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王様の心の内

 


「ついててやろうか、ジェラルド」


 ハルモニアの待つ部屋へと向かうジェラルドにデュモンがそう言った。


「いや、何故だ……」


 石造りの廊下に靴音を響かせながら、デュモンは横に並んでついてくる。


「お前はなにも知らないのだろう」


 女性とか、結婚とか、初夜とか、とデュモンは言う。


 ジェラルドは胡散臭く幼なじみを見ながら言った。


「お前は知っているのか」


 確かにデュモンはモテるが、自分と一緒で、これといった浮いた噂もなかったはずだが……。


「私は学生時代、家庭教師のモニカにいろいろと教えてもらったからな」


 なんと、あの年上の美女にっ?


 まあ、良家には、そういう手ほどきをするための女性がいるとは聞いている。


 いや、王室にも過去、いたはずなのだが。


 自分の少年時代、王室は混乱中だったので、そのような女性を手配されたことはなかった。


 すると、デュモンが、ふっと笑って言ってくる。


「お前はまだコウノトリが赤ちゃんを運んでくるとか、そんな戯言(ざれごと)を信じているのだろう」


 いや、それを言っていたのは、ハルモニア――


 違うか。

 あれは側室妃の任命式をすれば、子どもができると思っているようだったな、と思うジェラルドにデュモンは言う。


「モニカは俺に手取り足取り教えてくれた」


 ほう。


「赤ちゃんはなっ。

 おかみさんがキャベツ畑でよく働いたあと、大好きな旦那とキスしたらお腹に宿るんだっ」


 ハルモニアより悪化している……とジェラルドは思った。


 そして、ちょっとロマンティックになっている。


 そこで、デュモンは小首を傾げて言った。


「俺に絵本を見せながら、その話をしたあと、モニカは産休に入ったのだが。

 ……家庭教師はキャベツ畑で働かないし。


 うちの母親もキャベツ畑なんて行ったこともないのに、どうやって俺ができたのだろうなとは思うんだが」


「そうか。

 うん、きっとキャベツ畑じゃなくて、キャベツを食べたらなんじゃないか」


 彼がこれ以上小首をかしげないよう、そう微妙に軌道修正してやったあとで、ぽんぽん、と肩を叩く。


「なんかやっぱり、私はお前が好きだな」


「ハルモニア姫よりもかっ?」

とデュモンの顔が輝く。


 学園にいた頃、研究チームごとに分かれることになったとき、

「こっちの班に入れよ」

と声をかけた瞬間の表情とまったく一緒だった。


「……まあ、比較はできないが。

 お前はお前で大事だよ」

と答えながら、ジェラルドは、


 そもそも、私はさっき会ったばかりのハルモニアがそんなに大事なのだろうかな、と内心、疑問に思っていた。




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