今更ですが、ほんとうに私などで良いのでしょうか?
一部の人に、いや、一部のデュモンには、不評のようだが。
ついに側室妃が決まったと、控えていたものたちがバタバタ動きはじめた。
「落ち着きのない連中だ。
私はただ、姫の名を呼んだだけだというのに」
とジェラルドは呆れたように言ったが。
いえいえ。
そもそも、あなたは、私じゃなくて、デュモン様の名を呼んだんですけどね。
まあ、喋ったら負け、みたいな争いでしたので。
そういう意味では、ナイスアシストです、デュモン様っ、とハルモニアは彼を振り向いて、
「なんだ、その勝ち誇ったような顔、やめろ……」
と言われてしまった。
いえ、親しみを込めて見つめたつもりなのですけどね。
最初は、じっと待っていた、従者や、王が今宵の姫を選ぶかどうか、立会人として来ていた貴族たちだが。
ハルモニアたちがいつまでも話しているだけなので、じゃあ、もういいだろうと、側室妃の手続きのために動きはじめてしまったのだ。
甘い雰囲気にならなかったせいで、放っておかれている当事者二人と、この婚姻に乗り気でないデュモンだけが、ぼんやりと甲板にいた。
「星が綺麗ですね」
「そうだなあ」
「でも――
私などでほんとうに良いのでしょうか」
どうした? とジェラルドがこちらを見て、ふっと笑う。
「さっきまですごい勢いで押してきていたのに」
いや、押してたのは、なんとかして、女神像を壊したいからですよ、と思いながら、
「私など、辺境の国の出身ですし」
と言ったが、ジェラルドはかばってくれる。
「いや、お前は美しく、洗練されている。
生まれ持っているセンスがよいのだろうな」
「我が国にはなんの力もございませんし」
「そう卑下することもないぞ。
お前の国は、位置が良い」
「……位置が」
「攻め入るのが面倒臭そうな標高の高い山とか、砂漠とかもあるし。
お前の国が緩衝地帯となって。
敵が攻めてこないだろう」
不思議な褒められ方をするなあ、とハルモニアは思っていた。