俺の右腕が魔王になってしまった件
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good morning !いい朝だね!
ところで俺の腕がおかしいんだけど、どうしたらいいかな?
俺は大井智久 高校一年生で、朝起きたら右腕が禍々しいことになっている系男子です。
何でこんなことになってるのかって?俺にわかるわけないでしょ......
むしろこっちが知りたいわ。
病院に行くべきかと思ったけど、よく考えたら
「朝起きたら右腕が禍々しくなってました!」
なんて言ったら精神病院行き待ったなしだな。
なら自分で調べるしかない。
俺は自分の右腕をよーく調べる。
すると右腕の手首にmade from Maou と書いてある。
なるほど、つまり俺の右腕は魔王ってことか。
は?
なんで数分前の俺は調べようだなんてと思ったんだ。謎が深まるばかりじゃねーか。
ベッドの上で頭を抱えていると
「ともひさー!早く起きなさーい!遅刻するわよ」
と母さんに呼ばれ、なんとかして隠さねばと思い、急いで学ランを着て、朝食を食べに下へおりた。
Yシャツは右腕のサイズが合わず破けた。
「今日は随分とお寝坊だったのね?体調悪いの?」
母は少し心配そうな顔で聞いてきた。
「いやぁ、昨日は夜遅くまでゲームしてて......」
「もー、しっかり寝なきゃダメよー」
ごめんごめんと苦笑いをしながら手を合わせる。
うん、何の変哲もない日常だ。
さっきのは寝ぼけて変な夢でも見ていたんだ。きっとそうだ。
そんな希望的観測を胸に右腕の袖をちらりとめくると、相変わらず禍々しかった。
分かってはいたんだけど、やっぱり実際に確認するとちょっとショック。
やばい、もう学校に行く時間だ。
こんな所で俺の小学生から続く皆勤賞を落とす訳には行かない。
絶対に隠し通す。そう固く心誓った。
爽やかな朝、小鳥の囀り、差し込む朝日、右腕の魔王。
あれ、最後変なの紛れてなかった?
ともあれ、美しい朝だ。
よく考えたら、学ランさえ脱がなきゃバレることもないし、案外大丈夫かもしれな......
「おはよ!」
僕はドンッと押されてバランスを崩す。こんなことをするのはヤツしかいない。
「おいおい、やめろよ。心臓に悪い。(今日は特にな)」
「えー?いつもの事じゃーん」
こいつは小鳥遊沙羅。俺の幼なじみで同じ高校に通っている。妹みたいな存在だ。
「ったく、今日は俺にあんまり近づくなよ?」
「えーやだー。なんでー?」
「なんででもだよ」
「ムゥ....」
ここまで言われてようやく諦めた沙羅は
「じゃあ、朝まではくっ付いていくね!」
と言ってピトッと俺の右腕に抱きつく。ん?右腕?
うわああああ!俺は慌てて右腕から沙羅を引き剥がす。
沙羅はキョトンとした顔をしていたが、しばらくすると
「もう知らない!」
と怒って走っていってしまった。悪いことしたな、後で謝らなきゃ。
まぁ、今日は誰とも関わりたくないし結果オーライかな。
俺は久々にとぼとぼと一人で学校に向かった。
学校に着くや否や、親友の野村大地が
「おいおい、朝から嫁と喧嘩かよー全く、よくやるよなー」
「嫁じゃねーし」
「ちゃんとあとで謝っとけよー?」
「あぁ......」
そう言うと大地は手をヒラヒラさせながら人混みの中に消えていった。
俺は一人で上履きに履き替え教室に向かった。
席に着いて授業を受けて、ぼーっと外を眺めているとヴーッヴーッと警報がなる。
「ただいま、巨大隕石が接近中です。この周辺は危険区域です。今すぐ避難を始めてください」
冷静な警告に教室中がパニックになる。
慌てて外に出るもの泣き叫ぶもの、教室は阿鼻叫喚の地獄と化した。
俺は、しばらく突っ立っていたがすぐさま教室を飛び出して沙羅のところへ向かった。
廊下で泣きながら走る沙羅を見つけると、手を掴んで引き寄せた。
「沙羅、朝はごめん。どうしても死ぬ前に君に愛してるって伝えたかったんだ」
「私こそ嫌がってたのにごめんね。最後、死ぬ前に私を愛してるって言って安心させたかったんでしょ?分かってる。気持ちだけで嬉しいから本命の子のとこに行ってあげて?」
そう言って彼女は僕の腕からするりと抜け出した。
俺は後悔した。何故あの時に秘密を打ち明けなかったのか、そうすれば彼女とキスする時間くらい作れたのに。俺は学ランを脱ぎ。沙羅に全てを説明した。すると彼女は驚きと嬉しさで泣き出してしまった。
「衝突まで、30、29、28、27.......」
カウントダウンが始まっている。
沙羅は恐怖で俺にしがみついている。俺は自分の右腕を見た。
世界を滅ぼす魔王ならあの隕石くらい止められるかもしれない。
俺の命と引き換えに......
俺は沙羅をそっと引き離した。
「なんで?最後くらい一緒にいてよ!お願いだから......」
もう時間が無い。俺は彼女の頭を撫で少し笑って、教室の窓から飛び出した。
魔王の力で空を飛ぶことが出来た。正確には右腕に引っ張られる感じだ。
俺はそのまま隕石に矢のように飛んで行った。
グングンと隕石が迫ってくる。
俺は目を瞑って隕石との激突に備える。
ビキッと右腕に激しい痛みを感じる。頭が真っ白になるが、辛うじて意識を残す。
痛みが薄れる。死んだのかと思い目を開けるとそこには粉々になった隕石があった。
それを右腕が吸収していく。
全て吸収し終わると右腕は俺を沙羅の横に運んでくれた。
泣いている彼女を横からそっと抱きしめるとそのままもう大丈夫だよと囁いた。
沙羅はまた大泣きしながら俺に抱きついた。
俺達はそのまま熱い口付けを交わした。
俺の右腕は普通に戻っていた。
唇を離すと同時に俺は倒れ込んだ。まるでそれが最後の仕事だったかのように。
はっ......
今のはなんだ、夢か。慌てて右腕を確認するが何も無い。
良かった。そう思ったが、俺は当たり前のことに気がついた。
明日も沙羅が俺の隣にいるとは限らないという当たり前のことだ。
俺はスタンドライトの電源を入れラブレターを描き始めた。
一方その頃、魔王城では…...
「魔王様!昨日はどこに出かけてらっしゃったのですか!全く、無断で出かけた挙句、土属性最強の隕石魔法に大規模記憶操作魔法だなんて......国でも侵略してきたんですか!申し上げておきますが、あなたの魔法の履歴は魔王ログで逐一報告されておりますからね」
小さなローブをきた老人が金切り声でまくしたてたが、魔王は穏やかに笑って
「なぁに、悩める少年の背中を押しに行っただけさ」
そう言うとローブの老人は頭を振って下がっていった。
くだらない冗談だと思ったのだろうか、どちらにせよまだまだ魔王様の秘密の趣味は終わりそうにない。
場合によってはシリーズ書くかもです!