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アルボレラ~探索者達の夢物語~  作者: 山暑雨
探索者の朝は早い
6/6

第六話 「決意を固める第三王女」─下─

─△─△


場面転換の記号。




日本語が登場人物の母国語。外来語が登場人物の外来語。



 レイラと言い争い、会話もなく、早々に布団に入ったミラ。


 光が微睡み、いつの間にか見ていたのは、瞼の裏側だった。


 ミラは、夢を見る。

 それは、出発前夜、〈ジェライル〉に旅立つ直前のこと。


 夢の中。

 ミラとレイラは、王城内のミラの自室で話していた。ミラは、大きな天蓋付きのベッドを椅子にして、側には、レイラが立っていた。



「姫様、良いのですか?あるとは限らぬ霊薬を探すより、陛下、御父上のお側にいたほうが」


「いいのよ、レイラ。私は、お父様が弱っていくのを見ているだけは、嫌よ。だから、か細い糸でも、しがみついて、必ずお父様を助けてみせる」


「……それは、ご兄姉の為ですか」


「…そうね、お父様さえ元気になれば、と思っていることは、否定出来ないわ。幻滅したかしら?」


「私は、姫様が陛下の身を案じていることも分かっています。打算だけじゃないことを知っています。あまり、自身を卑下なさらなくても、」


「ふふ、レイラの前じゃ格好も付けられないわね。それでもね、私は、止めなきゃ行けなかった、エマ姉様が死んでしまうことも無かった。だから、」



 その時、ミラの部屋の戸をノックする音。


 入ってきたのは、第三王女つきの侍女。ミラに報告する。



「ミラ様、どうやら、気づかれたようです」


「もう、ですか……やはり、第二王子派閥ですか?」


「そのようです」



 侍女の報告を聞き、レイラがミラに忠言する。



「もう、王城は王家内乱の渦中、姫様、彼らの兇刃が貴方にふるわれる前に出立すべきかと」


「そうね、手はず通りに、」



 侍女にミラは、目配せをする。侍女が応える。



「はい、私は、陛下のお側に、」


「頼むわね、私が言えることではないけれど、無茶は禁物よ」


「分かっています、姫様のお戻りを生きてお待ちしなければいけないのですから。準備は、すんでおります。あとは、頼みます。レイラ」


「任された、姫様は、必ず。」





 ミラとレイラは、王城を立つ。目的地は、〈ジェライル〉、「霊薬」が出土した探索者の街。


 ミラは、決意を固める。旅の果てに死が待っていようとも、父を国を救うのだと。





─△─△





「姫様、起きてください」


「ん、んー、あさ?」


「買い出しに行かなくては、ダンジョン探索の決行日は、明日なんですよ」



 ミラは背伸びをして、眠気を飛ばす。レイラは、もう支度が終わっていた。

 彼女は目をこすりながら、ベッドから飛び降り、着替えを始める。



「んしょ、それで、どこに買い出しに行くのかしら?」


「一応、良い店は、ルイドールからの手紙、というより指示書ですね、それに書いてありました。まずは、朝市ですね」


「ふーん」



 着替えを終え、手櫛で髪をとかしているミラは、気持ちを作り、いざ朝市へ。





─△─△





 朝市、ダンジョン広場手前の屋台通り。


 屋台の一部は、貸出ているもので、朝は雑貨屋で夜は飯屋と時間で、その様相を変える。

 他にも、道に露店を開いている。


 探索道具や保存食、行商の交易品から二束三文で売っている未鑑定の異界産素材ダンジョンドロップまで、何でも揃う露店市(マーケット)


 しかし、その乱雑さは、異界ダンジョンと見紛うほど。

 気分は、探索前の大冒険だ。



「凄いわね!突然、知ってはいたけれど実際に来ると感動するわ!」


「姫様、ここで買うのは、バックパック、楔付きのロープ、ナイフ、保存食、布袋やボロ布もあると良いとも書いてますね」


「結構、物入りね、それじゃ、早速探しましょう!」



 少し経ち、ミラとレイラは、バックパックの露店で店主と口論になっていた。



「あのネ、これは、ケロッピってモンスターの素材だからネ、防水で高いンだヨ!」


「店主!流石に無いわ!似たようなの、あっちで500ルボルで売ってたわよ!」


「知らないヨ!文句アルならソッチ買えばいいネ!」


「ひ、姫様、流石に…」




 レイラの制止など聞こえないミラは口撃を続ける。



「あら、そう、所々痛んでいるし…800ルボル、これがね…大声だしてもいいのよ?」


「ハッ!素人は黙ってるネ!」


「あらあら、この縫い目…水が染みそうね、防水が売りなんでしょう?300ルボルでどうかしら?」



 ミラは、商品を持ち上げて、縫い目を指さしながら、値下げ交渉に打って出た。



「そ、それくらい、大丈夫ネ、糸だって防水で問題ないネ!まけても、700ルボルが限界ヨ!」


「ふふ、店主さん知ってるかしら?ケロッピの革は、手触りで防水力が分かるのよ?向こうのお店とは……あらあら、もしかして、これを作ったのは新米職人さんかしら?」


「ヒュ、」


「450ルボルで適正ではなくて?」



 冷ややかな目線が店主を貫く。


 店主は、素人だと思っていた客に気圧され、そして……心が折れる。



「ま、まいど」




 ミラは、450ルボルを手渡し、商品を受け取る。


 店を去る背中に恨みがましい目線を向けるも、店主は、すぐに気持ちを改め、次の客を待つのだった。





─△─△





 露店での買いだしを終えて、路地に入り、表とは違う様相の「道具屋通り」に訪れた二人。


 レイラは、ミラに先ほどのことを問い詰めていた。



「姫様!わざわざ値切りをしたいために、諍いを起こさないでください!」


「人聞きが悪いわね」


「姫様の目利きの腕は知っております……面白そうと思ったのですよね?」


「……そんなことないわ、500ルボルのバックパックも大差なかったのだから、安く値切れる方を買ったのよ…………ぼろいわね」


「姫様、喋りすぎです、顔に出てますよ」


「む、それにしても、荒さもあるけど良いバックパックよ、将来有望ね」



 二人は、歩きながら話していた。話題は、新進気鋭な新米職人のこと、バックパックから話が広がる。


 辺りは、裏道通りで、人気も少ない。目的地の「道具屋」までもう少し。

 ルイドールからの指示書に同封された地図を頼りに、道なりに進み、暗がりを渡り、角を曲がって、もうすぐ目の前、鼻の先、






「やぁ~うれしいなぁ、本人も喜ぶよー師匠の僕も鼻が高いなぁ」



 意識の外、背後から声をかける腰まである長髪の美人が話かけてきた。


 瞬く間、レイラは、懐に隠したナイフを握り、臨戦態勢。だが、敵意を感じない。拳を解いて、美人に尋ねる。



「貴方は…?」


「んー僕はね、そこの錬金術師だよ、やーやっぱり、王族は目の付け所が違うんだね!」



 シュ、と風切り音。



 美人の喉元に刃を立てるレイラ。

 レイラが訊く。




「貴様、誰の手先だ」


「ま、まってまって、ルイドールから聞いてないの!?」


「レイラ、おそらく、目的の「道具屋」の方ではないかしら?非力そうな女性をわざわざ、差し向ける訳もないでしょうし」



 突然の静寂。少し間が空いて、美人は言い放った。




「へ?僕、男だよ?」



「「は?」」




※屋台通り


 屋台を購入して、店をひらいている者もいれば、屋台を借りて、店をひらいている者もいる。貸出ている屋台は、朝市では、大抵、雑貨屋になっている。

 昼、夜は、飲み屋や飲食店。



※裏道通り


 メインストリートがダンジョンに向かって真っ直ぐ街を貫いている〈ジェライル〉は、脇道にそれるとアングラな所や、風俗店、専門店がある。



露店市マーケット


 朝市のこと。ひたすら露店の数が多い。メインストリートが人混みと露店で通れなくなるほど。決して、メインストリートが細い訳ではない。なんなら、馬車が二台並んで通れる位ある。

 乱雑した露店は、やはり、掘り出し物も多い。



異界産素材ダンジョンドロップ


 字面のまんま。異界産の摩訶不思議な力を秘めた素材。魔物モンスターから剥ぎ取った素材や鉱物、薬草、等々。異界で採れたら名乗れる。



※未鑑定


 素材は、基本、鑑定して効果が判明している物がほとんどだ。

 この「鑑定」というのは、確定の意味合いも持つ。未鑑定は、見た目で判断した素材とは、違うかもしれないリスクを持つ。

 もう一つ、文字通りの未鑑定、全く新しい素材も指す。新素材の鑑定などもギルドがしてくれるが、お金がかかる。二束三文で売ってしまおうという算段。




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