国が貧しすぎて売られてしまいました……
その国は大層貧乏だった。
王が人が良く、いろんなものを掠め取られていたからだ。
もうろくしていた宰相がようやく代替わりし、留学していたイケメンの息子が後を継いだが、時すでに遅し。
国は大きく傾いていた。
だが、そのイケメン宰相はいきなり、こう宣ったのだ。
「大丈夫ですっ!
我が国にはまだ宝があるではないですかっ!
美しきハルモニア姫がっ!」
「は?
あのー、でも、私が出て行くと
……の世話をするものが……」
もにょもにょとハルモニアは反論してみたが、イケメン宰相ではなく、父王に、ガッと両肩をつかまれる。
「とりあえず、今すぐの悲劇をなんとかすべきだ!」
今すぐの悲劇とは、国にまったく金がないと言うことだ。
イケメン宰相は何処かの国の悪代官のように、王に耳打ちをする。
「王よ。
幸い、大国カンターメンの一行が近くまで来ております。
王の花嫁を探しているとか。
めぼしい娘を見つけろとのお達しが出ています」
「なんとっ。
ぜひ、この城にご招待しろっ」
我が美しきハルモニアがさりげなく目にとまるようにするのだっ、と父王は叫ぶ。
「あのー、私のドレスはほぼ売り払ってしまって、動きやすくシンプルなものしか」
「そこはお前の知恵と勇気でなんとかしろ、ハルモニア」
知恵はともかく、勇気は必要ないのでは……?
と思ったが、とりあえず、部屋の壁や床のひび割れを花で隠し、ドレスを飾り、宰相が、
「お疲れでしょう」
と言葉巧みに連れてきた王の使者を出迎えた。
だが、ほんとうのところ、そんな小細工はせずとも、ハルモニアの透明感のある美しい肌や知性あふれる瞳だけで、使者はすっかりまいってしまっていた。
「なんと美しい。
こんな辺境の地にこのような娘がいたとはっ。
お知らせくださり、ありがとうございますっ。
ぜひ、我が王に捧げねばっ」
とんでもない王への忠誠心だった。
これと思った娘は、みな王に捧げようとするようだった。
いや、娘の意向も訊け、と思っている間に、飛んで帰った使者の報告により、ハルモニアの後宮入りは決まってしまった。