ego
あなたの作品が好きでたまらない。いつだって僕の心をえぐってくるあなたの作品が、いつだって僕の心の在り方をさらけ出すあなたの言葉が、僕を狂わせてきた。
繰り返すたびにその傷跡が広がっていくのもわかっている。それでも、止めることができない。いつからか、どの作品にも求めるナイフが、少しずつ鋭利になっていくのがわかる。自分で心を傷つける作品を探している。
嫌いだ、嫌いだ嫌いなんだ。作品に心躍らせられるのも、純粋に楽しめくなった自分がいることも、耐えることなんて出来ない。
崩壊してしまいそうなほど好きなのに、へばりつく嫉妬心、だけど蓋から涙がこぼれ出てくる、どうしようもないこの感情に、誰か名前を付けてくれ。
否定してやる。気持ちがもう、あなたの爆弾に負けている気がする。けれど、この道に光なんてないなら、とことん否定してやる。どうなったって知るもんか。
でも、僕のペン先は固まっていた。書けない。あなたの作品を否定するようなことなんてできなかった。所詮、紛い物の僕には偽物ができる模倣さえも、天才ができる盗み、そして僕が持つ全てが、目の前で零れ落ちて往った。
掻き集めて、欠いたものを探して、必死に書こうとしても、一文字も並ばない。時間だけが浪費されていって、自分自身でさえ無駄としか思えない。
無意味、無駄、やめちまえ、お前に才能なんてない、何度やれば気が済むの?他にしなければならないことがあるでしょう、どうせできない、お前なんか、そう、僕なんか。
頭を飛び回る言葉は望むように鋭さを増していた。僕の持つ筆は、あの感情から何かを書くことはもうできなくなっていた。僕は筆をとる理由をとうに失っていた。
全て諦めたこと、泣いたこと、その自分がいたこと。そんな単純なことを理解した。いつの間にかインクを待つ紙が、日ごとに黒くなっていった。自分のことを書いていた。日記ではない、自分が感情を揺さぶられたこと、それを日付とともに書いた。ただ、それだけ。
だったら自分のために書く。他人を喜ばせなくても、僕が欠けるために書く。信念が揺らいだっていい、認められなくたっていい、だから、この僕を否定する何かを生み出したい。
硝子の心で傷つく言葉を、また一つ生み出していく。
ここまで読んでくださった方々、本当にありがとうございます。まさか、この短編群を読み切って下さる方々がここまでいるとは思ってもいませんでした。執筆中もPV、ユニーク数の増加は自分の励みになりました。
稚拙ながら人の在り方を表現し、できる限り人の泥臭さ、美しさ、醜さを書いてみたつもりです。この作品を通して世の中にはこういう人もいることを知って頂ければ、想像して頂ければ自分の本懐です。
ここまで書くのに様々な感情が渦巻いていましたが、常に楽しく書くことができました。ただ、この作品はこの"ego"にて一区切りとさせていただきます。またいつか、別の作品を書いた後に、この作品の更新も再開したいと考えています。
8/26追記
新作書きつつ、こちらも更新します。新作公開はもうしばらく必要ですが、よろしくお願いしいたします。
またこの作品で会えることを祈っています。ありがとう―