第一話
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この作品は大筋が作者の頭にあるだけでプロットはありません。いきあたりばったりです。勢いで進みます。
それでもいいよというかたはスクロールを続けてください。
ちゃりん
小さな金属音を響かせ、五円玉が賽銭箱に飲み込まれた。五円玉を投げ入れた男は満足げに頷き両手を合わせ、願いを飛ばす。
『金持ちになれますように』
***
「……はぁ」
敷き詰められた庭石の上を軽快なステップで去っていく男の後ろ姿を眺めながら、ため息を吐く。
「五時間粘って初めての参拝者があんなのって……」
下心の塊じゃないか。
喉まで出かかった言葉を飲み込み、腰かけていた拝殿の屋根から庭に飛び降りる。
だいたい、どうしてこんなボロい神社の担当にならにゃならんのか。私はまだ神社をまるまる一つ任されるような人材じゃないでしょうに。私より優れた人材なんて、上にも同級生にも有り余るほど居るだろ。
いまさら言ったところでどうにもならないことを考えながら、握りしめていたすべての元凶といえる一枚の紙切れを見る。
――――――
辞令
樋野灯 殿
2012年12月11日をもって第一界□□群太陽系地球日本国犬上県日下市日下町日下神社勤務を命ずる。
2012年12月10日
印
――――――
これが12日10日の午後8時に私室の机の上に突然現れた。
この紙を発見した私は、なんのこっちゃわからないまま、とりあえず大急ぎで準備を終えてこの神社にやって来たのだ。しかも、4時間で面倒な手続きやら何やらを終わらせたため、この紙を見つけてから一睡もしていない。
「あれだけ急いで来たのに、参拝者があんなの一人ってどゆこと」
顔を上げる。くるりと周りを見回せば、苔の生えた灯篭や耳の折れた狛犬が陰鬱な雰囲気を漂わせている。背後には外れかけの鈴が二つぶら下がっており、賽銭箱も所々シロアリに食われたのかボロボロだった。
前の担当はどうしてこんなになるまでほったらかしたのか。こんな墓場みたいな雰囲気の神社に参拝者が来るわけないでしょうに。
やっぱり掃除しないといけないのかなー。こういう雑用?って神主さんとか巫女さんがやるんじゃないのかね。
「……眠い」
そうつぶやき、あくびを一つ。五時間前から溜まり続けている睡眠欲が、現実逃避気味の理性を打ち負かさんと攻勢に出たのだ。さすが人間の三大欲求に数えられるだけあり、睡眠欲が瞬く間に理性を飲み込んだ。
「よし、寝よう」
元々だらけ癖のある私は、特に何も気負うことなく即決した。
拝殿の瓦の上に飛び乗って横になる。手入れがされていないらしい鎮守の森に日光を遮られて薄暗いのも気にならず、すぐに眠ることができた。
感想待ってます。
2014.2/1 辞令の内容を修正