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ハルモニアの寝室

 


「いやー、そっち置いた方が綺麗じゃない? 花」

「カーテンはやっぱり、この透ける感じの方が月光が入って素敵ですよ」


「青みがかった布の方がよいのではないですか?

 まるで、海の中にいるみたいになりますよ」


「そうねえ」


 ハルモニア、侍女、コルヌの声がする。


 先導していた者が王の到着を告げると、扉の向こうがバタバタしはじめた。


 待ってやるのが礼儀だろうが、ハルモニアがなにをしているのか気になって扉をすぐに開けさせる。


 ハルモニアは窓の横の台に立ち、自ら、カーテンを取り替えようとしていた。


「あ、王様っ。

 すみませんっ」


 はは、とハルモニアは苦笑いしながら、台から降りる。


 自分とともに、扉に向こうにいた従者たちが、

「ハルモニア様っ。

 そのようなことは我々にお命じになってくださいっ」

と慌てていた。


「あ、すみません。

 なんか、わざわざ呼びつけるのも申し訳ないかなと……」


 正妃になって、民たちを見下(みくだ)したいのに、従者をわざわざ呼びつけるのは申し訳ないのか?

と思いながら、ジェラルドは、


「コルヌ、お前がやってやれ」

とコルヌに言う。


 だが、コルヌは、いやー、すみません、と頭を掻きながら言い訳をはじめた。


「ハルモニア様の動きが俊敏すぎて。


 私がやりましょうと言う間もなく、もう台に上がって、カーテン外してらっしゃったんですよー」




 従者やコルヌ、コルヌに引きずられてデュモンもいなくなり。


 ハンナが頭を下げて出て行ったところで、二人きりになった。


「みな、お前のペースに引っ張られておるな」


「えっ?

 そうですか?」

とハルモニアは小首をかしげている。


 そんな感じのハルモニアだが、寝室で着る、少し透ける感じの柔らかな布のドレスを着ている彼女は、ちょっと艶っぽく見え。


 船の上で見たのとは、また違った感じで、美しい。


 ハルモニア自らがかけかえた青いカーテン越しに月の光が差し込んで。


 まるで深海に潜む美しい人魚姫のように見える。


 ジェラルドは、まっすぐに彼女の顔を見られなくなり、視線をそらした。


「デュモンが私たちの初夜に付き添うと言ってきかなくて、まいったよ」


 ハルモニアは笑い、

「そうですか。

 デュモン様もいてくださると、心強いのですが」

と言う。


 なにが……?


 やはり、これはよくわかっておらぬようだな、とジェラルドは溜息をつく。


 先ほどついていた侍女が初夜について教えてくれていたのではないのか、とジェラルドはコルヌが、


「あれは駄目です。

 似たり寄ったりです」

と手を振りそうなことを思っていた。




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