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お弁当作戦〜前編〜

「ふふ、来てくれたのね」

「う、うん。どうしたの?天河さん」

「あら?名前で呼んでくれないのかしら?百合のことは名前で呼んでいるのに」

「えっ、あー、そうだよね。…コホン。どうしたの?鈴音」


 晴れ渡る空の下、校舎の中庭で鈴音と誠也は2人きり。


 太陽の光に照らされた紅く輝く髪と凛とした佇まいは神々しさすら感じられる。


 対する呼び出された誠也は状況が飲み込めず困惑しているようだ。


「……あのね、私、お弁当を作ってみたの」

「どうして目を瞑ってるんだ?」


 目を閉じて語りかけるその姿は勇者に神器を渡す女神のよう。


「……私、お弁当を作ってみたの」

「あれ?聞こえなかったのか…?ええと…そうなんだ」

「食べてほしい…いえ、食べる権利をあげるわ」

「…え?俺に?というか何で言い換えたんだよ」

「ほら!受け取りなさい!」

「あ、ありがとう…」


 弁当箱の入った袋を手渡すと鈴音は足早にその場を後にした。


「なんだったんだろ…」





 ――――――






「はぁ……面倒だ」


 東条先生が廊下を歩いて、私たちのクラスである1年A組までやってきた。


「先生。いいところに来ましたね」

「…なんの騒ぎだ、これは。高橋」


 一直線に伸びた廊下には生徒がごった返しており、皆窓の外を見ている。いくら今が昼休みとはいえここまで人がいることは滅多にないだろう。私も普段は野次馬をするようなタイプじゃないんだけどね。


「先生も窓の外を見てみてくださいよ」

「まったく、一体何が…」


 窓の外を見た東条先生は色々察したようでこめかみを抑え始めた。


 黒山高校の校舎はU字になっており、間には芝が敷かれた中庭がある。ベンチや小さめのテーブルも用意されているため休み時間にはここに集まる生徒も多い。


 しかし、今日の中庭にいる生徒は、窓から見る限り二人しかいない。誠也くんと鈴音ちゃんだ。わざわざこの場所で、向かい合って一体何を話しているんだろう。


「...お似合いですよねー」

「...さあな」


 特に言うつもりのなかった言葉がこぼれ落ちた。東条先生はどちらとも取れない返答をしながら、二人を見つめている。


「高橋がいつも一緒にいる奴らだろ?......()()()白鷺か?」

「え...もしかして先生、何か知って...?」

「教師の勘だ」


 “やはり”と言ったことが気になった。賢二くんはいつも変なことをしてる。鈴音ちゃんの恋愛を応援してるのはわかるけど、何故か私のことも応援してきたし、よくわからない人。


 でも1番は、自分のことはどうなの?って聞きたくなる。


 昨日の夜、いきなり賢二くんから連絡が来た。


『誠也の問題を解決する案を考えた。明日鈴音と決行するから、見ていてほしい。あと、明日は誠也に弁当作らなくていいぞ!むしろ俺に作ってくれ』


 解決って…どうするつもりだろう。お弁当を作るなってどういうこと?ただ、この短い文章からただ1つわかることは、暗に私は手出しするな、と言っているような気がする。あとちょっと調子に乗ってるところがうざったい。


 でもきっとその通りなんだ。誠也くんは私に罪悪感を持っているから。私がいたら、変えられないんだろうな…


「…高橋」

「……え?」

「高橋!」

「わっ!はい!」


 ふと我に返る。ぼーっとしていて呼び掛けられていることに気づかなかった。東条先生は私の肩にそっと手を置き、優しい口調でこう言った。


「抱え込むなよ。相談ならいつでも乗ってやる」


 先生の手は意外と小さくて、ほっそりとしているけど、触れた場所からじんわりと暖かくなってくるようだった。


 少し弱気になっていたけどもう大丈夫。あくまで賢二くんは鈴音ちゃんの味方をするんだろうね。それならお手並み拝見といこうじゃない。


「じゃあ、白鷺くんと…ついでにせい…雨宮くんを困らせる方法を一緒に考えてくれませんか?」

「…何言ってるんだ」


 まったくもう、私も大概変人だ。








 ――――――







 これは、中庭で2人が話す日の数日前の話。賢二と鈴音はL○NEをしていた。


『ねえ、私全然誠也様にアプローチできてないんだけど』


『まあ、普段会話ができるようになっただけで良いような気もするけどな、あと様付けキモいからやめろ』


『でもそれじゃいつまで経っても進展しないじゃない!あなたの任務よ!私と誠也様を付き合わせるのは!』


『そう言われてもな…じゃあ、何か誠也としてみたいこととか、してあげたいことはないのか?あと様はやめろって、日常会話で暴発したらどうすんだ』


『お弁当作ってあげたい。この前百合が作ってたとき、誠也様は嬉しそうにしてた』

『そうだったな、まずは胃袋を掴め!ってやつか。というか何で俺の後半の文章をことごとく無視するんだよ』


『それ、それだわ!今度お弁当を作ってみるわ。今度絵里奈借りるわね。どんなお弁当にしようかしら!誠也様喜んでくれるといいなぁ』

『いいとは思うけど、それちゃんと渡せるのか?いざって時にあがり症になるじゃん。あともうツッコミしないから。諦めるわ』


『あーーーーーーそれは賢二が上手くやって。良かったわ今気付いて。絶対誠也の前では緊張しちゃうもの』

『様つけろよ』

ストックが無くなったので約3日に1回の更新になります

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