凛のやらかし
ーー高校の昼休み。
『ヤバイヤバイ!私の正体バレそうなんだけど!』
オイ。
凛から電話がかかってきたから何かと思えば。
「一体何やらかしたんだよ。そうそうバレる事なんてねーだろ」
『あ、いやその、うーんと……』
「早く言えよ」
俺はすかさずツッコむ。
『体育のバレーに熱中し過ぎてジャンプし過ぎちゃって』
「アホか!」
凛の言葉を遮り叫ぶ。
「どした?」
「いきなり叫んで」
近くにいた俺と同じくノー勉常習犯の武志と司に聞かれる。
「あ、いや、なんでもねぇ」
言いながら、人気のない場所に移動する。
「ったく……なんでそんな事したんだよ」
『うぅ……だって勝つか負けるかギリギリだったんだもん……』
「知るかよ。正体バレるくらいだったら負けてもいいじゃねーか」
『良くないよ!あぁ、お兄ちゃんに聞いた私がバカだったー……』
「バカって事は自覚してんのな。その前が聞き捨てならねーが」
『どうしようどうしよう……お兄ちゃんなら狡っからい作戦思いつくでしょ?』
完全に無視された。
「お前は俺の事をなんだと思ってんだ」
俺は普通に毒づく。
『鬼畜でマヌケでセコくてロリコンで狡っからい人』
「よしお前家帰ったら覚えとけ」
『ああもうそれどころじゃないよ!』
「知るか。お前で解決しろ」
『えっ!?ちょ、ひど』
ツー、ツー……
何となくムカついた俺は電話を切る。が。
プルルルルルル……。
拒否と……。
……。
プルルルルルル……。
……拒否。
プルルルルルル……。
「うっせえ!!典型的な嫌がらせすんじゃねぇ!」
『お兄ちゃんが出てくれないのが悪いんじゃん!』
しまった。出ちゃった。
「はいはい。じゃ解決すればいいんでしょ」
『おお!解決してくれるの!?』
凛の声が途端に明るくなる。俺の気持ちとは対照的に。
「しゃーないな。んで?今何処?」
『トイレの個室に隠れさせて頂いております』
「うん。これまた典型的」
『しょうがないじゃん!他に隠れるとこないんだもん!』
「もう隠れなくていい!よし、もう正体について何聞かれてもシラを切れ!分かったか!?」
『うん!分かった!!』
ツー、ツー……。
……。
あの要件狐が!!
「ただい」
「良かったーー!!ギリギリバレなくてすんだ!助かったよ!」
「うるさい。それよりお前あの時言ったこと覚えてるよな?」
「え、あぁ、それは、その……」
「よし。今から表出ろ。シメてやる」
「わー!ちょ、私が悪かったから!許して!許してよ!」
「それくらいで俺が許すか!このやろ!」
腹を思っきり殴る。
ドサッ……。
「……。」
気絶早っ!
……。
放置確定。
放っておくか。