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お弁当作戦〜後編〜

 天気は良好。人払いも完了。あとは鈴音次第だ。


 俺は校舎ともう一つの校舎の連絡通路から様子を見ていた。ここなら中庭からは気付かれずに中庭の様子を確認することができる。


 鈴音は既にスタンバイしている。試しに遠隔で声をかけてみるか。


(聞こえるか?)

「ひゃっ!」


 ビクッと跳ねた。聞こえているな。


(バレないようにしてくれよ、頼むから)

「あんたの声が耳元で聞こえるの、凄いむず痒いのよ」

(じゃあ何も話さないぞ)

「いやーちょっと自信ないかも…」


 少し心配だが、頑張るのは鈴音自身だ。


 すると、誠也がやってきた。中庭にぽつんと1人しかいないことを不思議に思っているのか、鈴音を見てもなおキョロキョロしている。


 鈴音は深呼吸し、口を開いた。


 …開いただけだった。


(来てくれてありがとう、だ)


「ふふ、来てくれたのね」


 なんでちょっと変えるんだよ。


「う、うん。どうしたの?天河さん」


 誠也が名字で呼んできた。もしかしたら誠也も緊張しているのかもしれないな。


「あら?名前で呼んでくれないのかしら?百合のことは名前で呼んでいるのに」


 それは指示しなくても言うのか。よほど名前で呼んで欲しいんだな。


「えっ、あー、そうだよね。…コホン。どうしたの?鈴音」


(おーい。話さないと。弁当渡すんだろー)

(どうしよう。凄い手が震えるんだけど。誠也くんをまともに見れない)

(じゃあ目を瞑ってでもいいから。早く話せ!私、お弁当を作ってみたのって)


 恐ろしく不自然な間が空いたが大丈夫だろうか。


「……あのね、私、お弁当を作ってみたの」


 俺はこの時、鈴音が声が小さくて全然聞こえていなかった。弁当について早く話させないとなのに。


(強引にでいいから弁当を渡すんだ)


「どうして目を瞑ってるんだ?」

「……私、お弁当を作ってみたの」

「あれ?聞こえなかったのか…?ええと…そうなんだ」


 ここで全然噛み合っていなかったことに関しては後で怒られた。まあそんなことは今はいいのだ。


(食べてほしい)


「食べてほしい…いえ、食べる権利をあげるわ」

「…え?俺に?というか何で言い換えたんだよ」


 なんで上から言いたいんだよ、と俺も思うが、きっと照れ隠しなんだろう。


「ほら!受け取りなさい!」

「あ、ありがとう…」


 弁当箱の入った袋を手渡すと、鈴音は足早にその場を後にした。


「なんだったんだろ…」


 誠也は弁当箱を見つめながらそう呟いた。


「お疲れ。ほら、教室戻って」

「はぁー、大丈夫だったかしら私」

「ばっちり不審者だったぞ」

「ダメじゃないそれじゃ」

「いや、まあ色々言いたいことはあるが多分大丈夫だから。戻ろう」





 ―――――





「牛肉、蟹、伊勢海老…」

「高そう…」


 小さめの弁当箱におせちと見紛う豪華さがミスマッチな鈴音の弁当(鈴音監修)は無事誠也に渡すことができた。


 他のクラスメイトもわらわらと誠也の周りに群がっている。


「雨宮、それは天河さんから貰ったんだよな?」


 1人の男子生徒が誠也に話しかけた。


「そ、そうだよ」

「へー、そりゃいいな。さっすが〜……チッ」


 すると、すぐに別の女子生徒が、


「ねえねえ、いつから?」


 と声をかける。


「い、いつから?いつからも何も、今日だけど…」

「えー!今日!?」


 女子生徒はいつから付き合ってるのという意味で聞いたのだろうが、誠也は勘違いして弁当のことだと思っている。女子たちはキャッキャと騒ぎ始めた。


「ねえ、賢二くん」

「何?」


 そんな中抜け出してきた百合が俺に話しかけてきた。


「私との違いってなんですかね…」

「いやそんな落ち込まなくても。百合と誠也は夫婦感が強すぎるだけだって」

「夫婦感…聞こえはいいようだけど、もう落ち着いちゃってるってことでしょ」


 幼馴染ということを抜きにしても、あまりにも最初から一緒にいるくせに付き合ってはいない。このなあなあな関係はきっと一緒にいると安心できるという信頼感で出来ているのだろう。


 しかしそこに好意はちゃんと存在している。でもそれによって関係が壊れるのが怖い。そう言った意味では付き合えてはいない、という言葉の方が正しいのかもしれない。


「俺たちは鈴音が誠也に対してロクに喋れないところを知っているけど、他の人たちは知らないどころか鈴音のことを尊敬してるようなとこあるしな…クラスの新たなトピックとして見られているのかもしれない」

「鈴音ちゃん可愛いもんなー。みんなから好かれてるし凄いなあ」

「何でだろうな」

「ねー」


 まあ、何となくはわかるが。それに百合もわかった上で言っているのだろう。鈴音は思ったことを平気でズバズバ言うし、卑屈な態度を取ることはないが嫌らしさを感じることもない。その真っ直ぐな性格と可愛らしいルックスが女子に対しても好印象なのだろう。


 いや、百合が卑屈とかそういったことを言いたいんじゃないけどな?ただほら…外面はいいけどさ…


「性格悪くてごめんなさいね?」

「な、何のことですかね」


 ここにも心を読む人がいた…


「あーあ、なんかむかむかするから白鷺くんに八つ当たりしちゃおっかな〜」

「申告するくらいならやめてくれないかな!?」

作者多忙のためしばらく更新不定期になります汗

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