45話 今度こそリンゴ持ってきてくれたん?
どうやら、12ハロンのチクショー道が書籍化するみたいですね。
おおそといっき! も二番煎じを狙ってワンチャンあり?
続きを書けやゴルァ!という感想が多かったので、書いてみたw
美浦トレーニングセンター
む? なんやなんや、騒がしいぞ。
またぞろ人間がぎょーさんやってきおったな。
海外GⅠ馬でオークス馬でもある、このワイを拝みに来たんやな?
殊勝な心掛けやね。感心感心。
「はい、というわけで、今日は宝塚記念に出走を予定している有力馬のレポートで、ミストラルプリンセス号が所属する藤枝厩舎にお邪魔しております。藤枝先生、よろしくお願いします」
なんや、宝塚記念に出走する馬の事前情報をリポートする番組やったか。
オークスの前に取材にきたネーチャンがまた来たんか。
けど、宝塚記念の有力馬の紹介と謳っているのだから、ワイも有力馬の一頭ということなんやな。
ワイは三歳牝馬にもかかわらず有力馬とは、ネーチャンもようわかっとるやんけ。
うん? 宝塚記念……?
この厩舎から宝塚記念に誰が出るの? ドサマワリ先輩?
でも、宝塚記念に出走予定の有力馬への取材として、ワイへの取材なんやから、当然ワイが宝塚記念に出走する予定ということだよな?
ドサマワリ先輩はエプソムカップを使ってから、七夕賞か函館記念を予定しているはずだしな。
ということは、やっぱワイで正解なんやろうね。
けど、そんなのワイは一言も聞いてへんよ?
「こちらこそ、よろしく」
それはそうと、取材に来るのであれば今度こそ、リンゴの差し入れの一つでも持ってきたんやろうね?
くんかくんか、すぴすぴ……
「相変わらずミストラルプリンセスは人懐っこいお馬さんですね」
「ミストラルプリンセスは人間が好きなので、構って欲しいのかよく遊びたがりますね」
ちっ、まーたリンゴを持ってきてないんかい。気の利かんネーチャンやな。
まったく、ワイの馬主さまである庭野オーナーを少しは見習え。
あと、競馬サークル内では化粧と香水は控えめにしろと前回教えたよな?
ワイの言葉が人間には通じなかったのを忘れてたわ……
でも、ワイの担当厩務員である田中さんを見習えと言いたい。彼女の普段の化粧は化粧水と乳液だけやぞ?
まあ、田中さんは田中さんでちょっとだけタバコ臭い気もするけどな!
それでも、藤枝のオッチャンや他のオッサン厩務員や調教助手に比べたら、まだマシやけどな。
……競馬業界の喫煙率は高いんよ。
これは高額な競走馬を預かって馬主の期待に応えなあかんというプレッシャーと、馬券を買ってくれるファンの期待に応えなあかんというプレッシャーが、強いストレスになっているのかも知れんね。
幸いにもミユキはまだ喫煙者にはなっていないので、健康のためにもこのまま非喫煙者でいてもらいたいものだな。
もしかしたら、ミユキはアホの子が入っているから、このままずっとプレッシャーやストレスとは無縁の騎手人生を送れるのかも知れないけど。
「あれ? 気に障ることがあったのか、奥に引っ込んじゃいましたね」
「たぶん、リンゴかニンジンをくれないから不貞腐れてしまったのでしょう」
オッチャン正解やで、ようわかっとるやんけ。
さすが調教師なだけはあるわ。
「それで早速ですけど先生、ミストラルプリンセス号が宝塚記念に出走すれば、7~8年ぶりの三歳馬による参戦になりますけど、またどうして宝塚記念に出走することを決めたのでしょうか?」
リンゴはスルーですかそうですか。というよりも、三歳馬はそんなにも長い間、宝塚記念に不出走やったんか。
それはワイも全然知らんかったわ。
「ミストラルプリンセスの馬主さん曰く、ファンあってこその競馬だそうです。そのオーナーの言葉にワシも同意します」
オークスの後は秋までレースに出走せずに、てっきり休養するものだとばかり思っていたら、なぜかしら宝塚記念に出走することになっていただなんて、どうしてこうなった? ……解せぬ。
まあ、ファンあってこその競馬と言うぐらいだから、ファンサービスなんやろうなぁ。
「それでしたら、ミストラルプリンセスの宝塚記念出走は、ファンサービスの一環としての出走ということでしょうか?」
まあ、ワイはオークスの後でも疲れを感じたりはしていないのだから、宝塚記念に出走したところで別に問題はないのではあるけど。
これはアレかな? 三歳牝馬は51kgで出走できるから、オーナーが勝つチャンスだとか思ったのかも知れないな。
「それが一番大きなウエイトを占めてはいると思いますけど、51kgで出走できるのも魅力的だからオーナーは出走にゴーサインを出したのでしょうね」
宝塚記念GⅠ ハンデ戦(笑) つまり、こういうことやね?
まあ、日本のGⅠにハンデ戦はないけど、アメリカやオーストラリアにはハンデ戦のGⅠもあるのだから、笑うのは失礼やったわ。
オーストラリアで一番伝統と格式があるメルボルンカップもハンデ戦やしね。
アメリカのGⅠなんて、どれがハンデ戦でどれが別定戦なのか迷うぐらいだしな。
「つまり、古馬のGⅠ馬を相手にしても勝算があると理解してもよろしいのでしょうか?」
リポーターのネーチャンが期待しているところ悪いんだけど、過去の宝塚記念で三歳馬は優勝はおろか連にも絡んでいないんやで。
そう、ダービー馬ですらね。
「いや~、三歳馬は過去の宝塚記念で一度も優勝したことがないのだから、勝つまでは厳しいと思いますよ」
夏を休養に充てて、心身共に成長した秋以降であれば古馬にも太刀打ちできるのだけど、オッチャンの言うとおりに、この時期はまだ古馬が圧倒的に強いんだよね。
そう、いくら負担重量で53kgや51kgと恵まれていようが、三歳馬は宝塚記念で通用しないのである。
「しかし出す限りは、いい勝負を期待してはいるのですよね?」
「そうですね。相手次第ですけど、掲示板に載るのを目指して頑張ります」
頑張るんは実際に宝塚記念を走らされるワイやで。
「藤枝調教師はオークスの時も似たようなことを仰って、それで優勝を掻っ攫って行きましたよね?」
「いやいやいや、オークスの時に比べたら、さすがに期待度は半分以下ですよ」
「さすがに古馬相手では強気には出られませんか」
宝塚では古馬に勝てないし通用しないから、そもそも三歳馬の出走数それ自体が少ないんだよね。
でもまあ、ワイの出走は決定事項なのだから、いっちょ史上初の快挙というヤツをやり遂げてみせることにしますか。
「勝てるだなんて豪語してそれで負けたりでもすれば、あなた方にホラ吹き藤枝なんて不名誉なあだ名を付けられそうで嫌ですよ」
「あはは、栗東にはそういう調教師の先生もおられますけどね」
「あれはたぶん、関西特有のノリというかサービス精神なんでしょうね」
関西人は漫才の素人でも芸人の素質を持っているからな。
もしかしたら、関西人には人を楽しませようとするサービス精神が、魂のDNAに刻み込まれているんとちゃうかな?
ほぼ間違いなくそうなんやろうなぁ。
女子高生がトッコちゃんという馬に転生する作品を読んで、おおそといっき! の続きを書くモチベが出たのは内緒♪
ストックが少ないから不定期更新になると思います。




