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月夜の甲板


 手に入らないかもと思うから欲しくなったわけではないが。


 正妃はともかく、側室妃にして自分のもとにとどめておきたくはなった。


 麗しき娘よ。

 お前の策略に乗ってやるか。


 ハープを奏でるハルモニアの腕をジェラルドはつかんだ。


 演奏が止まる。


 その瞬間、背後で動きがあった気がしたが。


 そちらを気にしながらも、ジェラルドはハルモニアを抱き寄せようとしたが、押し返される。


「そういうのは求めておりません」


 ……お前は一体、ここになにしに来た。


 だが、自分をまっすぐ見つめ、ハルモニアは言う。


「王様は一言口をきいてくだされば、それで良いのですっ」


 その澄んだ、伝説の宝石より清らかそうな瞳でなにを言っておるのだっ。


 ええいっ。

 王に喋らせさえすれば、側室妃になれるとかいう阿呆な決まり事を作った宰相は何処だっ!


 そうジェラルドが思ったとき、

「ついに、伴侶を選んでしまったようですね、王様」

とまだ、喋ってもいないのに、そうと決めつけた声が後ろからする。


 振り返ると、子どもの頃から仕えてくれたていた忠臣、デュモンが腰の剣を手を触れ、こちらを見ていた。


 今にも抜きそうに見えた。


 ――クーデターかっ!?

 まさかお前がっ、デュモンッ。


 ご婦人方にも人気の騎士にして、幼なじみでもある麗しきデュモン。


 誰よりも信頼していた彼が今、剣の()に手をかけ、間合いをとりながら、円を描くように近づいてくる。


 少しの反撃も見逃さぬよう、細心の注意を払った、本気の動きだ。


 デュモンはこちらの腕前をよく知っているからだろう。 


 ああ。

 王とはなんと孤独な職業なのだ。


 心許した仲間にも裏切られるとはっ。


 決して、権力などにはひれ伏さない男だったのに、デュモンッ。


 月光に艶を放つ黒髪のデュモンは油断せぬまま、口を開いた。


「あなたが伴侶を選ばれたその日が、私たちの決別の日だと心に決めていました。

 誰よりも思慮深く、美しいジェラルド」


「デュモン……」


 思わず、その名を呼ぶ。


 ハルモニアと近くに控えていたコルヌが小首をかしげるのが見えた。


 今、喋ったのはカウントしてもいいのだろうかと思ったようだった。


 いや、この緊縛感のない奴らめっ、と思う。


 デュモンがハルモニアを見た。


「ハルモニア姫」


 そんな名だったのか。

 お前から教わるとは……。


 もっとロマンティックに本人から聞き出したかった、と残念に思いながらも、ジェラルドはハルモニアを守るように彼女の前に立つ。


 デュモンの視界から、ハルモニアを消し去るように。


 ふっ、とデュモンはご婦人方が卒倒しそうな憂い顔を見せて言った。


「なかなかに計算高いハルモニア」


 ……そこは異論はない。


 なにか崇高な(こころざし)がありそうでなさそうな、よくわからぬ娘だが。


 その志のためには、手段を選ばない感じがある。


「お前はそうやって、王様に気のないふりし、純な王様の気を引こうとしているのだろうっ」


 やめるんだ、デュモンッ。

 その点は追求するなっ。


 私が傷つく予感がする!


 そう思いながらも、ジェラルドはハルモニアを守ろうと二人の間に立ち続けていた。




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