ドラレコいらず
「この前、運転してたら、変な車が後ろからついて来てさぁ。」
「変? 形とか色とかが?」
「いや、走り方が。なんか、真っ昼間なのにライト点けてんの。しかもハイビーム。で、点けたり消したりして。」
「それって、あお──」
「あれ、故障でもしてたのかな? あと、急に速度上げて、真後ろにピターッくっついて来たり、追い越し車線と走行車線行ったり来たりしてさぁ。」
「だからそれ、あおり───」
「そのうち、オレの車の前を走り出したんだけど、やっぱ走り方変でさぁ。やたら蛇行したり、スピード上げたり、急ブレーキかけたり。で、赤信号で止まった時、前の車の人が下りてきて、オレの車の窓叩いてさぁ。」
「おいおい、ヤベぇじゃん。何ともなかったか?」
「おお、何かちょっと怖い顔で何か言ってたけど、音楽ガンガンかけてたから、なんも聞こえなかったし、割とすぐ青になったから。その車は直進、オレは曲がったから、その後のことはわからないけど。なんだったのかなぁ、あれ。」
「無事でよかったな。それぜってぇ、あ───」
「あっ、もしかしてっ!」
「そう、あおり運転───」
「めっちゃトイレ我慢してて、焦って変な運転になってたのかな?」
「…………は?」
「車下りて来たのは、近くのコンビニの場所聞きたかったとか? きっとそうだ。怖い顔してたワケじゃなくて、切羽詰まってたんだ、あれ。うわー、悪いコトしたなぁ。大丈夫だったかなぁ、あの人。」
「……その人より、自分の思考回路を心配しとけ。」