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The missing storks  作者: まきなる
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ガム

 軽快なヒップホップと、濁った色のカクテル。安っぽい中身と、似つかわしくない服装。僕がそろえたこれら全ては、何かのため。きっとそう。



 23時の鐘は鳴らない。僕の中ではもう終わっているのに、何で鳴ってくれないんだろう。進む人、止まる人、僕は後者だ。どうして終わらないのだろう。誰かぼくを寝させてくれ。頼むよ。



 あーあ、夜更かしだ。23時を回ったらそれはもう夜更かしで、外は別世界に見えていく。つまらないピアノの旋律をイヤホンから流す。それは無機質な僕を色づけて、いや、元々色なんてないか。



 銀木犀の香りが鼻腔をくすぐり、黒の景色の中に浮かんで僕を呼んでいる。そばにある自販機は今ここにいる証明を必死で示しているが、ただ目に悪いだけだ。120円を入れ、一つの缶ジュースを買った。” コトン”と、冷たいはずの代物は、自販機の故障で温くなっていた。いやしかし、これは担当の人が間違えたかな?どっちでもいいか。



 もう会うことはないでしょう。そのジュースを飲んでいる時、懐かしい言葉が頭の中をよぎっていた。あぁ、これはあの人が飲んでいたジュースか。特に美味しくもないけど、いつからか好きなっていたかな。本当に罪な人だ。男なんて、その程度でしかない生き物なのにさ。



 吐く息が白い。また季節が巡って、また一つ年を取る。誕生日なんて来なければ、僕も少しは気が楽になるだろう。一人が怖い。この先が怖い。格好いい大人になれなかった僕たちに、何かつながりと呼べるものはきっと無い。つながりを探すぐらいなら、行きつけのラーメン屋で麺を啜っているほうがよっぽど満たされるだろう。でもこのやりきれない気持ちは、誰にも分らない。そう信じたい。



 銀色の腕時計はもうすぐ0時を示していた。あと3秒、2秒、1秒。日付が変わる。また一つ年を取る。眠気が来ない。あの頃みたいになぜか眠気が来ない。ふっ、くだらない。もう少し歩いてみてもいいか。




 信念なんてなかった。全てはただ安っぽい自分を埋めるためだけの道具だった。残ったのは味がしないガム。僕はそんな自分だと言えば、聞こえはいいかな。



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