肆話目
今回の仕事は、超ビッグ企業の専務の暗殺だ。
専務は、多くの子供たちに虐待の限りを尽くしていたらしい。
実は言うと俺はスナイパーライフルは好きなんだけど暗殺がすこぶる苦手だ。
何よりターゲットとの距離が異常なほど遠い。そのせいで弾がうまくターゲットに着弾しない。
もししたとしても一発では死なないのだ。そのあと、弾が飛んできた方向などから俺の位置を
特定され逃げるのが難しくなる。
今回このビッグ企業のビルから約2キロ離れたアパートの屋上にスタンバイしている。
黒のショルダーバッグから今回使用する仕事道具、「DSR-1」のカスタム版を取り出す。
五十倍スコープにショックアブソーバーを付けてもらった。
さらにおまけとして装弾数を9発まで増やしてくれた。
もちろんこのカスタムはカズが用意してくれたものだ。
銃をセットしてターゲットを探す。
....いた。一度思いっきり息を吸い込み、一気に吐き出す。
やはりプロの殺し屋ともいえども緊張するものだ。なにせ俺だって一人の人間なのだから。
「動くな...」背後から女の声が聞こえる。
.....ッ!
何てことだ。別の暗殺者がいたのか?もしくは警官か?どちらにしても俺は終わりだ。
頭にごりごりと鉄の物体が押し付けられる。
もう、死を覚悟した。ゆっくりと立ち上がり手を挙げる。
パンッ!
「いてっ!」
「えへへへ~。びっくりした~?」
どうやら俺は生きてるらしい。体の力が一気に抜け落ちる。膝から崩れ落ちた。
「え!?大丈夫?」
目をゆっくりと開けると謎の女が顔を覗き込んでいた。
え?小学せ....いや、中学生か?制服がまだ真新しい。
一体こいつはなんだ?だがその女子中学生の右手にはしっかりと銃が握られている。
実物の銃と比べるとかなりちっさい。どうやら百均のエアガンだろう。
「いつまで寝ころんでるの?」
ニヤニヤしながら付け加えてきた。
「大の大人が。」
俺は、そそくさと立ち上がり服の砂埃を払った。多分その時顔が真っ赤だったのだろう。
女子中学生はさらにニヤニヤしていた。
「ここでなにしてたの?」
「いや、ターゲットを..ハッ!」
なにを言ってるんだ俺は!馬鹿なのか?なぜばらそうとしたんだ。
いや、だがターゲットまで言ってしまった。
もう隠し事はできない。小さいころから嘘をつくのは苦手なのだ。
「あの..俺は殺し屋やってましてね..はい..」
もう警察に通報されてもいいや。という気持ちが芽生えた瞬間から言葉は口をついてでた。
「ふーん...え!?」
終わった。そりゃ目の前にいる男が銃を覗き込んで「殺し屋です」って言ってるんだ。
誰でも頭おかしいやつか、もしくはマジもんかのどっちかだろう。
しかし女子中学生の反応は意外なものだった。おびえたり何もせずに
「殺し屋!?じゃあ、お願い!殺しの技術を教えて!」
は?一体なにを言ってるんだ、このキチガイは?
「私、将来漫画家になろうとおもうの。で今親の反対を押し切って漫画の専門学校に居るんだけど..
実は今年一年かけて仕上げなきゃいけない宿題があって」
まったく耳に入ってこない。
「それの題材が『殺し屋』なの!」
意味がわかりませんがな...つーか先生頭逝ってんじゃねえの?
「中学生の宿題が殺し屋ねぇ..」
「だから参考資料のためにアナタのもとで一年間修業させてほしいの!お願い!」
マジで嫌なんだけど...そう答えようとした瞬間、
「そうしたら警察にもいわないから!」
今わかった。こいつ、ゲスだ。
「まあ、いいが..」
「本当!?ありがとう!私の名前は『神崎 ミラ』。ヨロシクね!」
「俺の名前は、『海月 ケント』。まあヨロシク..」
適当に自己紹介を済ませ仕事の早く戻らなければ...
「今仕事だから後でいい?」軽くじだんだを踏みながら早口に言った。
「え!?今仕事なの!?じゃあ、私にやらして!」
は?何を言ってんだコイツは?(2回目)そういうと神崎はエアガンを構える。
「無理無理。ここからあそこまで2キロあんだぜ?」
軽く笑いながら言う。すると少し怒り気味になり
「当てれるもん!」
そう言い張った。肉眼では、どのビルかもわからない様な場所だぞ。
しかもエアガンとか、何をやろうとしてるんだ。
「じゃあ、見てやるからやってみろよ。」
そういい俺は双眼鏡でターゲット付近を見るようにした。
まあ結局無理だろうが。
神崎はまるでターゲットが見えてるかのごとくしっかり狙いを定めエアガンの引き金を引いた。
パンッ!
かわいた銃声があたりに響く。俺はニヤニヤしながら見てると、
なんかターゲットの部屋の窓にBB弾らしき黄色い物体が当たって落ちて行った。
は?俺は唖然として少し口を開けた状態で、神崎の方に目を向けた。
「当たったでしょ?」
誇らしげに胸を張りながら言い張る。というかあたったのが見えたのか?
その疑問を素直に彼女にあてると
「うん?見えてたよ?」
一体どんな視力してんだコイツ..しかもそのエアガンもどんだけ飛ぶんだよ。
とりあえず俺も仕事を全うしなければヤバい。
「おい!神崎!目を閉じてろ!」
「上じゃなくて下で呼んでよ~」そういいながら神崎は目を閉じた。
俺はもう一度ゆっくりと深呼吸した後、引き金に力を入れた。
プシュッ!
ガスが漏れたような音が鳴る。人の死は見届けないのが俺の主義だ。
銃を分解している途中、向こう側から女性の叫び声が聞こえた。
多分ターゲットの死体を見つけたのだろう。
「よし!ミラもういいぞ。目を開けても」
そういい、銃をショルダーバッグの中に慎重に入れる。
「じゃあな。」
俺はそう言い立ち去ろうとしたとき
「ああー!殺し屋だー!」
ッ!?
大声で言い出した。すぐ口をおさえ
「教えてやるから言うなつってんだろ!」
ひそひそと耳元で小さいが怒りっぽく言い放つ。
すると神崎もにこっと笑い、
「じゃあ、あなたの家に居候させて」
「は?またわけのわからんことを..」おれは唖然とした。
「それじゃ警察に通報しまーす。」
それだけは絶対に避けなければ。「わかった!わかった!んじゃ車に乗るぞ!」
「わーい!」
神崎は、階段を駆け下りて行った。
「めんどくさい一年になりそうだ...」
俺はため息をついて階段を一段一段ゆっくりと降りた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
いまさらですが主人公は2人ともです




