第四話 「探索者に来訪者」─下─
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場面転換の記号。
日本語が主人公の母国語。外来語が主人公からみた外来語。
ここは、ジグの屋台。ギルドから出た足で、ルイドールが飲みに来ていた。
ルイドールは、今日の出来事を店主のジグに話している。どうやら、既に酔っているようだ。
「はは!そうか、そりゃ大変だ、売り上げに貢献してくれよ!」
「えー、ジグさん笑い事じゃないよ、こういう良すぎる事があった時は、絶対なんかあるって」
「ルイ坊なら大丈夫だろ、なんだかんだ、この街で10年は、探索者やってるんだからな」
「えー、凄い褒めてくるなぁ、うれしいぃ」
「だから、俺の店にも10年くらいか?長く通ったもんだなぁ、俺もすっかり貫禄が出たかな?」
「出てる、出てる、染み出してるよ、よ!大将!」
二人は顔を見合わせる。
「「ははは!」」
二人が大笑いしてると、ルイドールの後ろから、
「あのー、二人なんですけど、入れます?」
「お、好きなとこ座りな」
女性客が二人やって来た。
短髪で凜とした顔立ちの美人と長髪で少し柔らかい笑みを浮かべる品がある美人。
衣服だけで、鎧なども着ていない女性達。今日は、ダンジョンに潜っていないのかと思ったルイドールだが、彼も防具の類いは、あまり着ないので人のことは言えない。
ジグの屋台は、カウンターに4席の小さい屋台だ。ルイドールは、左端に座っている。二人の女性は、一席あけて、右端に詰めて座った。
ルイドール側に座ったのは長髪の女性だ。彼女が口を開いた。
「冒険者ルイドール」
「ごめん、ジグさん俺の客みたい。」
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冒険者、それは、探索者とは違い「冒険」をするもの達、あるいは「冒険」に魅入られた者たち。
冒険者の役割は、未探索異界の調査や未知の素材の発見、世界樹の攻略だ。
探索者が仕事をするための地図などは、冒険者が調査し作成している。
しかし、冒険、未知の異界に飛び込むのは危険な行為だ。
ダンジョンの出入場の記録など管理しているギルドは、冒険者を資格制にした。
ギルド側としては、ダンジョン内での死者行方不明者を減らす目論見で、資格取得者以外の「冒険」を制限しようとしたのだ。
だが、恩恵もある。世界樹、ダンジョンの神秘を得たい金持ちや国は、多い。そんな者たちをギルドが冒険者資格を持った実力者に紹介し、スポンサー契約を結べるようにした。
他にも、各種ギルドサービスを優先して使えるようになる。
それでも、「冒険」は、人を選ばない。ギルドの努力もやむなく、資格を持たない「違法冒険者」が現れた。
恩恵は、あるが、資格取得のハードルは、高かった。訳ありのアングラな者たちは、ギルドの制止など意に介さない。「冒険」をしているかどうかは、ダンジョン外からは、分からない。ゆえに、「違法冒険者」の把握は、事実上不可能だ。
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ジグが女性達にお冷やとお通しをだす。
ルイドールは、足下のバックパックから魔導具を取り出して起動した。
「さて、何から話すかな」
「冒険者ルイドール、どうか力を貸してください」
長髪の女性が懇願する。
「「違法冒険者」って、知ってるか?」
「ええ、資格を持たない冒険者だと」
「俺は、違法冒険者でな。知ってる奴は数人の情報屋だけだ。あ、ジグさん、もう一杯」
「なんにする?」
「あー、今のと同じので」
長髪の女性は、お冷やで唇を湿らす。
ジグから受け取った酒を一口飲んで、ルイドールは、話を続ける。
「そんで、知ってる数人と仲良くなってな、ギルドにバレないように協力して貰ってる。給料も出してるぞ?」
「仲良くですか」
「そう、仲良く。情報屋を何人か経由しないと辿り着かないはずなんだが、二人組の女性が俺に辿り着いたって知らせが、昨日の夕時かな?探索終わりに入ってな」
「私達は、シールと名乗った方からここに来れば、凄腕の冒険者、「顔無し」に会えると」
「やめてくれ、その通り名ダサいだろ…」
「私達は、あなたに」
長髪の女性の言葉を遮って、ルイドールは、言い放つ。
「バードリア王国第三王女、ミラ・フォウ・バードリア王女」
「な、なぜそれを」
「流石に、危機感が無さ過ぎだな。鼻のいい情報屋なら朝飯前だよ、故郷は、後継者争いの内ゲバで死者も出たらしいなぁ」
奥に座る短髪の女性が言う。
「姫様を売るつもりか」
「あんたも知ってるよ、第三王女の守護騎士、レイラ殿?」
「…私も知っているのか」
「一度も人前に顔出したことない訳でもないんだ、自分達の知名度を侮りすぎだな」
「ハッ、その情報屋が優秀なだけだと思うが?」
「そうか?ボーナスでも出すかな」
レイラの視線が冷めていく。
ミラも険しい顔で息を吞む。
「安心しな?売りはしねぇよ。それに、あんたらの目的も知ってる、「霊薬」が欲しいんだろ?」
「それも、誰にも話していないのですが、」
ミラは、辺りを見回す。
「大丈夫だ」
そう言って、ルイドールは、ミラに起動中の魔導具を見せる。
「この魔導具「遮音結界」のおかげで話し声が周りに聞こえることはない。それに、ジグさんも口は堅い」
「…本当に、力を貸してくださるのですね」
「まぁ、報酬次第だ」
「報酬は、もちろん言い値で支払います」
「気前が良いな、ほれ、この封筒の中に色々書いてある。誰も居ないとこで読みな」
「わ、わかりました」
「あと、これだ」
ルイドールは、そう言って、薄い紙型魔導具を取り出した。
「これは…」
「魔導具「契約書」だ、1番罰則が重い、契約破ったら死ぬやつだ。約定は「俺の正体に関することを伝えることを禁ずる」、他に約定はないし、魔法で隠してもないが自由に確認していい」
「そうさせて貰う。姫様よろしいですね?」
「ええ」
レイラは、魔導具を懐から取り出した。ルーペ型の魔導具、ビグルドが使っていた鑑定用とは若干違うようだ。
魔導具「看破の目」、魔導具を通して見た世界に偽りは、ない。
「おかしいところは、ないようだな」
「いいな、信用しないのも探索者としての基本だ。俺は、あんたらの手助けはしてやるが、それだけ、案内だけだ。戦闘は苦手でね、採集専門の労働者なもんでなぁ」
ミラは、少し安堵した表情で話し始める。
「ありがとうございます」
「そんじゃ、契約だ。血判がいる」
「分かっています、レイラ」
「はい、姫様」
レイラは、懐からナイフを取り出し、差し出されたミラの手をそっとつかみ、指に刃を沿わせた。
次に、自分も同様に、二人は契約書に血で判を押した。
ルイドールが唱える。
「我、契約に従い、汝に義を貸さん、我、ゆえに汝に、約定の遵守を請う」
「はい、誓います」
次の瞬間、契約書から魔力の糸が溢れ出る。光る糸は、まるで意思を持ったように動き、3人の右手首に纏わり付く。ゆっくりと、光は手首に吸収されるように消え、やがて「契約の腕輪」と呼ばれる入れ墨になった。
「知ってるだろうが、それは、少し経てば見えなくなる」
「ええ、分かっています」
「はぁ、てことは、ルイ坊は、格好付けのために念押ししてまで、俺に屋台開けさせたのか」
「……ごめん、そのかわりさ!一杯食べるから、ほれ、二人も奢るから食べてけ」
「え、あ、じゃあお言葉に甘えて」
「私は、食べる方だぞ?」
「だ、大丈夫だ、金がいっぱい入って…あ、災難ってこれかぁ?」
「まぁ、頑張れルイ坊」
「はぁ、もう一杯」
夜も更けていく、ルイドールは、今後に頭を悩ますのだった。
※魔導具「遮音結界」
結界サイズは三段階!
本体の大きさは懐に隠せるほどの球体型!
いつでもどこでも誰とでも!
密談しよう!ワルタ印の結界魔導具!
※魔導具「契約書」
貴方は、契約書に何を選びますか?
契約とは、信頼と信用。ゆえに、安心と安全の我が社の契約書を使うべき。
契約は、汝と共に。
ビクル印の契約魔導具。
※魔導具「看破の目」
あーあ、またまた、隠し事。
そんな現状を壊すのは!
あらゆる、魔法を暴く!
マンド印のルーペ型魔導具!
※冒険者
別名、プレシャスハンター
探索者とは、別枠。
※労働者
探索者でも採集専門の者たちを指す。が、冒険者って格好いいよなと誰かが言ったから出来た別名。
公称じゃない。
ギルド「なにそれ」
他にも、魔物殺しの探索者、狩人。
依頼ばかりやってる、仕事人。
エトセトラ。




