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紅のけものとあかつきの君
大事そうに 抱きしめた包みを、そっと 友の胸に 託して囁く。
ー頼んだぞ。
こちらが落ち着いたら、必ず迎えに行く。
どうか それまで・・・
ー合点承知!!
ほいじゃ ちょっくら ひとっとびしてくるだわさ~
シュルン。
あっという間に 消えてしまった。
残像を追うにも 残された時間は 今はない。
最愛の女性が まさに 戦っているその瞬間、すぐにでも 戻らなければならない。
「これで最後。勝利すれば、夢が叶うわ!」
出産のため、機会を逃してしまい 故国の統一という悲願が 遅れてしまった。
ー今 行く!
それまで 持ちこたえてくれ。
ひと形から獣形にもどると、紅の疾風は 大地を 駆け抜けていった。
ーはあああ~、置いてきた場所を 忘れただとおお!!!!
クロル、てめえ 何冗談こいてるんだ!!
あれほど 念をおしたはずだぞ!
ーめんごお、めんごお、友よ!
心配ごよう、待ってたら きっとあえる♡
だから
ばちこおおおんん。
ーごようじゃない、無用だ。
思いっきりはたいたが、愛娘の行方は 依然と不明であった。
こうして フィラリエラの さすらいの旅が 始まったのである。