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精神科入院一週間コース

作者: にとろ

大体実体験に基づいたものですが、時代の差があることはご承知ください。

当時はスマホのない時代でした。

 閉鎖病棟、そこは神秘に包まれた場所。

 入ったことがなくても噂だけは流れてくるところ。ではそんな秘密のベールに包まれた閉鎖病棟の一部を語ります。

 まずは精神科に入院するのはどんな状態か?

 自傷他害があれば意外と簡単に入ります。自殺衝動などが代表的ですね。

 では入院の勧め方はどのようなものでしょうか?

 私の場合はド○クエの質問メソッドでした。はいといいえを選ばせて「いいえ」を選ぶとループするアレです。

「あなたは入院した方が良いですね」

「窮屈なんでいやです」

「断ると強制入院になりますよ」

「強制なんですか?」

「いいえ、自分から入らないなら強制しません」

「じゃあいやです」

「断ると強制になります」

 こんな感じで延々ループします、慈悲はない。

 さあ前置きはそのくらいにして閉鎖病棟の中へ入っていきましょう。

 閉鎖病棟の入り口、当然「閉鎖」と名前がついているだけあって内側にも外側にも鍵がついています。

 エレベーターもボタンの部分に鍵付きの蓋が開けられないようになっています。

 否が応でもここが「閉鎖」病棟なのだ、と主張しています。

 では病棟内部へ入ります。

 おや? 病棟内部のイメージは奇声が上がってたり暴れてたりというイメージがありますか? 残念ながら意外と病棟内部は平和です。

 やべーひとは保護室と言われるガチの拘束部屋へ入れられているので意外と一般病棟と変わりません。

 余談ですが閉鎖病棟には財布等の貴重品は持ち込めません、盗難とかあったら責任とれないからですね。

 なお、入院を考えている方に一つ言っておくなら、現在私が入院することになればスマホは必須ですね。(必要なら)PCは持ち込めます。

 注意しなければならないのは主要3キャリアの内、aとSはテザリングが有料なのでd社に変更するかテザリングオプションに入っておきましょう。

 私はPHSのPCカード(歳がばれますね……)でネットをしていました。

 当時は128kbpsという低速でも使い放題は貴重だったので重宝しました、今のスマホなら常時通信制限状態みたいなものですね。

 そこでありがたいと思ったのが、テキストサイトです。今はどこの零細ブログでもイラストや写真を多用していますが、当時はまだまだテキストサイトがあったので低速回線でも楽に読み込める素晴らしいサイトとして重宝していました。

 そろそろ初日の手続きも終わり夕食の時間が来ました。精神科なので身体的には問題ない人も多いのですが、残念ながら曲がりなりにもここは「病院」です。食事がおいしいわけはないですね。

 味がどうこうではなく純粋に「薄い」んですね。

 健康には大変気を遣っているのでしょうが物足りないことこの上ないです。

 では日も沈んだことですし、夜は……ネットの時間ですね!

 部屋に鍵をかけて、部屋の電気を消し、さあこっそりサイトを巡回します!

「早く寝てくださーい」

 おっといけない、この部屋は外から丸見えなのでした。看護師から警告が入ります。

 スマホがない(クソデカ窓スマホはありました)のでネットにはノートPCを広げなければなりません。

 意地を張って拘束されても困るので寝ましょう。

 翌日、健康的な時間に目が覚めます。さすが病院と言ったところでしょうか。

 ところでこの病院だけなのかもしれませんが、主治医は毎日診察してくれるわけではありません。

 診察は週に3日くらいでしょうか。

 これが何を意味するのか?

 退院の診断は医師にしかできません。そして診察は週3日、つまり診察のない日は退院のチャンスはないと言うことです。

 と言うわけでやる気が起きませんね。ここでどれだけ頑張っても退院にはつながらないわけです。

 なろうのレジェンド小説でも「今を楽に生きなさい」という教義の宗教もあることですし、診察のない日はすこぶるやる気が起きません。

 しょうがないので部屋の中でぐだぐだ過ごしましょう。

 おっと、新人の教育にかり出されました。

 新人とは精神科の新規入院者ではなく、新規で入ってくる看護師です。

 どうやら精神科を教えるのに、意思の疎通ができてそれなりに症状が重い人が選ばれるようです。

 ギリギリ飛べそうなハードルって訳ですね。

 そうして看護師たちとの心温まるふれあいの後、夕食になりました。

 「看護師」というと女性率が高そうですが、(昔「看護婦」だったのからも見て取れますね)少なくとも閉鎖病棟担当者は5〜6割くらいの比率で男性も入っていました。この辺からは一部で「力仕事」が必要なのかも……と感じました。

 マズイ病院食を食べた後、わずかばかりのネットタイムを満喫し就寝します。

 なんだか廊下を人が夜中に歩き回っているようで、トイレとかでもないらしく、

「保護室入れるよ!」

 という看護師からの活気にあふれた怒声が飛び交っていました(夜中です)。

 さあ、初回の診察がやってきました! ここで好印象を持たせておけば退院が早くなりそうですね。

 というわけで、つとめて聞き分けがよく症状が軽いアッピルをしておきましょう。

「もうしばらく入院しとこうね」

 残念、初回で退院決定とはいきません。

 そう甘ければ端っから入院などさせられないですから今回は見送りましょう。

 そうこうしていると、入院から数日後にとても強大な敵を目の前にします。

 その強大な敵とは……「退屈」です。

 マジで暇なんです、仕事もなく、診察もなく、面倒くさがってレクリエーションみたいなのにも不参加を貫いていたら超暇になりました。

 もし当時SNSが存在していれば猿のように張り付いたであろうことは想像に難くありません。

 もちろんこの「なろう」なんてものもないので、入院前に近所の本屋で買った小説くらいしか読むものがありません。

 そうしていると数日に一度の「入浴」チャンスが回ってきました。

 毎日ではないんですね、ビジネスホテルのように任意のタイミングでシャワーくらいしたいものですが贅沢は言えません。ここで入院して以来の心と体の垢を落としておきましょう。

 そうしてその日は気分よく眠ることができました。

 ところがどっこい、退屈は全くなくなりません。暇でしょうがないんです。

 当時はまだフリーのゲームやソフトが少なく、windowsMeを使用したいたため、ちょくちょくPCが落ちます。

 しかも超がつくほどのもっさり動作。別に罪はないのですがゲイツに対する恨み節がどんどん募っていきました。

 そうして数回の診察をパスするとついに退院したい? と診察で聞かれました。

 もちろん否も応もなく「すごいしたいです」と答えました。

 うーん……と悩んでいます。ここがチャンスとばかりに「もう大丈夫」、「問題は起こさない」アピールをします。

「じゃあ、退院してみよっか」

 心の中でガッツポーズをしながら私は退院していきました。

 こうして無事、シャバに戻ってくることに成功しました。

 結果から言えば、まあよかったんじゃないかな? とは思います。二度とごめんですがね。

 ここまで読んでくださった方には大変申し訳ないのですが、すごいイベントなどは経験しませんでした。

 期間がもう少し長ければあったのかもしれませんが、私は「いかにも」なイベントはありませんでした。

 ではこの経験から言えることは「閉鎖病棟にはスマホを持って行け」です。

 無いと暇すぎて絶望すること請け負いです。

 いやあ、手のひらにのる端末でネットへのフルアクセスが高速にできるとか良い時代ですねえ……

 当然、wi-fiなどの施設はないことが多いので、短期の予定なら入院前にアップデートはすべて済ませておきましょう。いくらLTEでもOSの大型アップデートにはきついものがありますからね。

 電子書籍等も端末の容量が許す限り自宅でのDLをおすすめします。

 コンテンツは消すのは簡単ですが、ダウンロードには大きなリソースが必要になります。

 マンガとか一冊でもけっこうな容量になりますのでwi-fiでできることは済ませておきましょう。

 以上、精神科入院一週間コース、でした。

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