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The missing storks  作者: まきなる
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“ジーッジーッ”



 うとうとしていた私を起こしたのは、そばにあったパソコンの音だ。つい最近、文字の読めないレッドスクリーンが表示され、USBが認証されず、ネットにもつながらなくなった。この音もいつから、どこから鳴りだしたのかわからず、日に日にその音は大きくなってくる。



 頑張らなきゃ。ペンを取って再び自分のキャンパスに向き合う。音のない空間に“かりかり”、“かりかり”と部屋に響きもしない音を作る。耳鳴りがする。空間に何も音が無くなると、昔からどことなくノイズのような雑音が頭の中に響く。全くダメ、集中できていないんだ。



 キッチンでお湯を沸かし、この時間には禁忌にも等しいココアを飲む。もちろん砂糖をたくさん入れて、その背徳感と後悔をかみしめながら飲むのだ。でも、飲んですぐに再開はしない。自分の左腕を手枕にしてだらだらと作業を行う。どうにもやる気になれない。



 普段、こんな風にだらだらと過ごすことは無い。いつも何かに挑み続けて、活力に満ち溢れていた。どんなに疲れていても、その火にくべる薪は必ずあった。けれど、今はその疲れ方の異質さに、ただ包まれている。気がついたら丸一日ご飯は食べず、睡眠もほとんどとっていなかったのだ。挙句の果てに、ただぼーっと時間をつぶしていた。



 辛い時に聞く音楽も、楽しい時に読む漫画も、何でもないときに見る動画も、何も心に響いてこない。何も音がしない。ただ壊れかけのパソコンを眺めていただけだった。



 パソコンの画面が急に暗転し、どのボタンを押しても反応しなくなった。ペンを手に取り、作業を再開しようとしたがインクも底をつきた。ペンを握る力もなく、瞼は次第に開く力を失っていく。邪魔するものがない最高の状態で、意識も遠くなっていく。



“おやすみなさい”



 音がしないはずの部屋で、そう聞こえた気がした。


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