確かめに行きましょうっ
「もしかして、元正妃様の一族の方が力を持っていらっしゃると言うことですか?」
そう問うたハルモニアに、ジェラルドが、そうだ、と頷く。
「元正妃様ご自身はどうなっていらっしゃるのですか?
ご存命なのですか?」
その割にはお見かけしないし、話も聞かないな、と思ったが、ジェラルドはデュモンたちと視線を合わせたあとで、
「……わからない」
と呟いた。
わからない? とハルモニは訊き返す。
「あるとき、自分の老いていく姿を見せたくないと言って。
己れの美しかった頃の姿を像に残し、鈴を持って洞穴に入っていってしまったんだ」
遠い異国の即身仏のようだな、と思いながら、ハルモニアは聞いていた。
「だから、生死についてはよくわからない。
ちなみにあの元正妃は、私の母ではない」
ああ、だから王様、跡継ぎを生まないと正妃になれないのかと訊いたとき、微妙な顔をしたのか、
とハルモニアは気がついた。
しかし、仲悪そうだな、王様と元正妃様……。
「元正妃様が、生きているのか死んでいるのかわからないが。
私がまだあの一族に見張られているのは確かだ」
いちいち口を出してくる、とジェラルドは顔をしかめる。
「私があの像を壊そうなどと言い出したあかつきには、なにを言われるやら」
「そうですか。
――じゃあ、直接、直談判に行ってみませんか?」
そう言い出したハルモニアを、みんなが、誰に? と見る。
「生きてらっしゃるのか、そうでないのか。
元正妃様の一族の方々はご存じなのかもしれないですが。
教えてはもらえないでしょう。
だから、確かめに行ってみませんか?」
その洞穴に、とハルモニアは言ったが、
「危険だぞ」
とデュモンが止める。
「それにそんなことが元正妃の一族に知れれば、反逆の意志があるととらえられるかも」
ハルモニアは一瞬、考えたあとで、
「ああ、でも、そうだ。
周りに察知されないよう動ける、地下に潜るのが上手い人たちがいるではないですか」
と言った。
「お前の国のスパイかなにかいるのか?」
「いえいえ。
我が国にはそんな人的余裕は……。
牢獄の方々ですよ」
と笑ってハルモニアはデュモンに答える。
「頼みに行ってきましょうか?」
と言うハルモニアに向かい、ジェラルドは、
「どうやって?
またお前、捕まるつもりか……」
と呟いていた。




