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少女の心に深めの傷を残して死にそうな低身長童顔ロリお姉さん  作者: 椿


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24/24

妹達

 「おはよう、お姉さん♡」


 「……巴、拘束を解いて頂戴」


 「駄目だよ、天ねぇ。もうぜーったい、逃がさないからね」


 「すみれ……貴女達、自分が何をしているのか分かっているの……!」


 そこは病室だった。白さと、消毒液の匂いが鼻を突く。以前は足繁く通っていた、妹達と出会った場所。そこに、私はベッドの上に拘束されていた。


 「お姉さんこそ、酷い、よ。私達がどれほど、辛い思いをしたか、分かる?」


 「今でも苦しいんだよ? 天ねぇが居なくなった時の景色が焼き付いて、瞼の裏から離れてくれないんだから」


 「っ……! それ、は」


 二人の濁りきった眼が、私を見下ろす。やめて。私は、貴女達にそんな顔をして欲しくなくて、今まで戦ってきたのに。もう、やめて。


 「でも、安心、して。もう、お姉さんをそんな眼には遭わせないから」


 「うん。これからずーっと、一生一緒に居ようね」


 「「愛してるよ、お姉さん(天ねえ)」」


 思わず眼を逸らしてしまう。巫術の影響か、全く神力を出せない今の私では、その程度の抵抗が精々だったから。


 「そっか……お姉さんは、私達の愛を、拒むんだ」


 「酷いなぁ……そうやって天ねぇは、一人で遠くに行こうとするんだもん。許せる訳、ないよね」


 「お姉さんは分かってない。貴女が分け隔て無く、誰にでも愛情を注ぐから」


 「みーんな、天ねぇしか見えなくなっちゃうんだから。そうまでしてお預けなんて、我慢出来ないよ」


 二人は私の真横に寝そべると、そのまま両手に抱き着いてきた。以前は微笑ましかったそれは、今の私にとってただ罪悪感を刺激するだけだった。


 「お姉さんを完全なものに、するまで、まだちょっと時間がある」


 「少し、私達と遊ぼっか♡」


 「何を、言って……」


 するりと、何かが私の眼を覆った。不意に視界が閉ざされ、暗闇が眼下に広がっていく。自らの呼吸と、クスクスと笑う二人の声が、やたら鮮明に聞こえた。


 「お姉さん……今のお姉さんはね、ただの女の子、なの」


 「っぅぁ……! や、辞めなさい……!」


 「そう……だからこうやって、耳元がくすぐったくても、なーんにも抵抗出来ない♡」


 「んぅ……! やめ、て……!」


 身体は動かない。視界は阻まれている。そんな状態で、甘ったるい二人の声が脳内に流し込まれる。意識を逸らそうとしても、ただ僅かに身を捩らせるしか出来ない。


 「そんな状態で、私達の巫術、受けちゃったら、どうなるんだろ?」


 「どうなっちゃうかな? ねぇねぇ、どうなっちゃうの?」


 「何にも、意味ないわ……こんなの、辞めなさい」


 「ふふっ……安心して、お姉さん。危険な術は、使わない」


 「そうだね。全然、危険じゃ無い。天ねぇはそんな術、受けないよね?」


 ……っ! この子達は……! さっき自分で、私が全く抵抗など出来ない状態だと言ったじゃないか。だというのに抵抗してみろだなんて、あまりに卑劣だ。


 「お姉さん……『好き、大好きだよ』」


 「んんん……! や、辞めて……!」


 「天ねえ、『大好き、愛してるよ』」


 「にゃ……! や、だ……!」


 耳元で、二人の声が反響する。それは、言霊の類いだ。本来であれば、こちらから受け入れに行かないと効かない、勝負前のおまじないのようなもの。けれど、今の私にはその効果は覿面だった。


 「『好き、好き、愛してる。ずっと一緒だよ』」


 「『大好き、大好き。絶対、離さない。天ねぇは、私達のこと好き?』」


 「す……き、嫌いよ。こんなことする子なんて、嫌い……!」


 「嘘ばっかり。『お姉さんは、私達のこと大好きでしょ?』」


 「そうそう。『お姉さんは、私達のことしか考えられないでしょ?』」


 好き、大好き、愛し、違う。妹達以外要らない、必要な、違う。この子達以外は不要だ。好き、愛してる。大好き違う。違う。違う違う違う──!


 「『愛してる。愛してる。愛してる。もう、私達しか考えられない』


 「『大好き。大好き。大好き。私達以外、要らない』」


 「違う、違う、違っ――」


 「「『何にも違わない。私達の言うことが、全部正しい』」」


 「正、しい……や、やだ。やめて……」


 思考が塗りつぶされる。二人の思いで、上書きされる。否定する気持ちも、肯定で埋め尽くされる。ただひたすら、この二人のためだけに尽くしたくなる。


 「『堕ちろ。堕ちちゃえ』」


 「『天ねぇはもう、私達のモノなんだから』」


 「「『拒否権なんて、最初から無いんだよ』」」


 ……それから、どれだけ時間が経っただろうか。私はひたすら、二人に言葉で嬲られ続けた。耳を舐められ、言葉を流し込まれ、感情を玩具のように遊ばれた。不意に、目隠しが外された。


 「あは……♡ お姉さん、凄い顔……♡」


 「ほんとだ♡ 涙でぐちゃぐちゃだね。よしよし、可哀想に」


 私は意識を半ば飛ばしながらも、辛うじて理性は保ったままだった。しかしそれも、寸前のところで留まっているに過ぎない。何かきっかけがあれば、容易く消し飛ぶものだろう。


 「……なにしてるの?」


 「星ちゃん、いいところに」


 「今、天ねぇを懲らしめてるところなんだ。星奈もどうだ?」


 「ふぅん……懲らしめる、ねぇ」


 星奈が私の醜態を見ている。既に、私の心はボロボロだった。年甲斐も無く涙が溢れ、情けない姿を晒してしまっていた。


 「やだ……み、見ないで……!」 


 その時、星奈の瞳にはあまりに甘美な光景が広がっていた。敬愛する姉が、涙目でこちらを見上げているのだ。


 普段は冷静な姉が見せることのない、恥じらう姿。憧れの存在が、全くの無抵抗で捕らえられているという事実。その全てが、彼女の衝動を激しく刺激するものだった。


 「駄目だよ、二人とも」


 「……星ちゃん、それは酷い。殺生だよ」


 「そうだよ。計画まで時間はあるんだから、その間に楽しんだって問題無いだろ?」


 「そういう問題じゃないよ。私達の目的はお姉ちゃんを完璧な存在にすること。決して、お姉ちゃんを辱めることじゃないんだよ」


 その言葉に、私は思わずホッとしてしまった。やっぱり、彼女達は私の知っている可愛い妹達だ。偶に暴走してしまうこともあるが、それだって悪気がある訳では無い。ひとえに、私への親愛から来るものだと分かっている。


 今のはただ、二人の気の迷いだ。きっと、話せば分かってくれる。だって、彼女たちは私の妹なのだ。かけがえのない、私の大切な妹達。だって、星奈はきちんとストップをかけてくれ──


 「やるなら徹底的にやらないと。お姉ちゃんが意識を飛ばして、涎を垂らして、脳みその随まで私達で埋め尽くして……私達以外なんて全部忘れるくらい、とびっきりに愛してあげないと。そうじゃないと、お姉ちゃんが可哀想」


 「……ぇ」


 「それもそうか。ちょっと加減し過ぎたな」


 「でも、洗脳するなんて、初めて。上手く、いくかな?」


 「言い方が良くないね。洗脳じゃなくて、上書きでしょ」


 違う。こんなのは、私の愛している妹達じゃない。彼女達は、私の嫌なことは絶対にしなかった。なのに、今の三人は独善的な考えを振り回し続けている。私のことなど見えていないように、ひたすら恐ろしい計画の段取りを進めていた。


 「~~~!?!?!?」


 「んちゅ……ほぉら、お口開けて? 私の神力も、分けてあげるから」


 「おぉ、大胆……! んじゃあ、私もさっきの数倍、えげつないの刻もっと」


 「お姉さん、安心して。私は、優しくしてあげる。じんわりじっくりことこと、何にも考えられなくなるまで、茹で上げてあげるから」


 左右からも、上からも。絶え間なく続く情報の奔流。その全てが、私に愛を囁いていた。


 もはや、私に出来ることはこの“懲らしめ”を、ただ耐えるのみだった。そして口に出すこと無く、脳内で二人の後輩の名前を呼び続けるのだ。


 (小日向、野乃花ぁ……私に、力を、貸して……!)


 儀式の時まで、残り5時間47分。

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