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あれは一体、なんなんですかっ?

 


 使者たちと旅をし、ハルモニアが王都に入ったときには、夜になっていた。


 真っ暗な海の前に石造りの大きな塔のようなものが幾つもあるようだ。


 暗がりに見えるそれらの塔の窓には灯りが灯っていて美しい。


「圧倒されますね」


 馬車で横を通りながら、ハルモニアは影のように見える塔を見上げる。


「ははは。

 美しいでしょう」


 使者、コルヌは誇らしげに言った。


 確かに。

 この国のものはなにもかもが美しく、なにもかもが大きい……


 大……


「大きすぎませんか?」


 ハルモニアは声に出して言っていた。


 一際大きな塔のようなものがあると思ったら、巨大な女神の像だった。


 その手には松明のようなものを掲げている。


 そこは本物の火で。


 それが街全体を照らしているようだった。


 おそらく、女神像の中は螺旋階段になっていて、日が落ちると、誰かが火を灯しに行くのだろう。


「灯台のような役割もしているのですよ」

とコルヌが教えてくれた。


 海岸線沿いにあるからなあ、と思いながら眺めていると、


「あの像が気になるのですか? 美しきハルモニア様」

とコルヌに問われる。


「あれはさる高貴な方を()した像です。


 その方は、女神の像に姿を変え、今も、この国を守っておられるのです。


 その守護の力は強く、


『女神の像、倒れしとき。

 王都もまた滅びる』

という予言があるほどです」


 いやそれ、予言じゃなくて事実! とハルモニアは思った。


 あのサイズの像が街に向かって倒れてきたら、一溜(ひとたま)りもない。


 町側でなく、海側に向かって倒れても、波が押し寄せそてきそうで恐ろしいし――。


 ハルモニアたちを乗せた馬車は女神像の足辺りに来た。


 サンダルを履いた大きな足だ。


 ハルモニアは、恐々、すぐ近くに来たその巨大な神像を見上げていたが、くるぶしの辺りにヒビが入っているのに気がついた。


「あの、この像、なんかヒビ入ってませんか?」


 そんなことを訊いて、不敬にならないだろうかと思いながらも、通り過ぎた女神の足を振り返り、ハルモニアは尋ねる。


「そうですね。

 でも、あの像に触ることは許されないのです」


 なにせ、高貴な方の像なので、と恐ろしげにコルヌは言う。


 恐ろしいのは像の祟りに遭うことか。


 それとも、像のモデルとなった人物が恐ろしいのか――。


「あの像に触れられるのは、あれを作った一族の者だけなのです」

「その方々に会えますか?」


「大抵、その辺で呑んでますけどね」

とコルヌは塔の前辺りに居並ぶテントの店を見た。


 灯りの灯ったそれは酒や料理の屋台のようだった。



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