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道化師の苦悩

「アンタ、なんでいるの」

「おたくのよこしたメイド、ほんとに弁当に土入れやがったんだけど」

「………え?」


 翌朝、学校に行く前に俺は天河グループに来ていた。用件はそう……クレームだ。


「ああ、どうせ神崎怒らせたんでしょ?あの子結構根に持つタイプよ」

「俺別に失礼なことは言ってないはずなんだけど」


 そう、()()()()いない。色気はそんなにねぇだろって考えただけだ。まあ悪かったかもだけど。…よくよく考えたら色気とか以前に女性に背中流してもらうっていう話が前提にあったんだよな……あれ、否定しないほうが良かった?


 本人がいなければそんなことを思う余裕も出てくるもの。


 あと絵里奈って年上なのにあの子呼びなんだ…


「あの子って結構鋭いのよ、悪いこと考えるだけでバレると思うわよ」

「すげえな。いやでもなんでそれだけで何で俺の昼飯は土になっちゃうんだよ」

「だから根に持つから…」

「それだけで取り締まられるの俺?」


 とんだ思想警察である。やっぱ純粋に監視役としてきたんだなぁ、これからの生活はなんだかんだちょっと楽しみにしてたというのに。


「まあまあ、でもあの子がそこまでするなんて珍しいわよ。きっと愛情表現よ」

「んな訳。あと鈴音に愛を語られたくないわ」

「私が語って何が悪いのよ」

「お前は手段を選ばないだろどうせ」


 鈴音は不服そうな顔をしているが、ほんとにツッコミで過労死するんじゃないだろうか…


「あら?それじゃあ朝ご飯は食べたの?」

「絵里奈は絶賛ストライキしてるよ。俺が家出た時もまだ寝てた」


 ダメイドってやつ。というか出勤2日目ですよ…クビだよこんなの。


「あらそう…流石に私から言っておこうかしらね」


 そう言い携帯を出す鈴音。…あ。


「そういえば、誠也と何かL○NEで話したりしたか?」

「ええ、手短な挨拶だけだけど」

「いや、大きな進歩じゃないか。次は対面だな」

「うぅ…多分まだ無理かも…返信にも3時間かかったし…」

「長すぎだろ」




 ――― ピロリーン♪


 あ、絵里奈からL○NEだ。やっと起きたか。


『賢二様、本社にいるようですが一体何をされているのですか?学校に行かなくていいんですか?』


 ………HRまで、あと5分。2人は顔を見合わせ、こう言った。


「鈴音!行くぞ!」

「指図しないでバカ!」

「うるせぇ!ほら走るぞ!」

「ちょっと手を引っ張らないでよー!」



 精一杯走るも結局、2人は遅刻をかまし、こっぴどく怒られましたとさ。





 ――





「入学2日目から遅刻って…」

「へへ、歴史に刻まれたな!」

「白鷺くん、ダメだよ反省しなきゃ…」


 俺は誠也と高橋さんとでお昼を食べていた。鈴音は相変わらず誠也とは話せず他の人たちと机を囲んでいる。俺はもちろん弁当は無いので購買で買ってパンを買ってきた。そして2人は弁当、なのだが…


「高橋さんが誠也の分も作ってんの?マジ?」

「そうだよ。まあ1人分作るのと2人分作るのはそんなに変わらないからね」

「急に作ってあげるよって昨日言われてね、あはは」

「ちょっと!恥ずかしいから言わないでよ〜」


 バカップルじゃねーか!胃袋から掴まれてんぞ。鈴音は料理できるのかな。


「いいな〜、高橋さん俺にも作ってくれよ〜」

「え、う、うーん。考えとくよー…」


 ごめんって。別に本気で言ったわけじゃないからそんな引きつった顔をしないでくれ。


 非常に場違いに感じているが、このクラスの友達はまだ中学から友達だった誠也と高橋さんしかいない。


「いやー、ほんと仲良いんだな。全く羨ましいぜ」

「いや、ありがたい限りだよ。こんな俺なんかに」


 謙遜してんじゃねぇよぶっ○すぞ…


 すると、高橋さんがこちらにやってきて、急に顔を近づけてきた。え、何ですか良い匂い。


「ね?わかるでしょ?良い人なんだけど、困った人なの」


 そう耳打ちして高橋さんはニコッと笑う。俺は何も言うことが出来ず驚きの表情で高橋さんを見つめていた。誠也はただただキョトンとしている。


 何となく、俺の思う誠也像と実際は違う気がした。イケメンで気遣いが出来てそれでいてモテて、なんならプレイボーイ味すら感じていたのに。中学の時はそんなこと全く思わなかったのに、何故だろう。でも、高橋さんは何か大切なパズルのピースのように思えた。


 ここはもっと踏み込むべきだと俺の直感が囁く。


「え、なになに。もしかして2人、付き合ってんの?」


 一瞬の沈黙。笑みを崩さない高橋さんに対して、誠也から笑顔は消えた。


「そんなわけないさ。それに、そんな資格もない」

「……もう、大丈夫なのに」


 そう言って高橋さんは誠也の腕をコツンと叩いた。


 何かがあったに違いない。でも、それを聞く勇気はなかった。









 皆お昼も食べ終わり、席を立つ俺。


 気を取り直し、俺はとある作戦を実行しようとしていた。


「誠也、トイレ行こうぜー!」

「高校生にもなって連れションかよ…」


 と言いつつもついてきてくれる優しい誠也。バカめ、かかったな。


 2人が廊下に出ると……


「きゃあ!」

「うわっ、ごめんね。大丈夫?…あ、君は…天河さん?」


 そう、声の主は鈴音。そして転んだ鈴音に手を差し伸べる誠也。性格はアレでも美男美女。なんとも絵になる光景である。


 実は登校時に鈴音には時間が来たらドア付近に隠れておくように言っていた。結果は大成功だ。


「あれ!?天河さんじゃん!ちょっと大丈夫かよ!おい怪我してないか!?大変だ!誠也!保健室に連れてってやれ!!!」


 自分でもうんざりする大根っぷりだがこいつは優しさの塊のような男(バカ正直)だ。問題はない。


「え……そんなにか?大丈夫か?」

「あ…」

「おいおい!顔真っ赤じゃねぇか!髪の毛とほぼ同色だぞ!誠也!連れてってやれ!俺は我慢できねぇからトイレに行く!」


 そう言い俺は駆け出した。登校時以来今日2回目の全力ダッシュだ。廊下の途中で誰か女の先生がいたような気もするが気のせいだろう。鈴音……頑張れよ…








 しかし、その後俺が教室に帰ることはなく、何故か進路指導室に連行され…


「遅刻はするわ異常な速さで廊下は走るわ…何やってるんだ?」


 見られたのは担任の東条凛花先生だった。足を組んで座り、マジギレ寸前であることがわかる微笑を向けてくる。威圧感半端ないって…うわどうしよう何て言えば…


「恋の応援です…」


「………は?」


 うわあああ口が勝手に動いちゃってた!!!そりゃ「は?」ですよねそうですよね!自分でも意味わかんないもん何それ!


「いやあの…俺みたいなどうしようもない人間もいるからみんな大丈夫だよ?下には下がいるんだよ?みたいな…」

「ふざけるのはやめなさい」

「はい」


 駄目だ…もう俺の学校生活は終わったかもしれん。思い返せばちょっと前までは結構新生活に胸を膨らませていたんだが、何でこんな目に俺が合わなきゃいけないんだろう。まあ、自業自得なとこもあるんですけどね!




「はぁ…君は大変なことに巻き込まれてるんだってね。天河鈴音のことだろう?」

「え?なんで……」




 そう言う東条先生の目はとても優しかった。というより、哀れみに満ちていた。

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