悪役令嬢に婚約破棄を告げたらこうなった!
「レイチェル゠フォン゠ミレアマシュー、今までに男爵令嬢のミシュルにした悪逆非道な行為! そんな悪女とは今日限りだ、お前との婚約関係を解消する! 」
あーあ、言っちゃった。
俺は学園の卒業舞踏会で、学園を卒業する婚約者に言っちゃった。俺の腕に抱きついたミシュルは、満足げにレイチェルを見つめていた。
そしてレイはこっちを睨んでいる。
ごめんねレイ。
俺はこの国の第3王子、アーチー=マイン=マルコムギリュー=タスントだ。
実は別にもう一つの名前がある。
別の名前は近藤真彦と言う名前で、この世界とは別の世界からの転生者だ。
地球と言う名の惑星の日本と言う国に住んでいた。まあこの世界に惑星という観念すら無いけれどもね。
よくある異世界転生で気づくとこの世界にいた。
トラックに轢かれてから女神にあって、転生を進められたりしたという事は無いが、いつの間にか赤ん坊になっていて、この国の王子として生まれていた。
最後の記憶が電車に乗っている時だった。多分事故に巻き込まれて死んだのかも……。死んだ時の記憶が無いという事は即死だったのかも知れない。
まあどちらにしても赤ん坊からの人生のやり直しだから、結構きつかった。
第3王子と言う立場もあり、この世界に生きる者としては、それなりの贅沢な生活をしてきたが、それでも一般人だった日本での生活の方が圧倒的に贅沢だったと感じた……。
そしてレイ……レイチェルとは俺の10歳の人聖式の時に(この世界では10歳になると行う式で、日本で言うならば成人式かな?)婚姻関係を結んだ。
レイチェルは2つ年上の12歳だった。
レイチェルは公爵の娘、要は公爵令嬢と言うわけだ。
一人娘の公爵令嬢だから、第3王子の俺は入り婿として、公爵になるはずだ。
いや……だったと言おう。
こんな公の場所での婚約破棄だ。事実として確実に残り、決定は覆る事はないだろう。
貴族と言うのは名誉とプライドのみで生きているから、こんな公の場で恥をかかされ怒り狂った公爵側から俺は訴えられて、多額な慰謝料を請求される。
これで俺は王位継承権から外されることは確定だ。
なぜこんな馬鹿なことをしたのか?……そう誰もが思うだろう。
これは俺が生まれる前から決まっていた事なんだ。
なぜならば俺が前世で読んでいたライトノベルに、書かれていた内容の世界と全く同じだからだ。
その話では男爵令嬢に恋い焦がれて、婚約者であるレイチェルに婚約破棄をこの場で告げることが決まっていた。
俺の読んだライトノベルは『悪役令嬢は婚約破棄から一気に幸せに暮らすの』と言うネット小説だ。その話では第3王子から婚約破棄を告げられる悪役令嬢役だったレイチェルは、婚約破棄から人生が変わり、イケメンの男性達に言い寄られてくる。実はレイチェルが転生者と言う設定だ。前世ではある乙女ゲームをしていて、その内容がこの世界と言う話の展開だ。
その先の見える知識と、この世界に転生した時に身に付いた能力を使っていろいろと無双をしていき、イケメン達の心を掴み逆ハーレム展開になり、隣国のイケメン王子と婚約するとかなんとかだったはずだ。
……確かまだ完結していなくて、それ以上の先はわからん。
元々は素人が書いた小説だが、書籍化されてから人気で、コミック化やアニメ化されて、舞台化にもなったぐらいだ。
俺とは微妙な被りがあるが、俺にはこの世界に転生した時に身に付く能力が全くなかった。
剣の腕は平凡、魔法を使う能力も平凡な上、顔はイケメンではなく、中の中ぐらいの作りだ。
小説の中でも乙女ゲームの王子のくせにモブ顔と言う、糞みたいな話。
それこそ子供頃は大人の知識があった分、神童とは言われていたけど、大きくなった今では只の人だ。
だから地球の知識を使って無双でもしようと思ったのだが……それがこの世界では全く意味が無かった。
オセロをつくれば、それよりも楽しいボードゲームがあったり、ピーラーを作ろうとしても似たような物がすでにあったり……まあ俺の知っている知識は、この世界にほとんど存在してあった。
平凡な俺は主人公でもなんでもない。だからこの世界でどうしろというんだ?
まあ……この事はどうでもいい。
取りあえずはこの世界に転生したからには、俺の出来る選択は二つしかない!
レイチェルと婚約破棄するか、しないか!
普通に考えるなら婚約破棄をせずに、レイチェルの入り婿になって、王位継承権を持ったままの方が利口だし、それが当然の考えだ。
今のレイチェルは美人な上性格もいい。
俺が10歳の人聖式の時に転んで頭をぶつけて、悪役令嬢に日本からの人格が転生して性格が変わった。
それまでのレイチェルの人格は、糞みたいな我儘な令嬢だった。これと結婚して入り婿としての生活は拷問だな、とは思ってはいた。
だが人格が変わると、少し男っぽいサバサバした性格だったが、話は合うし美人でタイプだ。
流石に俺が、日本からの転生者という事はバラしてはいないが、このまま結婚して一緒に暮らす未来が見えていた。
それだから婚約破棄をしない選択肢を選ぶはずだったのに……俺はここで婚約破棄を選んだ。
……いや選ばされた。ミシュルに言わされたのだ。
公爵令嬢がわざわざ身分が下である、男爵令嬢に意地悪なんてするとは思っていないし、実際にはしていない。
実際に読んだライトノベルの『悪役令嬢は婚約破棄から一気に幸せに暮らすの』でも、レイチェルは意地悪な事を一切していなかった。
わかっている、それを言ってきたのはミシュルだ。
ミシュルは美人だが俺の好みとは全く違っていた。
だから別に惚れているわけでもなかった。
嘘を言ってレイチェルを陥れようとしていたことは、ライトノベルの内容からもわかっていた。
気づいたからには、この運命避けるべきだった。婚約破棄をするべきではなかったはずだ。
だがしかし、避けれなかったのだ。
運命という流れを変えられないみたいなのか、話の修正力が付いているようだった。
かなりミシュルに用心して近づかなかったのに、いつの間にかミシュルが俺の近くいて、頭がボーとしてまともに考えられなくなってきた。
ミシュルが耳元で囁く。『レイチェル様と婚約破棄をして私と結婚したらアーチー様がこれから先ずっと幸せに生活できる』と言っていた。
……まあそれは絶対にないんだろうけどなと、頭ではわかっているのにいつの間にか、ミシュルの言っていることを全て信じるようになっていた。
確か『悪役令嬢は婚約破棄から一気に幸せに暮らすの』ではミシュルは破滅魔女で、精神を操る魔法を使って男爵令嬢になり替わり、その上俺の心を操っている事になっていた。
ミシュルは俺と結婚を目的としていた。俺は第3王子だから普通ならばレイチェルとの婚約破棄をしても、身分が公爵か侯爵、最低でも伯爵にはなるはずだ。
だから新たに貴族としての身分を作ってもらい、その俺の妻になるつもりだったのだろう。
そして俺の妻になって、この国を裏から操って混乱と厄災をもたらす事が計画だったと書かれていた。
レイチェルとの婚約破棄後にいろいろとすったもんだあった後に、ミシュルに操られた俺が城内を守っている魔法の宝玉を破壊してしまう。これは城内の魔法発動を抑制するかなり貴重な宝玉だ。ミシュルは魔法で国を操るのにこれが邪魔だったから、俺に命じて破壊させるのだ。
まあいろいろと騒動を起こした俺に対して、俺の父親で王であるマイン=ウィリアム=マルコムギリュー=タスントが、俺にこう言い放つ。
『こんな馬鹿なことをする王子は王族として国の政治に関わっては駄目だ!王位継承権をはく奪の後、平民落ちとする』
そんなこんなで利用価値の無くなった俺は、ミシュルに完全に見捨てられ、俺ことアーチーは、王子から平民に落ちぶれていく。
平民になり、底辺の仕事と言われる冒険者となって生活する。
ミシュルは俺を見捨てた後は宝玉のない城内で、権力を持ついろいろな貴族に取り入り、国を操ろうとする。
だがしかし、レイチェルがミシュルの計画に気がついて、騎士団長の息子や宰相の息子、そして隣の国の王子達と手を組んでミシュルを撃退するというのが、話の大筋だ。
……のちの話では、俺が冒険者になってから、魔物に襲われそうになるレイチェルを助ける話があった。
まあ実際に魔物を倒すのは、騎士団長の息子のレナウンだったはずだ。
俺は平凡な力しか持っていないから、何とかギリギリのせめぎ合いで魔物と戦いで瀕死の重傷状態になっても、レイチェルをただ守っているだけという情けない話だ。
それで死にかけている俺の事を、それで許してくれるとかなんとかだった。
まあそれからはアーチーとしては、それ以降の話には出てくることが無くなった……と言う悲しいぐらいの哀れキャラなんだよなあ。
ミシュルの精伸を操る暗黒魔法は非常に強力だ。魔法にかかってしまえば、心の中でわかっていても逆らえない。
今ここで意識があるのは、転生者の近藤真彦としての意識だろう。
アーチーとしてはすでに身体の自由が無く、心と身体が全く別の行動をしている。まるで椅子に縛られて、映画を延々と見させられているような感覚だ。
まあ……こうなったら運命を受け入れるしかない。レイチェルがミシュルを倒すまでは、俺の身体の自由が利かないだろうけど、仕方がない。
実は……身分を剝奪されて平民に追放されることはわかっていたから、懇意にしている貴族に根回しをして、話の先の見える事を利用して、儲かる財テクをしたり、わずかなら日本での知識を使っていろいろと発明をして、儲かることをしているのでそれなりの預貯金はある。
このまま平民になって食い詰め者と言われる、その日暮らしする冒険者ならなくとも、そこそこの生活ぐらいの貯金はあるはずだ。
レイには悪いが、後は任せる。
ごめんな、こんな情けない婚約者でな。
レイはこのあとは幸せになるからな、俺の分まで幸せになれよ!
俺はレイの事が好きだったから、こうなって別れることは悲しいけども……。
レイが幸せになればいいよ。
「嫌でございます。アーチー様は私の旦那様になるべく人でございます」
へえ?
「大体ミシュル! お前みたいなスベタにアーチー様を渡すわけないだろうが! 」
なに言ってんのレイ?
いつもと口調が違うよ?
なんか口調が荒いよ!
はっきり言って怖いよ!
「ミシュル=ファル=ミレミアム……いやルクリア、別名破滅の魔女! お前の企みは全てわかっている。アーチー殿下を、魔法をかけて精神を操った罪は重し! よって断罪と処す」
あれあれ?
レナウン?
なんでこの卒業パーティーに出ていないレナウンがここにいて、剣を抜いているの?
……てか、なんでお前が破滅の魔女の事を知っている?
「チッ」
「うわっ」
俺はミシュルに突き飛ばされて、倒れそうになったところを、レイチェルに抱きしめられる。
「アーチー大丈夫?」
あれあれ?
どうなっているの?
俺はレイチェルに抱きしめられて、まるでお姫様みたいな恰好になっている。
「レナウン頼むわ! 」
レイチェルが叫び、レナウンが剣を振るうと、ミシュルの肩口を斬って、そこから血が飛び散る。
「くそっ」
ミシュルが懐から何かを取り出して、それを地面にたたきつけると、真っ黒の闇があふれ出て辺りを包み、真っ暗な闇で何も見えない。
「光よ闇を切り裂け」
闇が辺りを包んだが、レイチェルの呪文と共に闇が晴れていく。
「逃げられたか」
その場に血が残っていたが、ミシュルの姿はなかった。
「アーチー、今から魔法を解くわね! 」
レイチェルは動けない俺に優しく語りかける。そして俺をお姫様抱っこしたまま、ミシュルの残った血の場所まで移動して、その血を手に取り俺の額に血を塗ると、
「光よ、大いなる光よ、この者の呪いを解き放て」
ミシュルの血を媒介として、レイチェルの光魔法が発動すると、俺の全身を光が包み、額の血の部分から黒い虫のような物が這い出してきた。
それをレイチェルが手で掴むと、そのまま握りしめて潰した。
「大丈夫? 喋れるかしら? 」
「レイ……これはいったいどうなっている? 」
あまりもの展開で、脳の処理がついていかない。
なぜ、婚約破棄を告げた俺が、レイチェルに抱きしめられているの?
それも俺が、悪漢から助けられた女性みたいにお姫様抱っこをされたままだし……。
レイチェルがチート能力で、肉体強化と光属性の魔法を使えることは知ってはいたけど、実際に見ると驚愕でしかない。
ただミシュルにかけられた暗黒魔法解けたようで、会話が思い通りにできる。
「あーミシュル……破滅の魔女の事は知っていて、婚約破棄告げられた時点で行動を起こそうと思っていたの、アーチーよく頑張ったわね」
俺は頭をナデナデしてくる。
2歳年上のレイチェルは、俺を男と言うよりも、弟だと思っている節はある。
「アーチー殿下、レイチェル様すみません、取り逃がしてしまいました」
レナウンが俺達の前で膝ま付き、謝ってくる。
「いや、仕方がない……と言うかレナウンも知っていたのか?」
大柄で筋肉質のゴリラみたいな身体で、見た目がかなり厳つい感じだが、顔はイケメンのレナウンはニヤリと笑う。
「もちろんでございます。レイチェル様に言われて全て把握しておりました」
「……なんで知っているなら、もっと前に助けてくれなかった? 」
「……ワハハハハ」
「……ウフフフフ」
俺がそう言うと、一瞬レナウンとレイチェルが顔を見合わせてから、笑い始めた。
「それはこの舞台が必要だったからでございますよ」
俺達を囲む人混みの中から、細身だが高身長のイケメンが出てくる。
こいつは宰相の息子のアベルだ。
「必要って……」
「説明が必要ですか? 昔は神童と言われていたアーチー殿下とあろうお方が? 」
「いや……」
言っている意味はわかる。
この場所で俺が魔法で操られて、婚約破棄と言う暴挙をしなければ、ミシュルの犯行を確定できなかった。
そして、焦って逃げ出さなければ、俺のかかっていた暗黒魔法を解除できることはなかったはずだ。
『悪役令嬢は婚約破棄から一気に幸せに暮らすの』でもミシュルが傷ついてやっと魔法の解除が出来たという設定だった。
光魔法のチート能力を持っているレイチェルとはいえ、呪いを解くには相手の血を必要としたからだ。
「だからと言ってなあ……」
「無事だったからいいじゃないの」
「いてっ」
レイチェルが俺の頭にデコピンをする。
「アベル、それでどうなった」
レナウンがアベルに向かって言う。
「もちろん計画通りに、ミシュルの逃げそうな潜伏先には騎士団を配置してもらっているよ、後は隣国に逃げたらノスチラス殿下が何とかしてくれるでしょう」
ノスチラス王子は隣国の第一王子だ。
話の中ではレイチェルの婚約者になる人物だ。
「そこまで話を進めているのか? 」
「あら、安心してノスチラス様とは別に恋仲にはなりませんからね」
俺の心を見抜いたように、レイチェルが俺の鼻を摘まむ。
レイチェルはこの物語を知っていた。
それも乙女ゲームの方ではなく『悪役令嬢は婚約破棄から一気に幸せに暮らすの』のライトノベルの方を知っていた。
そしてレナウン、アベル、ノスチラス王子にレイチェルが転生者である事を説明をして、そして皆が納得してこの計画に乗ってくれた。
まあ話の筋で順当に行けば、レイチェルは隣国のノスチラス王子と結婚して幸せになるはずだったのだが、なにを思っているのかこの俺に惚れていた。
なぜか平凡でモブ顔の俺と結婚する方を選んだのだ。
レイチェル曰く『私が結婚してあげないとアーチーが平民になって大怪我するでしょう? それと実家の跡を継がないと良くないからね』と言ってきたのだ。
ちなみにミシュルは隣国まで逃げたが、ノスチラス王子の手の者に処刑された。
つまりは、この国に平和が戻ったという事だ。
そして数年後……。
俺は学園を卒業後は大臣になり、レイと結婚して公爵の婿養子となった。
「アーチー、ピザまだー」
「あーもうすぐ出来る、大人しく待っていろ」
俺は前世では料理人だったのだ。
だからレイに頼まれて仕事がない休日は、こうして地球の料理を再現して作っているというわけだ。
元王子の公爵なのに、なぜか料理を作っているけどな。
そして屋敷はメイドを雇えばいいのに雇わず、執事ばかりだ。
それはレイ曰く『浮気防止のため女の子は雇いません』と言われる始末。
ミシュルに騙された俺としたら、なんにも言えなくて、ただレイの言う事を聞くだけになっている。
……俺は完全にレイの尻に敷かれている。
「うん、アーチーの作るピザが一番美味しい」
レイチェルがピザを咥える。
美味しそうに食べる姿は可愛いと思う。
「うんうんアーチー様は料理が上手っす」
レナウンが俺の作ったピザを両手で掴みながら食べている。
ヒグマみたい身体をした大柄な男が、ピザをリスみたいに両手で持って食べる姿はかなり滑稽だと思う。
レナウンの勤めている騎士団はいろいろと忙しいはずなのに、なぜか非番の時には必ず我が屋敷にやって来ては、こうして飯を喰らっている。
なぜ……新婚夫婦の家に、独身の男が入り浸る?
「アーチー大臣の料理は絶品ですから、このレシピを世に広めたらどうですか? 儲かりますよ」
アベルはピザをナイフとフォークを使って、優雅に切り分けて食べている。細身のイケメンだから絵になっていて、貴族令嬢たちが見たら騒ぎ立てるだろう。
アベルは俺の秘書という体で、休みの日どころか毎日のように仕事終わりにはこの屋敷に来てはそのまま泊っていく。下手するとこの屋敷に住んでいると言っても過言ではない。
なぜ……新婚夫婦の家に、独身の男が住んでいる?
「いやよ、私達だけでこの料理を楽しみたいの、広めたら独占している意味がなくなるじゃない」
「そうっす」
「そう言えばそうですね」
「ウフフフフ」
「ワハハハハ」
「クックック」
まるで悪巧みをしているかのような、笑い声を上げる。
「そうそう今度またお忍びで、ノスチラス様が来るそうよ」
レイチェルがまるで何事も無いように言ってくる。
「いやいや王子として、アイツも忙しいだろうが!」
ノスチラス王子も毎週とはまでは言わないが、最近は月一のぐらいの間隔でこの屋敷に遊びに来ては、一週間ほどは泊っていく。
なぜ……新婚夫婦の家に、独身の王子が来て泊っていく?
隣国の第一王子のなのにそんなに頻繫に来て大丈夫なのか?と思ってノスチラス王子に聞いたことがあるのだが『大丈夫、有能な部下がいるからな』と言われた。
その部下も可哀想に……。
「俺達新婚なんだけど、こうも他の男が家に来られても困るんだけど」
一度意を決してレイチェルに不満を言った。
「うーん……気にしたら駄目だよ」
レイチェルは微笑んでそう言った。
駄目だ! こいつらは仲がいいから俺が文句言ったところで、なにもならない。
本来の結末よりはいい結末だったとは思う。
……のだが……。
俺は本当にいいのかこれで?
これが本当にハッピーエンドなのか?
もしかしたら、婚約破棄が上手くいったほうが良かったかも知れないと、ふと思う時がある。
主人公はこれで幸福なのか?それとも不幸なのか?
気に入ったらブックマークと評価をお願いします。
感想もお願いします!誤字脱字報告もお願いします。
人気が高ければ長編を書きたいと思います。