囮、そして変革
「な、何?今、何が叫んだの⁉︎怖いんだけど!」
花崎が開口一番に叫んだ直後、そのナニカが目の前その姿を現した。一同に緊張が走る、
「………そんな、何故。ヤツがここに?」
そのナニカは体長が3mはくだらない灰色の引き締まった体、鈍く光る馬鹿でかい包丁、黒ずんだ大きな目玉、何もかも噛み砕けそうな牙。
そのどれもがさっきまで相手にしていた奴らとは格が全然違う事だけが俺たちには理解できた。
部隊長は、いや違う。部隊長だけが、顔が真っ青になり冷や汗をダラダラと流して言葉を吐いた。
恐る様に、怯える様に。その表情は驚愕と恐怖に染まっていた。
「……最低でもLevel60を超えると言われているオーガ・ヴァジュラ。私では手も、足も……!」
………は?それ、護衛の意味なくね?つかなんでそんな化け物が此処にいるの⁉︎
「何だよ!それ⁉︎ふざけんなよ、お前らが安全にLevel上げができるっていうからわざわざ出向いたのに!ふざけんな!」
蓮は完全にパニックになり周りにあたり散らしていた、他の人もそれぞれ絶望的な顔をしていた。
俺でもわかる。アレは絶対にヤバイ。
殺される、俺たちが束になってかかっても勝ち目はないだろう。
ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ。焦りだけが頭を支配してまともな思考が出来ない。何とか打開策を考えなければ死ぬだけだ………れ、ん?
パニックに陥っていた蓮が、俺を見る。嫌な予感しかしない。
やめろよ。その目は、その目をしたお前はいつも周りに、他人に、不幸を与える目だ。
その目を今、俺に向けるなよ…
さっきまで、部隊長を罵っていた口をニヤリと悪魔の様に嗤い、こう告げた。
「八坂、お前囮になれよ?お前なら適任だろ?」
……………は?何を、何を言ってるんだ、コイツは。こんな状況で、こんな真面目な時に。
「お前なら、あーー何だっけ?無我の何ちゃらで痛覚遮断できるだろ、ならお前が適任じゃねぇか。良かったな、お前が役に立つ時が来たぞ」
「な、何を言っているのですか⁉︎そんなこ「ーーーなぁ、部隊長さん」
部隊長が慌てて否定しようとするが、すぐに蓮が遮る。そして、
『………なら、お前が囮になってくれるのか?』
小声で、そう言った、そして口を閉じさせた。
おい、ふざけんなよ?何で黙るんだよ?
否定しないのかよ?
おい、ふざけんなよ?何で誰も何も言わないんだよ?
おい、ふざけんなよ?何で俺に手を向けるんだよ?蓮
おい、ふざけんな……ドスッ!
「が、ははぁ、な、にすんだ。」
痛い、痛い、痛い。スキルを使って俺を攻撃しやがった。何で、何で何で何で何で⁉︎
「悪いな、俺たちの為に死んでくれ。」
そう、言い残して彼らは去っていった。
手を伸ばすが、振り向かない。
常人よりも高いステータスを持つ彼らには俺は追いつかない、追いつけない。
そして、そんな奴らでも逃げた相手が今目の前にいる。心なしか俺を見て、嗤った様に感じた。
ソレを見て、思った事がある。
ーーーーーーー何で?
何でこんな目に合わないといけないの?
何で俺はこんなにも弱いんだ?
何でみんな俺にそんな目を向けるんだ?
何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?
何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?
何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?
記憶が、今までの記憶を探りながら、疑問を解消する。何故?何故?何故?何故?何故?何故?
何故?何故?何故?何故?な……ぜ?
ーーーーぁ。あぁ。そっか、そうだよ。何でって馬鹿だろ俺、そんなの決まってるじゃないか。
てか、簡単すぎて気づかなかったわ。
ヤツが包丁を振り上げるのを尻目に、一つの結論が出た。明確でシンプルな、たった一つの答え。
ーーーーーーーー人間ってクズだ。
その答えを出した瞬間、俺のココロが音を立てて崩壊し始めた……そして今までの俺をひたすら否定し始める。
この世界の人を守る?助ける?……何考えてるんだよ、俺。こんなヤツら俺にとって何の価値もないだろ、それなのに………狂ってんな前の俺
そして、その思いを認めてしまうとこんな考えすら浮かんで来てしまう。
ーーーーーーーあぁ、アイツらに復讐したら、アイツらを劣等としてゴミを見るような目を向けられたら、アイツらにひたすら赦しをこわせたら
どんなに気持ちがいいんだろうか?知りたいな?
なら、生きないと。
肉壁と言われたとしても、役立たずと罵られたとしても、俺に何の力も無くても、生きる。
だってーーークズを甚振らないとな?
俺は笑った。今までで一番、最高にココロから笑顔を浮かべた、楽しい、楽しい楽しい楽しい
たとえ、ココロがコワレテイタトシテモな




