第三話 「探索者に来訪者」─上─
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場面展開の記号。
日本語部分は、主人公の母国語。外来語は、主人公からみた外来語。
ルイドールは、あの後、昼飯を食べ帰路についた。特に問題もない道程だった。
そんな彼は、今、ダンジョンから出る異界門がある異界「休息の入口」に居た。
「あーー、やっとついたぁ。いつもより楽だったはずなんだけどなぁ、封魔石持ちのイシネズミがなぁ、精神的に疲れた」
採集品の目標金額が一つの異界で達成し、楽な探索だったが、イシネズミによる精神的な疲労で限界を迎えたルイドール。気が緩み、思わず、座り込む。
「ふぅ、、うぉ!いてぇ、しりもちついた」
バックパックに入れた採集品の重みで想像以上に勢い良く座り込んでしまい、臀部をさするルイドール。
ゆっくり息を吐いて、深く空気を吸う。深呼吸。彼は、気を持ち直した。
「あぁぁ、立てない。異界門くぐりすぎた、頭いたい。けどなぁ、もう一回くぐらないと外出られないし、うー、よし、行くぞぉ」
外だ。日は沈み掛かっていた。
一拍おいて、ルイドールは紙袋をバックパックから取り出した。
「お、おぇぇぇぇ」
おい!兄ちゃん大丈夫か!
はっは!異界門酔いか!
水いるか!
祭りの準備をしていたオヤジ達がルイドールを心配して声をかける。
ルイドールは、バックパックから手拭いを取り出して口を拭い、オヤジ達から貰った水入りコップに口をつけ、勢い良く傾けた。
「ぷはっ、ありがどう、おっさん」
「別に、これくらいは当然だ!強く生きろよ!探索者!」
胃をひっくり返して、涙目になっているルイドールは、目をこすり、大きく息を吸って、ギルドへと歩き出した。
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「あ、帰ってきた」
「もどった、もどした、つかれた、」
「はは!どうしたのよ!いつもより、疲れてるじゃない」
「わらいごとじゃなぁい、けどまぁ、戦利品もそれなり」
「見してよ、ん、へーー、凄いじゃない、頑張ったわね」
ギルドに帰ってきたルイドールにリンダがカウンターから話しかけてきた。
「よ~しよし、笑って悪かったわ、魔物でも居たの?」
「イシネズミ。雷の封魔石持ちだった」
リンダがカウンターから身を乗り出して、ルイドールの頭を撫でる。ルイドールの身長はリンダより少し高い、リンダの体勢は少し辛そうだ。
頭をくしゃくしゃに撫で回されたルイドールがリンダに言う。
「めっちゃ、周りが睨むから辞めて」
「なによ、意識してるの?かわいいわね」
「ねぇ、笑いながら言ってるから煽ってるように聞こえるんだけど」
「煽ってるわよ。まぁ、いいじゃない。もう、長く見てきて弟みたいなのよ、あんた」
「ねぇ、あつかいひどいよぉ、」
「恥ずかしがってて笑うわ」
「ねぇ!」
ルイドールは、敵わないなと思いながら、カウンターから距離をとる。離れすぎてリンダの手は届かない。リンダは渋々撫でるのを辞めた。
そして、彼は、夜になって賑わってきたギルドロビーを横目にバックパックから、鉱物を取り出し、リンダの隣にある買い取りカウンターに置いていく。
「おいおい、今日は凄い戦果だな、封魔石に空無石か!運を使い果たしたんじゃねぇか?ルイドール」
「俺もそう思う。じゃなきゃ災難の前触れだな」
「あとで、一杯奢ってくれよ、」
買い取りカウンターの受付、筋骨隆々の男性、ビグルドがルイドールに話しかける。
「って、まだなんかあるのか?」
「おう、じゃーん、」
「んだこれ、封魔石じゃねぇか?」
ルイドールは、拳ほどの大きさの鉱石を取り出した。
ビグルドは、道具入れから、鑑定用のルーペを取り出す。魔法の源である魔力の流れが見える魔導具だ。
ルーペを目に近づけて、問題の鉱石を解析する。
「んん?籠もってるだけじゃねぇな、魔力が外から流れてる……まじかよ、」
「どうだ、輝石だ、すごいだろ。イシネズミが封魔石持ちでな、変質したら輝石になったみたい」
「あぁ、イシネズミ倒して来たから疲れてたのか、倒さねぇと変質しないしな…って、んなことは、いいんだ、売るのか?」
「雷魔法は、なぁ、今のところ使う予定はないんだよな。杖も間に合ってるし、だから、売る」
「はっ!気前が良いな、取って置いても罰は当たらないだろ。少し待ってな、買い取り価格出すのに時間がかかる」
「隣の食事処で飲んでるよ、」
「あぁ、終わったら呼ぶ」
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「おーい!ルイドール!鑑定終わったぞ!」
「今、いく!」
食事処で酒を飲んでいたルイドールは、奥のカウンターから聞こえた大声の主の方に、歩いて行く。
「おう、ルイドール、腰抜かすなよ。50万ルボルだ。」
「すぅぅぅ、う、うん、だ、大丈夫、大丈夫」
「まじで、奢ってくれよ。」
「」
「おーい、だめだ、固まってらぁ。おい!起きろ!」
「夢?」
「違うぞー、よかったな、一回の探索で1年は暮らせるな」
ビグルドは、残酷な真実を告げる。
ルイドールは、大金を目の前に動揺を隠せない。
「いやだ、こわい!なにが、こんなに高いの!純度は低い輝石だったでしょ!」
「低いって言っても、〈レア〉だったしな、魔導具、杖の加工用途で売りっぱぐれることはないし、お前、他にもマナタイトやらも持ち込んだろ。量はそこまでじゃなかったが純度が高くてな」
ビグルドがルイドールに説明するが、ルイドールの恐怖は拭えない。
「マジかよ、こわいよ、管理できないよ。こんな大金」
「ギルド銀行に預金するか?」
「はい、ギルドカード」
「はは!焦りすぎだろ!」
ビグルドは、ギルドカードを受け取って奥に下がる。奥の部屋とは、カーテンで遮られている。見えはしないが会話は、出来る。
ビグルドがルイドールに尋ねる。
「引き出しはいいのか?」
「いい、手持ちで充分、だからって、盗るなよぉ?」
「するわけねぇだろ、奢って貰うしな」
「決定事項かよぉ」
ルイドールは、ため息をつくが、なんだか楽しそうだ。
ビグルドがカーテンを除けながらカウンターに戻ってきた。
「うし、預金終わったぞ」
「はぁ、戦うのは苦手なんだよぉ、弱いし、大丈夫かなぁ、狙われない?」
「流石に、考えすぎだ。妬みで襲う探索者よりも茶化してたかりに来る探索者の方が現実味があるだろうよ」
「それもそれで、いやだ」
ルイドールは、疲れた足取りでギルドをあとにする。
その足で向かう先は、屋台通りのジグの屋台。
「腹減ったなぁ」
※ルボル
日本円換算するなら、1ルボル=10円。一夜にして、500万円を手にしたルイドール。よかったね。
世界共通の通貨という訳でもないが、信頼度は、高い。使えないとこもあるが使えるとこの方が多い。
※ギルドカード
ギルド内サービスが受けられる会員証。情報を記録する事が出来る魔導具で、通帳、来店スタンプカードにもなる。個人情報の塊、紛失したら一巻の終わり。
再発行は可能。通帳などの記録は、ギルド内の管理魔導具に保存されているので、お金丸ごと無くなることはない。
最近は、個人店などと提携してギルドカードで直接決済が出来るシステムが普及し始めている。ファンタジー世界、驚異のキャッシュレス化。
※通貨について
紙幣も存在している。硬貨もある。面白いのは、植物製の硬貨があること。果たして硬貨なのかは、議論の余地があるが、世界樹の枝などから作られた金属質な木製硬貨が存在している。
複製が困難な材質なので、とても高価。
たぶん、1万ルボルくらい。
※魔導具
別名、アイテム。杖のように、魔法を使う道具というよりは、魔法が掛かった道具。杖は、魔力を消費するが魔導具は、魔力を必要としない。
魔法によって変質した、不思議アイテム。




