かったゴミもあり、取り逃していたゴミもある。



「何処にでも捨てるんですよね」


「……ですね」


「わざわざ取りにくい所に捨てる人もいますよ!」



 確かに、何故か溝とか細かい隙間にゴミがあった。

 悪いことをしていると思っているのかも知れない。


 それを隠そうと……?


 でも、隠しきれるものではない。

 いつか誰かには気付かれるものだ。


 後は気付いた人の選択、かな。



「……ふぅ」



 暑いからか、変なことを考えてしまった。

 まだ4月だと言うのに、日が強い様にも思えた。


 汗ばむ肌に髪がくっ付く、かゆみを感じて煩わしい。

 いっそ髪の毛を……。


 その時に、ふと思い出した。

 あの古くなっていたシュシュ。


 髪が肌に付かない様に使っていた。

 本当はまだ使いたかったんだ、だけど子供っぽいと思ってしまった。


 あの頃、私は早く大人にならないとって思っていた。


 それはきっと、傷つかない為に。

 大人になれば傷つかないと思ったのだ。


 だから使わない様にした。


 でも、でも……、お気に入りだった。

 本当は着けていたかった。


 それなのに外した。

 捨てられない癖に。


 子供っぽいと思う。

 あれは、あのシュシュは幼い頃に捨て去ろうとした私そのものだ。


 今なら分かる。


 そんな風に何でも切り捨てるのは大人ではない。

 そんな風に簡単に割り切る様なものでもない。



「……そっか」


「どうしました?」


「……大切な事を思い出しました」


「そうですか、それは良かったですね!」



 端々先輩は嬉しそうに笑みを見せる。


 そんな飾り気のない姿に。

 私も釣られて、笑みを返した。









 自宅に帰ると、真っ先に部屋に向かう。


 大切にしていたという事が、入れ物の箱からも分かる。

 忘れていたけど、これは間違いなく大切なもの。


 片づけをした事で再会できたのは、自分自身の思い。


 シュシュを手に取ると姿見に駆け寄る。

 2つのシュシュを左右に着ける。


 その姿は、幼い頃の私の面影。

 だけど、ちゃんと成長して昔とは違う姿。


 過去と現在が重なって、薄い笑みを浮かべた私は。

 少しだけ大人っぽく思えた。



「姉ちゃんが鏡見て笑ってる……」



 妹様が駆けていった。

 また見られていた様ですね……。








 次の日、通学路の桜は散ってしまい。

 その花弁も片付いていて、新しい装い。


 綺麗になった街並みにステップをしながら駆けていく。



「……おはよ!」


「……おはようございます」


「……おはよぅ」



 昨日と同じように挨拶をする。

 今日は何を話そう。


 このシュシュが教えてくれた。

 無理して上手くやろうとしなくても良い。


 友達と会話をするのに、怯えや緊張はいらない。

 そう、言葉にするならば。


 少しの優しい笑みだけあれば良い。



「……日和ちゃん」


「……え?」


「……そのシュシュ」


「……!!?」



 奥手さんは少し悩んだ後。



「……似合ってるよ」



 絞りだす様に続けた。

 その言葉に、改めて思う。



「……ありがとっ」



 優しい笑みだけあれば良い。


 この日常を大切にする為の、

 そんな小さな願いを見つけたのだった。





 


 →寄見日和は髪をくくりたい。→



 完。

。今回の向き合いポイント


 幼い感情という大切な想いと向き合った。

 まだまだ成長中!!



最後のシーンのイメージイラストを描いてみました。


↓ここ

https://www.pixiv.net/artworks/93048569


日和ちゃんのアップ画像です、良ければご覧くださいませ!

クオリティはさておき、時間が掛かってるので密度のある絵になっています笑





大変お待たせ致しました!!


今回は明るい話になったと思います。

シリアスな話ばかりすると作品全体が暗くなってしまいますので、こういう話も混ぜ込んでいく所存です!


日和ちゃんはどっちかと言えば、一人ぼっちに適応しちゃったタイプです。

けれど、振り返った先で置いてきた想いと再会するみたいなのが、ゆるいシリアスとして描けるのでは無いでしょうか。


という方向性を置いておきます笑


過去の自分を抱えて、現在の友達に向き合う。

向き合い体質!!



ところで、くくりたいって方言では無いと聞いたの使ってますが、大丈夫でしょうか?

髪をまとめる時に使う言葉です、一応ね!



。次回予告


次回タイトルは決まってます。

奥手切は眠りたい!




方向性は見えてるので今回よりは早く投稿したい、です!!

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