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捧げられしハルモニアと無口な王様  ~この国を救うため、私、正妃になりますっ~  作者: 菱沼あゆ
捧げられし王様

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民からの報告


「王様っ。

 今、ドラゴンはルーガリアの地で翼を休めているようですっ」


 すぐにそう報告が入ったが、ジェラルドは困る。


「ルーガリアか。

 困ったな。


 あの国とは国交がない」


 その様子を見ていたジャスランが溜息をついて言った。


「仕方がない。

 私が口をきこう」


「そうか。

 ツテがあるのか。


 牢獄のつながり、すごいなっ」

とジェラルドは感心したが、ジャスランは、


「いや、そうではない」

と言う。


「私の母はルーガリアの第七皇女なのだ」


「えっ?

 ほんとに王族だったのかっ?」

とコルヌが驚いていた。


「待て。

 ルーガリア皇帝の血を引くお前が何故、うちの独房に?」


「実は、クーデターを起こして……」


「クーデター?

 結構な大罪じゃないか」


「強い権力を持つ参謀を排除しようとして、失敗したんだ」


「牢名主様の前の参謀?」

とコルヌが訊く。


「なんで牢に入る前に牢名主様の参謀を殺す必要があるんだ。

 ルーガリア皇帝の参謀に決まってるだろう。


 ルーガリアの皇帝、坊ちゃん育ちのうちのじーさんは、叩き上げの参謀に操られるだけの傀儡(かいらい)だった。


 私は、腹違いの兄たちに呼びかけられ、参謀を倒し、じーさんを隠居させようとして、失敗した」


「それで、何故、ルーガリアでなく、うちの独房に?」


「兄たちが年若い私を逃してくれたんだが。

 私は国外では、なんのあてもなく。


 盗賊たちに拾われ、腹を空かせた彼らとともに、欲深きパン屋に押し入り、パンを食べたところで、捕まったんだ」


「……独房に長年入るような罪ではないな」


「独房に入れられたのは、私がルーガリアの皇帝血を引いていることがわかったからだ。

 私の刑期はもちろん、とっくの昔に終わっているが。


 当時は、私は外に出た方が危険だったし。

 国に帰ったところで、もはや、居場所はなかったから」


「しかし、母君たちがいらっしゃるのだろう?」


「父は日和見な人だし。

 母は、盗賊にさらわれて、もう国にはいなかったし」


「盗賊に?」


「私を助けてくれた盗賊の頭目だ。

 私の顔を見て、私の母の顔を推察し、忍んで会いにいったらしい。


 二人は遠い何処かで幸せにやっているそうだ。


 というわけで、母はもうルーガリアにはいないんだが、潜伏して生き延びた兄たちがいるので」


「ルーガリア国内の話は、ここまでなかなか伝わってこないんだが。

 クーデターはどうなったんだ?」


「参謀が年老いて、息子の代になったんだが。

 とんだボンクラなので、祖父はそのまま皇帝でいて、兄たちが国を仕切っている」


「お前の兄が牛耳っていたのか。

 どうりで、なかなかこちらに有利な条件で、国交が樹立できないはずだ」


 これで、ひとつ、借りができそうだし、とジェラルドは渋い顔をしたが。


 背に腹はかえられない。


 ハルモニアをドラゴンから奪還するために、ジャスランに急いで、ルーガリアに話を通してもらうことになった。





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