表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルボレラ~探索者達の夢物語~  作者: 山暑雨
探索者の朝は早い
5/6

第五話 「決意を固める第三王女」─上─

─△─△

場面転換の記号。


日本語が登場人物の母国語。外来語が登場人物の外来語。



 私は、バードリア王国第三王女、果たさなければならない義務がある。

 民を守ること、絶対に疎かにしてはいけない王族の使命。


 始まりは、お父様が倒れられたことだった。病、それも取り返しのつかない重い病。

 私は泣き腫らして、悲しんだのだ。お姉様やお兄様、弟妹達も悲しんでいた。


 けど、国王不在では、バードリアは、滅んでしまう。

 最初は、一番上のお兄様、お姉様から後継者を決めようという話だった。争うこともなく、適任だろうと、私達、王位継承権を持つ他の兄弟姉妹は、納得した。


 でも、争ったのは、指名された兄と姉だった。


 話し合いで決めようと、国の政策や民への配慮など色々な議論をして、互いにどちらがより良い国づくりが出来るのか、当事者間で適任を選ぼうとしていた。

 次第に白熱し、弁論よりも罵倒が、罵倒よりも侮辱が少しずつ増えていった。

 そのうちに、憎しみが高まり、暗殺者を互いに送り込むまでになった。


 お父様が病床に伏してから、一月も立っていないのに。皆、おかしくなっていたのか。


 今にして思えば、絶対的な正解がないような議論では、こうなるのは、必然だった。




─△─△




 ジグの屋台で、ルイドールと別れ、ミラとレイラは、宿泊している「満開亭」の自室に帰ってきた。

 ミラは、部屋に入るなりベッドに飛び込んだ。後に入って、戸を閉めるレイラに言う。


「レイラ、先にお風呂に入りましょ」


「そうですね、しかし、姫様、大丈夫ですか。慣れないお酒も飲んでいましたし、酔っているときの風呂は、危険だと聞いた事がありますが」


「大丈夫よ、そこまで飲んでいないわ、それにレイラもいるんだから」


「ですが、姫様、」


「姫様姫様うるさいわよぉ、あのね、言っているでしょう?姫様って言ってたら身元がバレてしまうって、名前で呼びなさい」


「い、いや、その私には、」


「はっきりしないわね、」


「姫様!?」



 ベッドから飛び起きたミラは、素早くレイラの背後をとり、レイラをベッドに押し倒す。

 主人に手を出せないレイラは、為す術がない。

 ミラは、レイラに顔を近づける。鼻が触れあう距離。

 レイラは、思わず目を逸らす。赤面しミラを直視出来ない。



「ふふ、可愛いわ、そんなに恥ずかしいのかしら?顔まで赤くして」


「ひ、姫様、お戯れが過ぎます!そ、それに女です!私は!」


「ふーーん、嫌いなの?私のこと、名前でも呼んでくれないし」


「へ、いや、そんな事は」



 ミラの手がレイラの腰の線をなぞる。


 甘い吐息がレイラの耳をくすぐり、その声が脳を揺さぶる。


 一秒が遅い、淫靡な空間。


 手指が絡み、唇が触れそうになる。


 レイラの頭の中を淫らに染められそうになった、


 その瞬間。



「はっ、ひ、姫様!使われましたね!魅了を!」


「フフフ、あーあ、バレちゃった、もう少しだったのになぁ」



 ミラの表情が崩れ、子供のような笑顔を浮かべる。対して、レイラは、険しい顔で叱りつける。



「姫様!ダメです!安易に使われるべきではないですと常々、」


「えーー?さっきまで「ひ、姫様、お戯れが過ぎます」って、凄くしおらしかったにぃ、あー可愛かったなぁ!」


「そ、それは、もういいでしょう!風呂に行きますよ!」




─△─△




 風呂上がり、宿の廊下をを寝間着で歩いているミラとレイラ。

 話題は、この宿のこと。



「ふー、いい湯だったわね」


「やはり、ダンジョンのお陰なんでしょう、そこまでランクの高くない宿でも大浴場があるのですから、驚きました」


「そうね、ダンジョンから、水を引いてるらしいわね」


「そうなのですか、我が国にもダンジョンがあれば良かったのですが」


「仕方ないわ、ここで、〈ジェライル〉で見つけられれば良いのよ、お父様を助ける「霊薬」が」



 話している内に、部屋に戻ってきた二人。戸を開けて中に入り、周囲を確認して戸を閉める。



「姫様」


「ええ、」



 ミラは、ルイドールから渡された封筒の封を切る。そして、中から数枚の手紙を取り出した。

 そして、ミラとレイラは、詰め寄り、内容を検める。



『さて、自己紹介をしておこうか、俺は、ルイドールだ。まぁ、先ほどまで一緒に居たはずだが。とにかく、本題に入ろう。』



 と言った、書き出しで始まり、探索に必要なもの、決行日、待ち合わせ場所が書かれていた。

 ミラは、読み進める。



『君達の目的は、「霊薬」だろう。たしかに、今、世界に3つしかない「霊薬エリクサー」は、この街、〈ジェライル〉で作られた。そう、作られたんだ。どのような噂を辿ってきたかは、分からないが「霊薬」は、ダンジョンにも〈ジェライル〉にも現存しない』



「そ、そんな、」


「いえ、レイラもう1枚あるわ、こっちに書いてある」



『だけど、運が良いことに、この街に「霊薬」が作れる人間がいる。素材も俺は、どこで手に入るか知っている。ダンジョンで手に入れる素材、それは「仙桃」と呼ばれる果実。』



「姫様、これは、」


「ええ、「仙桃」を見つければ、お父様を助ける事が出来る」


「分かりました。姫様、待っていてください。必ず、私が「仙桃」を持ち帰って、」


「なに、言ってるの、私も行くわ」


「姫様、こればかりは、言うことを聞いてください。書かれている必要物資に、5日分の食料とあります。日を跨いだ探索が安全なはずは、ありません」


「それは!あなたもよ!」


「姫様!」



 声を荒げるレイラ。肩をふるわせ、ミラは、泣き出してしまう。


 レイラは、声を静め、慈愛を込めて言う。



「必ず、戻ってきますから」



 しかし、ミラは、引かない。


 後悔があった、彼女は、兄弟姉妹達を止められたのではないかと、ずっと考えていた。


 彼女達がこの街に来たのは一週間前。王城に残った協力者が父の容態を魔導具で知らせてくる。容態は、芳しくない。


 父のこと、後継者争いのこと、解決の希望が見えた。

 ここまで、付き合わせたレイラだけに背負わせるなどミラは、第三王女は、許さない。



「私も行く、私は、あなただけに背負わせない。あなたを信頼している、けれど、これは、私の、第三王女としての決意!」


「……無礼を承知で言います。姫様、あなたは、足手まといだ。」


「切り捨てられる覚悟は、ある。」



 レイラは、彼女の決意が尋常なものでないことを知った、否、分からされた。

 騎士たる彼女は、その決意に覚えがある。

 レイラは、ミラを自分と重ねてしまった。そして、何も言えなかった。



※仙桃

 果実。神秘が籠もった、霊薬の材料。


※魅了

 ミラの能力。詳細不明。


霊薬エリクサー

 万能薬。病、身体欠損、あらゆる害を打ち払う。

 世界樹が生み出したとされているが、どうやら、人工的に作られたらしい。

 世界に、3つしかない。しかし、そのうち、2つは、行方知れず。

 まさに、お伽噺の産物。霊薬など存在しないと、嘘であると言う者も多い。

 〈ジェライル〉は、霊薬を発見したと言われるダンジョンがある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ