一話 テイマーマスターチャンピオンシップ
不定期更新ですが少しずつ頑張っていけたらな、と思います。
モンスターが徘徊する『エリア』とそこに点在する10個の『コミュニティ』。
その中の一つ、コミュニティ04『ケセド』に住むセツナ・アカツキはテレビを見ていた。
「第48回テイマーマスターチャンピオンシップ!決勝戦も実況を担当させていただきますカルナです!」
年に一度コミュニティ毎に代表を選出して最強のテイマーを決める大会である。
「早速選手の紹介といきましょう!大会常連にして歴代優勝数、連勝数最多!今なお輝き続ける大会の顔!コミュニティ04ケセド代表!メルヴィン・レゾナンスゥゥゥ!」
カルナのコールと共に老年の男性が出てくる。
セツナには尊敬するテイマーが二人いた。その中の一人がメルヴィン・レゾナンスその人である。
メルヴィンはセツナが幼い頃にチャンピオンシップで連勝を重ねた憧れの存在であり、今なおケセド代表という流石と言うべき実績を持った老人である。
近年のチャンピオンシップでは若い世代に押され芳しい成績を残せていなかったが今年になって久々に決勝戦まで登り詰めたのだ。セツナは是非とも勝ってほしかった。
「それに対するは、今年が初出場にして決勝まで押し寄せる超新星!かの星の輝きは昼でも眩い!コミュニティ06ティファレト代表!セレス・ヴェレットォォォ!」
セレス・ヴェレットと呼ばれた女性が出てきた瞬間にセツナは彼女に見とれてしまった。綺麗な金色の髪と雪のように白い肌。瞳の色は空のように美しく青く澄んでいた。セツナはメルヴィンの試合しか見なかったことを少し後悔した。
「それでは両者、戦わせるモンスターを決めたらセットをお願いします!」
メルヴィンとセレスがミニチュアを横の台座に置くのが見える。モンスターはミニチュアライズされて携帯される。ただしそれでもモンスターはそれぞれ生きていることを忘れてはならない。
モンスター毎に当然優劣はあるので後出しできないように直前にモンスターを決めるようになっている。
「両者セットが完了したようなので紹介していきましょう!」
「メルヴィン選手のモンスターはぁぁぁ!メルヴィン選手の相棒!メルヴィン選手の右腕!今までもそしてこれからもきっと変わらないその風体!ポチことウィングド・ケルベロスだぁぁぁ!」
そう言うと共にメルヴィンのミニチュアは空へと浮かび光を放って大きなモンスターへと姿を変えた。
ポチとはメルヴィンが付けた名前であるがその名前に似つかわしくない、巨翼と三つの頭を携えた空飛ぶ番犬。三つの頭はそれぞれに凶悪な牙と頭脳をもち多くの対戦相手を畏怖させた最強クラスのモンスター。ケセドの皆からはポチとして親しまれてはいるがメルヴィンの連勝記録にこのポチの存在は欠かせない。
「はたまたこちらは誰が予想したことでしょう!初戦から最終戦まで同じモンスターで挑むマスターがいるなんて!いやいや、誰もが予想したことでしょう!もしかしたらそう来るしれないと!無機物モンスターは飛べない?そんな常識覆す!空飛ぶ兵器!ヴクブ・カキシュだぁぁぁ!」
金と銀に輝く躯を持ちその神々しさたるや太陽にも似たなにかを感じさせた。ヴクブ・カキシュが甲高い鳴き声をあげる。機械的な外見とは裏腹にその声は明らかに鳥の声で、ヴクブ・カキシュは決して機械などではなく一生命体なのだと思い知らされる。
しばらくしてゴングが鳴り、戦いの火蓋が切って落とされた。飛び回る二匹の獣。決勝戦というだけあってその二匹にとっても負けられない気持ちは人一倍強かった。
宙を舞うヴクブ・カキシュから落ちる羽の一枚一枚が矢となってポチに降り注ぐ。それをポチはしなやかにそれをかわし、相手の首筋に喰らいつく。
噛み付くポチの大口から炎が漏れる。噛み付きながら火炎を吐き出しているのだろう。
ヴクブ・カキシュは少しよろけこそしたが即座に錐揉みしポチを振り払い、ポチが外れた瞬間に下から腹部へ体当たりでぶつかり、墜ちていくポチに大きく羽ばたくヴクブ・カキシュの風に乗った羽が襲いかかる。
避ける余裕などあるはずもなく、ポチは敢えなくやられてしまった。
「おおっと!ポチ、撃沈!勝ったのはセレス選手のヴクブ・カキシュだぁぁぁ!よって優勝はコミュニティ06ティファレトに決定いたしましたぁぁぁ!健闘したお二方に拍手をお願いします!」
歓声と拍手が巻き起こる。健闘した、と言ってもポチの今までの功績から言って今回はかなり呆気なかった方である。
それだけ、あのヴクブ・カキシュは強力なモンスターだったのだ。
「ポチ、負けちゃったなぁ。」とセツナは呟いた。
応援していた選手が負けてしまい、セツナはがっかりした。しかし準優勝だ、銀メダルだ、誇るべき功績なのだ。そうセツナは自分に言い聞かす。
でもいつかは僕があの場に立つんだ、とセツナは意気込んだ。セツナは今日からテイマーの学校に入学することになっている。
今から入学式。そして明日からは楽しい学校生活。それを思うと居ても立ってもいられない。
三回目の入学式の準備確認を終え、学校へと急いだ。歩いていっても十分程度でつく距離を四十分前に駆け足で向かった。逸る気持ちを抑えることはできない。
門の前につき深呼吸をしてから学校の領土へと踏み込んだ。学校と言ってもコミュニティ内のテイマー達を束ねる事務所やモンスター達を世話する牧場と牧舎などのテイマー達の総本山とも言うべき領土内に建てられたプロテイマー直轄の、養成施設である。すべてのプロテイマーがコミュニティ毎の直轄の学校の出身である。
「おう、ツナも今日からテイマーの仲間入りか!」後ろから声をかけられ振り返る。
「リンドさん!久しぶりですね!」
緊張していたセツナは馴染みある声に安堵した。
リンド・ゼロスティ。セツナが尊敬するもう一人のテイマーであり、家が近所でありセツナが小さいときからよく遊んでもらっていたものである。セツナとは6才差で現在22才であり次期ケセド代表と名高い頼れるセツナの兄貴分でもあった。
「最近忙しくてな。ツナもプロになったら忙しくなるぞ?」
「はい、望むところです!」
その時リンドの携帯が鳴る。
「すまねぇな、ツナ。また仕事の呼び出しらしい。」
「いえ、忙しいのに時間使わせちゃってすいません。」
「そう言うな。俺だってツナと話していたいんだ。じゃあ、またな。」
そう言ってリンドは去っていった。セツナはその姿を見て、やっぱりリンドさんは忙しくても気遣いを忘れない人だと感じた。テイマーとしてだけでなく人として尊敬していた。
立ち去るリンドを見送り、セツナは学舎へと入っていった。
To be continued…
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また、文法がおかしい、小説としてこうあるのはおかしい、という指摘があれば直していきたいと思ってますのでどんどんお願いします。
読みやすさを意識してそうしてるので空行に関しては指摘されても直しません。
ヴクブ・カキシュはかるたが考えた名前ではありません。