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最終話 憧れの存在

今回は少しだけ長くなっております

時間に気を付けてください

 ノクシャの問い掛けにセツナはあったことをそのまま話した。そうすると二人は感心したようであった。

 なにも不思議なことなどない、ただモンスターを活用できたという話である。説明こそされていないものの、それがこの授業の本質であったはずとセツナは説明した。


「ノクシャが強引だっただけで、僕だけじょなくて他の皆もきっとそうしてレポートを書いてると思うよ?」

「んー?そうかぁ?確認してもないから確かにそうかもしれねぇな。それで、セシルはどんなモンスターを書いたんだよ?」

「ボクはハーミットンっていう石…?みたいなやつ。」

「石みたいなやつ?そんなやつ居たか?」

「僕も心当たりないけど…。」

「よく見たらそこら中に居たんだよ。ボクも見付けたのは偶然だったんだけどね。」

「どんな経緯だったんだ?そこら中に居るのを探しているのに見付けたのが偶然ってなんか変だと思うんだけどな。」

「見付けたのがっていうかモンスターだと気付いたのが偶然だったんだ。ボクも最初は猛獣族のモンスターを追いかけて走り回ってたんだけど、疲れてそこにあった岩に腰掛けたら急にその岩がぐらぐらと動き出してさ。いやービックリしたよね!」

「したよね!って言われても知らんがなって感じなんだが…。要はそこら辺の岩が実はモンスターだったってことか?」

「そうそう!こんなモンスターもいるんだって胸が熱くなったよ!」

「それだけで感動できるセシルが俺は羨ましいよ。」

「えへへ…そうかなぁ?」

「…。」


 ノクシャの発言はノクシャやセツナにとっては、明らかな皮肉であったがセシルには一切通用しなかった。そういう素直さ、ある種の図太さがセツナには羨ましく思えた。

 『気にしないようにする』のではなく『気にならない』のであればセツナはどれほど幸せに生きられただろうか。


「セツナ君?どうかしたの?」

「…どうもしてないよ。それはそうと二人ともなんでモンスターの名前まで把握してるの?」

「えっ?それは勿論デバイスで調べたからだよ?セツナ君は調べなかったの?」

「そんなこと考え付きもしなかった…。そっか最初からそうすればよかったのか。」

「セツナってしっかりしてるようで変なとこ抜けてるよな。」

「適当なようで肝心なところはちゃっかりしてるノクシャ君とは真逆だね!」

「何から何まで抜け落ちてるお前よりましだバカ。」

「バカ!?今、バカって言った?そんなに言うなら今回のレポートの成績で勝負だよ!ノクシャ君には絶対負けないからね!」

「おう、望むところだぜ。完膚なきまでにコテンパンにしてやるよ。」

「あはは…二人とも頑張ってね。」

「…あん?なに言ってるんだ?セツナも参加するに決まってるだろ?」

「当たり前だよね!」

「…。」


 セツナが返せずにいるとフィリックス先生が教室に入ってきて、ほどなくしてチャイムが鳴りホームルームの時間になってしまったので、流れでそのまま参加させられる形になってしまった。

 ホームルームが終了し今日もまた職員室へと行くことになっていたので、二人としばらく雑談をしたあと別れ職員室へ向かった。


「失礼します。フィリックス先生はおられますか?」

「アカツキ君。昨日と同じ部屋にいきましょうか。」


 そうして二人は昨日と同じ部屋で話始めた。


「それで。昨日言ったこと少しは考えてくれましたか?アカツキ君のモンスターについて。」

「…。あの…それなんですが…。」


 素直に今のままにしておきたいと伝えることが、セツナには少し恥ずかしかった。それは恐らく改心の理由がフィリックス先生やジン先生の説得によるものではなく、単純にセツナが自分のモンスターに愛着が湧いてしまったからという、どちらに転んでもあまりにも身勝手な理由だったからである。

 説得に応じたのであれば相手の意思を汲んだのだという理由付けもできたのであるが(嘘をつかなければ)それもできないのである。


「あの…その…。」

「今日ジン先生の授業の時遠くから少し見ていたのですがセツナ君のモンスターはニャーバンクルみたいですね。」

「ご存知なんですか?」

「ニャーバンクルは愛玩動物としてもとても人気があるモンスターですからね。産まれながらにエネルゲイアという事を差し引けばかなりポピュラーなモンスターですよ。人懐こく優しく忠実である反面、それ故にとても繊細なモンスターでもあります。」

「…そうなんです…。そのモンスターは捨てられるかもしれないと知ってたみたいで…とても震えてたんです。」

「…。」

「…それで…いたたまれなくなってしまって。申し訳ない気持ちでいっぱいになって…。」

「…アカツキ君の中で答が出ているのであれば私が何かを特別言うことはなにもありません。名前をつけて可愛がってあげてください。」


 誰にも言いはしなかったが、名前は最初に見たときからセツナの中で決まっていた。もうセツナにとってはそれしかなかった。


「…ありがとうございます。」

「少し話は逸れますが、モンスターは少なからずテイマーの性格の影響を受けます。多くはテイマーに似るか或いはテイマーとは真逆になります。その子は間違いなくアカツキ君によく似ていると思いますよ。」


 そう笑顔で言われ、似ているだろうかと疑問に思いつつ、愛想笑いを返した。


「…すみません、先生。リンドさんの事なんですが…。」

「朝も言いましたが私からはなにも言うことは出来ません。」

「でも先生…!先生はリンドさんのことが心配じゃないんですか!?」

「リンド君はもう立派な大人です。責任と為すべき事ぐらいは自分でわかっていると思います。それに今日の昼頃連絡はとれて明日からは普通に復帰するらしいのでアカツキ君が心配することはありません。」

「心配していることはそこじゃありません!それぐらいわかっているんでしょう!?」

「…。『Butterfly And Rose』という場所を知っていますか?」

「…行ったことはありませんが…確か酒場じゃなかったですか?」

「そうです。未成年のアカツキ君が行っていい場所ではありませんが、私から電話しておくので、今夜行ってみてください。」

「…どうしてですか?」

「…私から言えることはそれだけです。気を付けて帰ってくださいね。」

「…わかり…ました。」


 腑に落ちないことが沢山あった。どうしてフィリックス先生はなにも話してくれないのだろう?フィリックス先生は非情な先生ではない事をセツナも理解している。

 だからこそ教えてくれない事が納得できなかった。言われたところに行けば何かがわかるのかもしれないと思うことにしてセツナは、学校から出て大樹の元へと来た。


 もしかしたらここにリンドさんがいるのかもしれない、というセツナの淡い期待がセツナをここへと運んできたがやはりここにリンドはいなかった。

 ぼんやりと茜色の空を見つめながら生暖かい風を浴びながら流れる雲を眺めていた。

紅い空の反対側から暗い夜がやって来てそれらが混ざり紫の空になった頃、セツナはハッとして指定された酒場へ向かう準備をして家を出た。


 場所こそ知ってはいたが当然入るのは初めてで緊張していた。大通りではなく寧ろ路地裏にある少し寂れた静かなお店だった。

 セツナがドアを開けるとマスターと目があった。


「いらっしゃい。セツナ・アカツキ君だね?」

「あっ…はい。…!リンドさん!?」


 セツナは奥の方で飲んでいる人物に驚いた。行方知れずだったリンドがまさかこんなところにいるとは思いもしなかったのである。

 特にリンドは大勢でワイワイ飲むのが好きでこういう店で一人静かに飲むというタイプではない。そしてかなり酒に強くそうそう酔い潰れるなんてことは無いことで有名でもあった。


「とりあえず掛けたらどうかな?残念ながら酒類は出せないが何が飲みたい?」

「えっと…すみません、何があるかわからないもので…。」


 こういった店にはメニューみたいなものがない。


「そうだな…炭酸は大丈夫かい?」

「はい、大丈夫です。」


 そして出てきたのはキューピッドと呼ばれるセツナには得体の知れない飲み物であった。そもそもプースカフェスタイルに馴染みがなかったのである。


「それで…リンドさんはどうしてここに…。」

「…ツナァ…俺が飲んでたらダメらって言うのかぁ?俺らってなぁ…飲みたいときぐらいあるんらよ!」


 呂律が回っていない様子を見て相等酔っていることは想像に難くない。


「マスター、もう一杯、もう一杯くれ。」

「リンドさん…もうやめた方が…。」

「うるせぇ…ツナ…お前にぁ関係ない…。」

「関係ないってなんですか!僕はリンドさんのことを心配して言ってるんですよ!」

「あんだぁ…やんのかぁ…?」

「リンド君。できたよ。」


 そう言ってマスターが新しく酒をリンドに提供する。


「マスター…リンドさんにもうお酒を出したらダメですよ…。」

「セツナ君と呼んでもいいかな?セツナ君はリンド君の体の心配をしてそう言ってるのはわかる。だが私はリンド君の心を心配をしているんだ。まだセツナ君にはわからない世界かもしれないがリンド君が立ち直るために必要なことなんだ。」

「…。」


「セツナ君。レリアさんが君にここを紹介した理由はリンド君に会わせるためではない。そういえば自己紹介がまだだったね。私の名前はアルフレッド・レゾナンス。メルヴィン・レゾナンスの弟だ。」

「…メルヴィン・レゾナンス選手の弟…。そんな人がテイマーやらずに酒場やってるんですか…。」

「テイマーが人生のすべてではない。テイマーに魅力を感じるかどうかは人それぞれだからな。本題に入ろう。リンド君やレリアさんが君に何も教えてくれなかった事に関して私なら話すことができる。」

「…そうです!なんでリンドさんはこんな状態になってるんですか!?」

「部外秘であることを認識して約束してくれるか?」

「…はい。でもいずれ知れることだとフィリックス先生は言ってましたが…。」

「今はまだ全員が心の整理ができているわけではない、ということだ。」

「…?」


「…昨日、私の兄であるメルヴィンが亡くなった。」

「…。そんな嘘です!昨日決勝戦してたじゃないですか!テレビでは普通に…元気そうに…。」

「そんな不謹慎な冗談を言うほど私は子供ではないよ。」

「じいさんはなぁ…俺の…目標だったんだ…。それなのによぉ…。」

「…リンド君は兄を越えることを目標としてひたすらに頑張ってきた。同時に兄もそれを楽しみにしていた。そしてその結果リンド君は越えるべき壁を失い、それは永遠に越えられない壁となってしまった。」

「…それでリンドさんは…。」

「…リンド君は望んでいない形でケセド代表へと上り詰めた。ケセド代表はケセド最強の証であるがそれがこんな形でとなると周りがどう言おうとリンド君本人が納得できなかったんだよ。」

「マスター…俺は何を目標に頑張ればいい…?」

「リンド君。私は昔、兄の戦績が芳しくないときに『いつまで代表の座に座っているつもりだ?』と問うたことがある。」

「…。」

「その時兄は『代表とは最強である自分を誇り、いつ誰に引きずり下ろされるかわからない恐怖と誰にも負けられない重責を背負って尚それでも代表でいたいと最強の座にすがり付く者にこそ相応しい』と答えた。

リンド君が代表が重荷と思うのであれば、代表を辞退することも私は悪くないと思っている。必要であれば私が援助しよう。」


「…なぁ…ツナ…俺は代表に相応しいと思うか…?」

「当たり前じゃないですか!今ケセドで一番強いテイマーはリンドさんなんですよ!?」

「それは違うぞ。ツナ…現在一番強いテイマーはシュユさんだ。」

「…リンドさん…母は…もう…。」

「…認められるかよ…。」

「…え…?」

「認められるかってんだ!じいさんにしろシュユさんにしろ、俺が越えたいと思ったヤツに限って勝手にいなくなりやがるんだ!実力社会でエスカレーターで繰り上がって何を納得しろって言うんだ!」

「リンドさん。ここで文句を言っても母やメルヴィン選手が帰ってくるわけではありません。ましてや…。」


 ましてや、ここにいるリンドさん以外の二人はその二人の肉親でありリンドさんよりも深い悲しみを背負っている、と言い欠けて口ごもる。


「…帰ってこないから不満が溜まるんだろうが。怒りも悲しみも行き場をなくしてどうして平気でいられるってんだ。」


 リンドは酒でも飲んで八つ当たりでもしないと気が狂いそうだったのだろう。アルフレッドが言う心の心配しているというのはそういうことなのだ。


「ツナ…シュユさんはまだ帰ってこないって決まった訳じゃねぇんだ…。」

「またその話ですか…?KIA(killed in action)でなくMIA(missing in action)だからって話でしたよね。」

「やられた瞬間も遺体も未だに目撃されてない。捜索を打ち切りになったからまだ見付かってないが、まだ生きているかもしれない…俺より強い、代表になる権利のある人間が!」

「…リンドさん。アルフレッドさんの言ったこともう忘れたんですか?僕の母は最強に固執しない人でした。勝ち負けに執着できない人間が代表になることは良くないことなんです。仮に帰ってきたとしても母は代表にはならないと思います。いい加減、幻想じゃなくて現実を見てください!」

「俺が現実逃避してるって言うのか!?ツナ、そいつは聞き捨てならねぇぞ。」

「いえ…。いえ!リンドさんは現実逃避してます!」


 セツナは気圧されてリンドに賛同しかけたが、ここを踏ん張ることがリンドのためだという判断のもとセツナはリンドの発言に正しいと思う言葉で反論することにした。

 そこでマスターが水を出しながら仲裁に入る。


「二人とも少し落ち着きなさい。あまり酷いと店から追い出さないといけなくなる。」

「…。はは…ツナがそこまで言うなんてな…。現実逃避…してるのかも…な…。」

「…リンドさん?」

「…わかってるんだ。ただな、俺は俺の強さに満足してないんだ。今代表になったところで他のコミュニティのやつらに勝てるか?いや、対等ですらないだろうさ。じいさんですら互角にもならない世界で俺はどのツラ下げて代表を名乗ればいい?」

「…。」


 リンドはシュユとは異なり勝利や最強にこだわっていた。代表になりたい気持ちは人一倍大きかったのである。それ故にシュユやメルヴィンに勝つことによって最強になることが不可能になったことに憤りを感じていた。


「…ならリンドさんはリンドさんより弱い人が代表になることが正しいことだと思うんですか?そんなことなら最初から代表なんて目指さなければいいんじゃないですか!?自分の望んだ形でないと代表になるのがイヤだというのなら、アルフレッドさんの言う通り降りればいいと思います。」

「…。」


「…そうだな…。俺が代表にならないってことは俺より弱いヤツが代表の座につくってことなんだよな…。」

「リンド君。私は一人のケセドの人間としてより強い人間に代表になってもらいたい。だからもし、リンド君が代表になると言うのであればポチの継承権を君にあげようと思う。」

「…! それは…じいさんの意に反することになる…!俺は受け取れない…。」

「兄が私にポチを託したのは 私がポチを使うためではない。最適な継承者を探すためだ。」

「…それってつまりじいさんは俺の事を信用してくれてなかったってことなんだよな…。」

「兄がリンド君に、と言わなかった理由は今のリンド君を見たら明白だと思うがその辺りはどう思う?リンド君に負けてやることができなかったことを兄は最期まで悔やみ、そして同時に誇っていたよ。全てはリンド君、君の意志次第だ。」

「リンドさん。僕はリンドさんこそ代表に相応しいと思います。」

「…なぁツナ。お前は代表になる意志はあるのか?勿論今すぐって話じゃなくて長い目で見てって意味だが…。」

「…僕はまだ…そこまで考えられていません。」

「…。俺のために代表を目指してくれって言ったらわがままか?」

「リンドさんのため?」

「そうだ。今のケセドじゃ俺の次に強いやつでも俺とかなり差が出来てそいつはもう成長が頭打ちになりつつある。だからツナに…俺を倒してほしいんだ。」

「…何を言ってるんですか?代表になるほどの人が負けることを願うんですか?」

「そうじゃねぇ。今の俺じゃ代表になったところでその先に何もない世界を歩むしかなくなるんだ。なんというか走り続ける理由がないと言うかな。追われるわけでも追いかけるわけでもない道を歩くのに走る必要性はないだろう?」

「リンドさんは走り続けたいんですか?」

「あぁそうだ。アルフレッドさんの言っていたじいさんの話聞いたときに思ったんだがな。

俺にはケセド内で俺を引きずり落としてくるようなテイマーは現状いねぇ…。だが最強を傲らずに最強を下ろされる恐怖が無ければダメなんだよ。」


「…僕は…リンドさんを倒せるほどのテイマーになれるでしょうか?」

「何甘えたこと言ってやがる…。そんな気持ちじゃ勝つどころか追い付くこともできやしねぇよ。ツナに期待するなっていうならそれはそれでいいんだ。すまねぇな。」

「…リンドさん。リンドさんがリンドさんより弱い多くのテイマーよりも僕の方が可能性があると、代表を狙えるだけの素質があると思うのであれば僕は本気で代表の道を追いかけてみてもいいと思えます。」

「安全保証がないと吊り橋を走ることはできない…か?はっきり言ってやる。そんな保証は一切ない。出来るとか出来ないとか無謀だとか勇気だとか、そんなんじゃねぇんだ。ただの意地と折れない覚悟それだけで俺は突っ走ってきた。ここまでに何回もぼこぼこにされた。だから勝ちたいって思えた。だから強くなれた。」


「リンド君の言っていることは強くなりたい気持ちが先なんだということだよ、セツナ君。モンスターは気持ちに応えて強くなるので今の自分に満足した時点で成長しなくなってしまう。レリアさんが今の順位に落ち着いているのもその辺りが関係している。」

「レリアも本気で上を目指す意志がない…が下に絶対抜かれない意地で強くなり続けている。正直なところレリアの実力は順位通りじゃねぇ。もっと上だ。教師になっちまったから形式上あまり上にならないようにと本人から頼み込んでその順位にいるだけだ。」

「ただ、そうだな。私から言えることはセツナ君。君は間違いなくシュユさんの息子だよ。その黒い髪以上にその性格に強く面影が現れている。それが負担になっているかもしれないが期待はされていることは君自身がよくわかっていることだろう?」

「ええ…わかっています…。」

「期待されているという意味では俺も同じだけどな。次期代表と言われながらいつまでたっても代表になれず、永遠の代表候補と揶揄されたこともあるし。だけどそんなの言わせておけばいいのさ。」

「…?」

「実力が伴ってくればやっかみなんて殆どなくなるし、それでも飛んでくるヤジは実力のないやつの負け惜しみでしかないからな。応援がツラい時期もあったがそういうのを乗り越えなきゃいけない世界だったってだけだ。

期待も嫉妬もどう捉えるかは自分に自信があるかどうかだ。」

「自信ですか。僕に出来るかどうかということではなく、僕がやるんだっていう心意気が大事なんですね。それがモンスターの強さにも繋がってくる。」


「…ツナ。俺にとってはお前しかいねぇんだ。俺の立場を脅かしてくれるような強いやつは。じいさんに叩きのめされて残ってる連中は覇気がなくなっちまった。俺が代表になったら俺なら勝てるって最初は突っ掛かって来そうなもんだが俺が本気でじいさんと同じ道を走っていたら同じ結果になるだろう…。」

「…どんだけリンドさんが走り続けてもリンドさんを倒すまで走って追いかけ続ける強い意志が必要ってことなんですね。」

「…まぁ今すぐに決めろって訳じゃねぇ。俺はヘタレた代表になるか、誰にも負けねぇ最強の代表になるかって選択肢しかねぇみたいだしなぁ?マスター?」

「私はそこまで言ってはいないけどね。説得したのはほとんどセツナ君ではないかな?リンド君が代表になってくれるというのであれば皆喜ぶだろう。」


「…リンドさん。」

「ん?なんだツナ。」

「僕にとってリンドさんとメルヴィンさんは憧れの存在でした。それはその二人に勝ちたいだとかそういうのではなく、その二人のようなテイマーになりたいという事でした。」

「…それで?」

「その二人がそういう道を歩んできたというのであれば僕は二人に(なら)って、最強のテイマーを目指したい。リンドさんの為じゃなく僕のために代表になりたいと思います。」

「…男に二言はねぇぞ。本気で上を目指すならそこら辺のクラスメイトなんて気にしてちゃならねぇ。そんなやつら蹴落として何がなんでも最強になってやるってツナに本気で思えるんだな?」

「…約束します。必ずリンドさんを倒してみせると。」

「…今の俺のように腐ってしまっても文句は言わせねぇぞ。それが目的で俺はツナに頼んでるんだからな。」

「勿論です!リンドさんこそあっさり負けないでくださいよ!」


 そうしてセツナは代表となる道を選んだ。(きた)るリンドとの決戦のため、モンスターを育て上げ、学校卒業後ランキング戦に全力で取り組むセツナ。その姿は在りし日のメルヴィンにも重なって見えた。

 いつの日か彼はなるべくして代表になるのだろう。そしていつの日かこの世界の秘密も知ることとなる。


 それはまた別のお話。

打ちきりです。

出番がなくなったセレスや存在を抹消されたアニスが中々に不憫でありますが…。

書いてる日の次の日の話と、ノクシャやセシルのモンスターの進化とテストの話と、世界の話ぐらいしか頭になくて展開が決まってないのに書き続けると不安しかなくて。

Twitterで決まってる部分の話だけでよければ内容お伝えしますので気になる方がいれば気軽にどうぞ。


@chainingchain

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