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宝石商を訪ねてみました


 宿舎はハルモニアの城よりはずいぶんと豪華だった。


 これでもみな満足できなくて出ていくのか。


 王の妃候補は、各国の姫だけでなく、有力な商人の娘などもいるそうだが。


 完全に財力では負けているな、とハルモニアは思った。


 とりあえず、宝石商のもとに向かう。


 コルヌだけでなく、何故かクレインまでついてきた。


「ほう。

 いい品を扱っているな」


 店内を見回し、クレインは言う。


 だが、店主は渋い顔で、クレインに言った。


「……うちがお願いしている壁画、どうなりました?」


 クレインは外を見ながら、いきなり叫び出す。


「あ~、今すぐあの像、倒れてこないだろうかな~っ」


 ほんとうに困った人だ……。


「それにしても、さすがはコルヌ様が肩入れされている姫様ですね。

 何人もお妃候補の方が訪ねて来られましたが。


 このような透けるような美しい肌と淡い金色の髪と清らかな瞳をお持ちの姫様はいらっしゃいませんでした」


 どうです? と店主は金と水色の透明感ある首飾りを出してきた。


「こちらは、いい品なのですが。

 皆様、この繊細な造りにお顔が負けてしまって、お似合いになられないので、なかなか売れなくて。


 お求めやすいお値段になっておりますよ」


 ハルモニア的には、なにもお求めやすくないお値段の素晴らしい首飾りを見せられ、ハルモニアは困る。


 クレインが身を乗り出した。


「ほう。

 美しいな。


 お前に似合いそうだ」


 ハルモニアは店主に向かい言った。


「しゅ、出世払いでは駄目ですか?」

「……いつ出世するのですか」


 そりゃそうですよね、と言うようなことを言われる。


 店主は溜息をついて言った。


「確かにあなたはお美しいし。

 お妃様になってもおかしくない品もある。


 コルヌ様も肩入れされているようですが。


 なにせ、王様にはたくさんの側室がおられますからね。


 すべての側室を覚えていらっしゃらないくらいです」


「その辺の美しいだけの娘でも、有力な商人などが後見人としてついて、側室になっていたりしますしねえ」

とコルヌは溜息をつく。


「重臣の娘や力のある国の姫などが妃に選ばれやすいのでしょうか」


 そうハルモニアが問うと、

「そうですねえ。

 ゴリ押しで、王と会うことはできるかもしれませんが。


 あの方、実はあまり、妃選びには興味がなくて。

 (まつりごと)にしか興味がない方なのです」


 そうコルヌは困ったように言った。


「なので、どんどん送られてくる妃候補の娘たちと会っても口もきかれません。


 それで、業を煮やした宰相が、対面して、王が口をきいたら、もう側室妃になれるという決まりを作ってしまったほどです」


「……何処の国の宰相もとんでもないことを言い出すものですね」


 だが、それだけ、何処の国でも、王族の尻拭いが大変だということか。


「でも、そうですか。

 とりあえず、王様に口をきかせればいいんですよね?


 では、王様が、うっ、て言ったら……」


「待ってください。

 なにをする気なんですか」


 腹に一発くらわそうかと思っていた。


 いや、それだと不敬だと言われ、処刑されかねない。


 さりげなく足をひっかけようか……。


 あっ、くらいおっしゃるかもしれない。


 不穏な気配を感じたコルヌが慌てて言い出す。


「みな王を美しさでうっとりとさせ、思わず声を上げさせようとしておりますよ」


「そんな生ぬるいことで……」


「いやっ、大丈夫ですっ」


「ハルモニア様なら大丈夫ですっ。

 王はきっと、お会いになりさえすれば、あなたの美しさに感嘆の声を上げられますよっ」

と何故か店主とコルヌに慌てて(なだ)められた。




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