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15話 コスモス賞 その2


 2回 札幌競馬 1日目 10レース 晴れ 良

 2歳オープン コスモス賞 芝1800メートル




「え? ヒメもう行くの?」



 今、行かな逃げ切られてしまって、ワイでも届かんくなるんやよ。



「あ、うん、そうだね。ちょっと離れすぎちゃってる感じなのかな? おーけー、わかったよ」


『先頭のイナバチャレンジは、早くも3~4コーナーの中間地点に差し掛かります。まだ後ろからは何も来ない。イナバチャレンジの悠々一人旅です』



 札幌競馬場の芝コースは、カーブの半径が大きいから、そこそこスピードに乗ったまま走れて、コーナーを曲がるのも楽やね。

 まあ、そのぶん直線は短いのだけれども。



『おっと、ここで早くもミストラルプリンセスが動いた! 外を捲りながら二番手に上がって行きます! しかし、先頭との差はまだ20馬身近く離れています』


「ヒメ、前に届くかな?」



 そのために、早めに仕掛けて追いかけたんやで。ほな、行きまっせ!


 うりゃうりゃうりゃーっ!



『先頭は4コーナーを回って最後の直線に入ります。まだイナバチャレンジの手応えは十分に残っていそうだ! 後方からミストラルプリンセスが猛追してきた!』



 ypaaaaaaaaaa!!



『ミストラルプリンセスが凄い脚で追い込んでくる!

 三番手以下は大きく離されました! これは前走の末脚の再現だ!

 しかし、まだ5~6馬身の差があります! これは届くのか?』


「頑張れ! 頑張れ!」



 なかなか前が止まってくれんのやー!



『ミストラルプリンセスが5馬身、4馬身と前との差を詰める! イナバチャレンジは一杯か?』


「あと少し! もうちょっと!」


『イナバチャレンジが必死で粘る! ミストラルプリンセスが必死で追う! これは届くか!?』



 逆噴射して、さっさと止まらんかい!



『粘る! 追う! 二頭の追い比べ!』


「あーっ!」


『クビの上げ下げは、二頭が並んだところでゴールイン!

 内外懸命の追い比べは、僅かに内のイナバチャレンジの体勢が有利か?』



 ぶひー!


 まーけーたー!

 また、負ーけーたー!



『勝ったのはどうやら、ホッカイドウ競馬所属の3番イナバチャレンジ! 二着には惜しくもミストラルプリンセスといった体勢のようです。

 勝ち時計は、1分49秒3。ゴールまでの800メートル49秒2、600メートル36秒7の競馬でした。

 お手持ちの勝ち馬投票券は、確定までお捨てにならずに、暫くお待ちください』



 あーあ、届かなかったなぁ。

 つまり、ワイが前を捉えられるのかどうか、ヤバいと思ってから、動き出すのが遅かったということなのか?


 だけど、あの位置からだと、あれが精一杯だったような気もするんだよな。

 スタートしてからの、位置取りが悪かったということになるのか?


 でも、たぶん今日のレースは、展開のアヤだよな?

 うん、三着以下は後方に置き去りにしているのだから、ワイにミスはなかったはずである。


 たぶん、おそらく、きっと、めいびー。


 だから、今日のレースは道営馬の捨て身の大逃げに、まんまとしてやられたということなんだろうね。

 彼等の北海道シリーズに掛ける意気込みが、本気度が違うということだな。




 ※※※※※※




「美雪ご苦労さん、ヒメもよく走ってくれたなお疲れさん」



 まあ、負けてしまったけどな。



「先生、すみません。負けてしまいました」


「確かに負けはしたけど、人気よりも上の着順に来ているのだから、上出来の部類だと思うぞ」


「今日は完全に私の判断ミスです。申し訳ありません」


「そうか? それを美雪が言ったら、GⅠジョッキーの4人全員が、騎乗ミスしたことになるな」



 まあ、GⅠジョッキーとはいっても、ピンキリだとは思うよ?

 下手だけど、誰が鞍上でも勝てるような強い馬に乗って、運良くGⅠを勝ったとかありそうですやん。


 だけど、今日のレースは、ロメールとデニーロという超一流騎手も乗っていたのだから、勝った馬と鞍上の一か八かの大逃げを褒めるべきなんだろうね。



「あ、そうなってしまいますか…… じゃあ、なんでだろう?」


「最後の直線でタレてくるはずだと、道営所属の馬を甘く見たから、全員が痛い目にあったということだろうね」


「私もあの大逃げは絶対、最後にバテると思ってました」


「それに、今日は勝った馬の出来が良すぎたんだよ。この時期の2歳馬に札幌の洋芝で1分49秒前半で走られたら、後ろが追いつくのは大変だよ。むしろ、あそこから追いつけたミストラルプリンセスが凄いんだよ。だから、気にするな」



 オッチャンようわかっとるやんけ。

 ワイやから、あそこまで勝ち馬を追い詰められたんやな。



「分かりました。あと、1メートルゴール板が遠かったら、とか言っても負け惜しみでしたね。すみません」



 最後に勢いのある馬のために、ゴール板がスライドすれば、おもろいのに。

 差し追い込み系のワイなんて有利になりそうやし。



「いや、勢いでは勝っているのだから、やっぱ惜しかったよなぁ」


「あと少し僅かに届きませんでした。私の初オープン特別勝ちを逃したと思うと、悔しいです……」



 え? ミユキって、まだオープン特別を勝ったことなかったん?

 ま、まあ、まだ25勝しか挙げてないのだし、減量の恩恵がある平場戦での勝鞍がメインだったということなのか。


 それ以前に、まだオープン馬にも、ほとんど乗せてもらえてないだろうしね。



「その負けて悔しいという気持ちを失わないようにな。それを失くしたら勝負師とは名乗れなくなるぞ」


「肝に銘じておきます」


「しかし、ワシはあのロングスパートをミスだとは思わないね」


「そうでしょうか?」


「ああ、その証拠に三着とは、8馬身もの差があるのだから」



 ワイと一緒に上がって来られなかった三着以降の馬は、クラシック戦線に乗ってこれるか微妙やね。

 たぶん、無理やろうなぁ。



「そういえば、そうでしたね。追うのに夢中で、後ろとそんなにもの差が開いてたとは知りませんでした」


「だから、あそこから動いた、美雪の判断は正しかったと思うよ」



 ミユキの判断じゃなくて、ワイの判断やで。



「は、はぁ、そう言っていただけるのも、なんだか面映ゆいですね」


「それにしても、よく思い切って、あそこからロングスパートを仕掛けられたな」



 仕掛けたのは、鞍上のミユキじゃなくてワイやけどな。



「あれは私が動いたというよりも、ヒメが辛抱しきれなくなって勝手に動き出したんですよ」



 べつに辛抱たまらんくなって、動いたのとちゃいまっせ。届かなくなると思ったから動いたんやで。

 まあ、結局、届かんかったけどな!



「ヒメが自分から動いたのか? 一走しただけで、もう競馬を覚えたとは、やはりヒメは賢いな」



 オッチャンは、なんという好意的な解釈なんでしょうか。


 競馬を覚えているのであれば、今回も前回もワイは負けてなかったはずなんよ。

 たぶん、頭で理解しているのと、体感で感じ取る差なんだろうなぁ。


 まだ、ワイが完全には競馬というレースにアジャストしてないんやろうね。

 負けはしたけど、牧場や調教で走るのとは、また違うというのを理解できたことが、このレースでの収穫やったかな?


 でも、レースのコツみたいなのも掴んだことだし、次は絶対に負けへん!




 ※※※※※※




 ミストラルプリンセス 競走成績


 2回 札幌競馬 1日目 10レース 晴れ 良

 2歳オープン コスモス賞 芝1800メートル

 本賞金 1800万 720万 450万 270万 180万


 54kg 牧村美雪 5人気 2着 1.49.3 3F33.9 アタマ 0.0 354kg -2


 2戦 0勝


 本賞金(収得賞金)        0万円

 総賞金(付加賞各種手当等除く) 720万円


 累計賞金額


 本賞金(収得賞金)        0万円

 総賞金(付加賞各種手当等除く) 1040万円


また勝てませんでしたw このほうがリアルっぽくない?

今回は掲示板がなかった…

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― 新着の感想 ―
この2敗で見限る人多そうで残念。 ミユキにもヘイトしか感じないしなぁ。 読破済みで懐かしいなーって読んでも、ここで躓いてもう良いやってなりますもん。
[気になる点] 流石に騎手喋りすぎじゃない?  ここまでくると違和感しかないんだけど…。 心の声とかじゃダメなん?
[気になる点] 負けばっかでつまんねー小説やな。消せよ
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