塗り絵と黒
今日も何処かで物語が生まれる。人が作り上げた何かがそこで芽生える。何かを作り出す人々が、次から次へと理由もなく何かを生み出していた。今も昔も何も変わらず、何かを定義して人々は進んだ。つまらないことも、面白いことも、そんなドラマも生まれ落ちてその積み重なりの先に、今私たちは立っている。
丘から伸びる階段を駆け下り、道路に飛び出して走り続けてきた。真っすぐな道を、自分で作って振り返らないように全力で駆け抜けるんだ。時代遅れのコード付きイヤホンが、走るたびに、飛び跳ねていく度に、私の首に巻き付くように這い回って欲しい。
ふざけた後悔共よ、私はまだ負けてないぞ。足を止めたければ、諦めやがれ。邪魔なものは全てこのチェーンソーでぶった切って、気に入らないものは全てペンキで塗りつぶしてやる。どこまでも真っ青に、その中で白色の服を着た私が目立ってさ、どこまでも浮かぶ雲のように生きたい。
連れ立ってやらない。どうせ何もかも贋作だ。ここにいることも、生きていることも、どうせ何かの贋作だ。だったらブロック塀の細い道を走り抜けて、知らない場所へ行くぜ。
後ろからなるサイレンが心地いい。止めてみたければ、追いついてみな。私がここで何をしようと君たちは止めれない。眠ったままのその頭じゃ何も変わらない。行け。行けよ。行きたいんだと言え!
水の中に落ちて笑いが止まらない。周りはすでに囲まれて、何もかも終わった?いいや、まだだね。諦めが悪いのは知っているかい?すべて吹き飛ばして、これもなかったことにしていいだろう?
左手に持ったチェーンソーの振動が私を揺らす。もうこれすらいらない。手を放して、水の中に落とす。歩く私の前にはまだ、誰かの盗作がこちらに拳銃を向けている。ゆっくりこちらに近づいてくるのがもどかしい。
大きく手を広げ、抱きしめてやった。全てを受け入れるように。相手の熱がこちらにも伝わって燃え始める。熱い、これが熱いなのか。私も降る雨を飲み込もう。どうせつまらないことばかり。
綺麗ごとで、私は何かを綺麗にできない。汚すだけで精いっぱいだ。