目覚めたその瞬間――
……王様より先に女神像と目が合ってしまった。
目覚めたハルモニアは顔を窓側に向けていたせいで、まだ眠っている王様を見つめる前に、女神像と視線を合わせてしまった。
なんか強い念のようなものを感じる視線だなあ。
クレインたちは、モデルの人に忠実に造ったのかな?
こんな感じの人だったのだろうか。
鼻が高く、強い目元で、像となっても、その美しさは伝わってくるが。
私が女神像を打ち倒そうと(?)しているのが伝わって、嫌な目線に感じるのだろうかな。
「目覚めたのか、ハルモニア」
まだ眠そうなジェラルドが、そっとハルモニアの頬に触れてくる。
照れたようなその表情に、
なんて、お可愛らしいっ、と思ってしまった。
普段のキリリとした支配者の顔とは違う顔を見てしまったハルモニアは、恋とはどんなものかわからないまま、ときめいていた。
ふふ、とジェラルドは笑う。
「目覚めたとき、誰かの顔がすぐ近くにあるというのは不思議なものだな」
……私は目覚めたとき、女神像がすぐ近くにあるように感じてしまいましたけどね。
さすがのハルモニアも、ここでそんなことを言ったら、雰囲気を壊してしまうことはわかったので、
「……はい」
とだけ頷いた。
ジェラルドはハルモニアを抱き寄せ、
「正式にお前を妃とし、みなにお披露目せねばな」
と嬉しそうに言う。
「あ、ありがとうございます」
だが、そこでジェラルドは考え込む。
「お前の望み通り、正妃にしてやりたいのはやまやまなのだが。
まず、側室妃として、みなに承認されてから、また正妃として承認されねばならない。
段階を踏まねばな」
段階を踏んでる間に、他の人がなりそうだなあ、とハルモニアは思っていた。
「とりあえず、妃となった祝いに、なんでも望みを叶えてやろう。
ああ、お前の国への援助はするつもりだから、それ以外で」
「ありがとうございます」
そうですねえ、とハルモニアは悩む。
国への援助と像のこと以外、願いはないんだが……。
「なにが欲しい?
首飾りか? ドレスか? それとも、城か?
まあ、お前個人の邸宅を持ってもいいんだが、できるだけ、側にいて欲し……」
ジェラルドが甘いセリフを囁き終わる前に、あ、とハルモニアは手を打った。
「すみません。
クレインを牢から出してください」
「……まだ捕まってたのか」