妹の生まれた時
「お兄ちゃーーん!ご飯だよーー!」
「おー」
テストのおかげでふてくされてゲームをしていた俺は生返事を返す。
「ご飯冷めちゃうよー!」
「おー」
……。
遂には凛は俺の部屋までやってきて。
「ねぇ、聞いてる……?」
「おー」
……。
「1+1=?」
「おー」
「……『狐火』っ!」
「熱づっ!熱ちちちちっ!!」
「あっはははは!あはははははは!」
狐火で耳を炙られた。
「いきなり何すんだよ!」
「呼んでも来ないからー、こうするしかないじゃーん?」
じゃん?って言われても。
「もっと他に方法あるだろ!?」
「無い!」
断言すな。
「はーぁ。もう、メシ食いにいくぞ。」
「うん!」
立場逆転。
「あのさーお母さん、今日学校でさー!なんか『自分が生まれた時の事親に聞いて来いー!』だってさ。小学生みたい。お兄ちゃんもお母さんもそう思うでしょ!?」
「いや、俺も中学生の時それやったぜ?家庭科で。ったく、そんな事聞いて何になるんだっちゅー話だよな。」
「ねー。」
ホント何になるんだろう。
「あはは。いやー、凛、あんたが生まれた時は相当驚いたわよ!?」
「なんで!?」
お前は自分が妖狐という事をもう少し自覚しろ。
「だって、生まれた時から髪の毛ふさふさで、うちみんな黒髪なのにあんただけ、茶髪じゃん?」
「あ、確かに。」
今、気付いたの!?
「しかも目玉が黄金色と来たもんだからねぇ。」
「あ、確かに。」
それも今!?
「まぁ、けもみみが生えてきたのは、生後……3週間くらいだったかな?」
そんな後だったんだ。
「へぇー!耳の話は意外だなー!最初っから付いてたのかと。」
お前の耳は付いてんじゃねぇ。生えてんだ。
耳はお前含め全生物共通で『生えてる』んだよ。
でも、後から生えてきたってのは俺も知らなかった。
「まぁ、私たちが気づかなかっただけかもね。」
ズコッッ……。
俺と凛は同時にイスから転げ落ちる。
「あっはは!2人で漫才師になったら?きっと売れるわよ!?」
「「絶対に嫌だ!!」」
佐藤家の食卓は今日も賑やかである。
次の日。
「うわー!遅刻遅刻!!」
「うっせーな凛。少し落ち着けよ。」
「だって遅刻ギリなんだもん!」
「泣きそうになるな、気持ち悪い。」
「何よ!!」
「喧嘩してないで早く学校行って来いよ!」
「「父さんうるさい!」」
「はい……」
「「打たれ弱っ!!」」
そんないつも通りの朝で。